弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』。第36回は、アメリカ・コロラド州で開催された「第8回世界なぎなた選手権大会」に日本代表として出場し、男子団体戦で優勝、個人戦でも世界3位に入賞した南舘日奈太(みなみだて ひなた)さんです。なぎなたとの出会いや世界大会までの道のりとともに、小学校の教員を目指す南舘さんに大学の授業や弘前での暮らし、今後の展望などについて伺いました。
小学時代の恩師のような先生を目指して
— 弘前大学教育学部を志望した理由を教えてください。
教育学部を目指そうと思ったのは、小学1、2年生の時の恩師の存在です。
常に優しく子どもたちを受け止めてくれる先生で、ある日、引っ込み思案だった私に「自分の好きなことを話していいんだよ」と声をかけてくれて。そこから自分の想いを素直に言えるようになり、人とコミュニケーションが上手くとれるようになったんです。その先生との出会いが、自分自身をいい方向に変えるきっかけになりました。
その後も漠然と「先生ってかっこいいな」と思っていたんですが、高校の時に受けた進路に関する講座の中で「小学校の教員は、児童の人格形成の時期に関わる重要な存在」ということを知り、そこで「恩師のように、子どもたちにいい影響を与えられる教員になりたい」と強く思うようになりました。
弘前大学教育学部を選んだ理由は、初等教育の教員免許がとれることと、他大学に比べて教育実習が多く、その経験が学校現場で活かせる、と感じたからです。
もうひとつの理由は、2026年に青森で国民体育大会があり、なぎなたの強化練習が弘前市で行われるため、それに参加したいという想いもあって弘前大学を志望しました。
なぎなたとの出会いは小学1年生。体験会で感じたなぎなたの魅力
— なぎなたについても伺います。なぎなたを始めたきっかけを教えてください。
なぎなたとの出会いは小学1年生の時です。
私の地元、岩手県一戸町が平成28年の岩手国体でなぎなた競技の会場になり、なぎなた普及のための事業の一環で開かれた体験会に参加したんです。初めて体験して、「これは面白い!」となぎなたの魅力に引き込まれました。そこから一戸町なぎなた協会がやっている週2回の稽古に参加するようになり、小学6年生の時に出場した全国大会で初めて優勝することができました。
中学ではなぎなた部に所属し、中学1年生で「全国中学生なぎなた大会」で準優勝、中学2年生で優勝を果たしました。高校にはなぎなた部が無かったので、小学校の頃に通っていた一戸町なぎなた協会で練習を再開しました。高校2年生で出場した「全国高校なぎなた選抜大会」では、男女通じて史上初となる大会2連覇を成し遂げることができました。
— 普段の稽古について教えてください。
弘前大学にはなぎなた部が無いので、平日はなぎなた部がある弘前中央高等学校で、金・土・日は青森県武道館で行われているなぎなた教室で稽古をしています。稽古の相手は、弘前中央高等学校だと高校生、なぎなた教室だと小学生未満の子どもから50~60代と幅広い年代の方いるので、相手に応じた稽古をしています。
なぎなた競技には「試合」と「演技」の2つがあり、私は「試合」をメインにしています。
防具をつけ、全長約2mのなぎなたで定められた部位をお互い「打突(だとつ)」して勝負を競うもので、実際の試合を想定した「試合稽古」や相手を打ち続ける「掛かり稽古」をやっています。
子どもたちとの稽古では、まだ防具を付けられない子も多いので、自分が防具を付けて子どもたちに打たせたりしています。弘前に来てから小学生や中学生に教える機会がすごく増えたので、今後教育に携わる身としてはありがたいな、と日々感じています。
「世界なぎなた選手権大会」に日本代表として出場し、世界一に貢献
— 「第8回世界なぎなた選手権大会」についても伺います。この大会について教えてください。
「世界なぎなた選手権大会」は4年に1度開催されるなぎなたの世界大会です。
世界大会の出場については、2024年1月に愛媛県で行われた予選会で2位に入り、日本代表に選ばれました。今年度はアメリカ コロラド州にあるコロラド大学ボルダー校で開催され、日本を含む14か国が参加しました。各国代表選手は4名、試合は団体戦と個人戦があり、私は団体・個人両方に出場しました。
団体戦では、1回戦はカナダ、2回戦はアメリカ、決勝はベルギーと対戦し、いずれも先鋒を務めました。1、2回戦はスムーズに勝ち進んだのですが、決勝のベルギー戦では苦戦を強いられました。最初、相手に一本を取られてしまい、その後一本取り返したのですが延長戦になってしまって。延長戦でもなかなか打突が決まらなかったのですが、最終的に判定で勝つことが出来ました。あとの2人はしっかり1本取ってくれて、世界一になることができました。
個人戦では、準決勝で他の日本代表選手に負けてしまい、3位決定戦で団体戦で戦ったベルギーの選手と再戦することになったのですが、先に一本を取って、銅メダルを獲得することができました。
— 世界大会を終えてみてどうですか。
団体戦では頼もしい先輩方がしっかり一本をとって勝ってくれて、改めて先輩方の凄さを感じることができました。一方で、自分の弱さにも気づくことが出来たので、今回の経験を糧に次の大会に向けて自分の弱点を克服し、また更に強くなれるよう稽古を頑張っていきたいと思います。
授業で改めて感じた日本文学の面白さ
— 学生生活についても伺います。大学の授業ではどんなことを学んでいますか。
今は「小学校国語基礎」という授業で、国語教育の意義や内容、子どもたちに教える上でどういう点に気を付けるべきか、ということを学んでいます。
以前から日本文学や現代文を読むのが好きだったので、サブコースは「国語」を選択していて、その中でも特に好きな授業は「日本文学講読」です。今までは自分の好きなように文学を読んでいましたが「教材として文学を読む」「文学を考察してみる」ということを知り、改めて文学って面白いと思ったし、深く理解したうえで子どもたちに教えたいと感じました。
また、「書写」の講義も印象に残っています。「小学校のうちから字の書き方や、文字の成り立ちについてしっかりと教えることで、その後子どもたちが『字』についての取り組み方が大きく変わる」という話を聞いて、「初等教育の中で教えることの重要性」を改めて感じることが出来ました。
— ゼミには入っていますか。
国語科教育の田中 拓郎先生のゼミに入っています。今は、子どもたちに国語科教育をどのように教えるか、ということについて先輩たちの研究発表を聞かせてもらっています。いずれは自分でレポートを書き、研究発表をする予定です。
夜の散歩で感じた弘前の街の魅力
— 南舘さんは岩手県出身ということですが、弘前での暮らしはどうですか。
昨年から一人暮らしが始まり、今までどれだけ両親に頼っていたか…と実家のありがたみを痛感しているところです(笑)。その分自由な面もあるので、自分の好きなことも楽しめている感じです。今は学生寮に住んでいて、平日の朝晩はご飯が出るので、その辺はすごく助かっています。
— 弘前で好きな場所はありますか。
「弘前は桜の名所」ということを知らずに弘前に来たので、弘前公園のさくらまつりに行って桜の風景に圧倒されました。海外からの観光客もたくさん来ていて、世界的に有名な観光地だということを肌で感じました。
あとは、寮の近くに「最勝院五重塔」があるんですけど、夜ライトアップされると赴きがあってすごく好きです。夜、散歩をすることが多いんですけど、弘前は歴史的建造物が多くあり、ライトアップされた風景を見るたびに癒されています。
— 地元 岩手と弘前の違いはありますか。
「弘前は雪がすごい」と聞いていたんですけど、去年は例年に比べて雪があまり降らなかったみたいで。今年の冬は“真の弘前”を目の当たりにするのかな…と身構えています(笑)。
なぎなたで培った礼儀作法や精神力を子どもたちに伝えていきたい
— 今後の展望について教えてください。
しっかり胸を張って教壇に立てるよう、教育学部で専門力や実践力を身に付けたいです。あとは、なぎなたで培った「礼儀作法」や、競技や大会を通して得る事ができた「精神的な強み」の部分を教育の中に組み込んで、子どもたちにいい影響を与えられるような教員になりたいです。
— 最後に、受験生にメッセージをお願いします。
教育学部を目指す受験生の皆さんは、「物事を学ぶ姿勢」を高校生のうちから意識しておくことで、進学した時に大学での学びの中でより多くのことが吸収できるのでは、と感じています。
あとは、大学生になったら自分のやりたいと思ったことは思いっきりやってみてください。大学生活をどれだけ充実したものにできるかは自分次第。自由度が高い分責任は伴いますが、自分の選択によって大きく生活がが変えられる、というのが大学生の良さでもあり、醍醐味でもあると感じています。