卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第20回に登場するのは、株式会社ライケットアグリの小寺 健児(こでら けんじ)さんです。生産現場での農作業からデスクワークまで幅広く「お米」に携わっている小寺さんに、現在の仕事内容ややりがい、大学時代の印象に残っている出来事、将来の展望などを伺いました。

「お米」のすべてに関わりたい

—現在のお仕事について教えてください

勤務している株式会社ライケットアグリは、水稲栽培を中心に生産を行っている設立6年目の会社です。
母体である米穀卸業の株式会社ライケットは、長年の取引を通じて、さまざまな理由から作付けを続けられなくなる農家が少しずつ増えてきている現状に気付きました。農地は、管理をしていないとすぐに雑木林になり、周辺の農地にも影響を及ぼしてしまいます。そうした課題を解決するために、農家から農地をお借りし、会社としてコメの作付けをしようと設立されたのが株式会社ライケットアグリです。

具体的には、生産現場で田植え機に乗って田植えをしたり、田植え前の入水管理、追肥のほか、除草剤散布、農業用ドローンでの害虫防除、草刈り、稲刈り時期にはコンバインでの刈り取り作業など稲作のすべてを自社で行っています。現場作業の段取りを組んだり、各作業前の下準備といった現場の管理にも取り組んでいます。事務作業では、毎年の作付け予定や使う肥料、除草剤などの手配、収支計算や年間スケジュールの作成、補助事業を受ける際の書類作成なども担当しています。

田植え機での田植え作業
田植え機での田植え作業
農業用ドローンでの害虫防除の様子
農業用ドローンでの害虫防除の様子

—仕事をしていて、楽しさややりがいを感じるのはどんなときですか?

自分が手がけた田んぼを稲刈りした時に、他の田んぼと比べて収量に差が出るため、その結果が肌感覚や数字として直接分かることが楽しさの一つだと感じています。肥料や土壌改良剤、除草剤などを使う量や使う日数、満遍なく撒けたのか、斑がでるのかなどそれぞれの行動が結果に大きく影響してきます。商品ごとに特徴があることと、田んぼ一筆*ごとに特徴が異なるため、それぞれにマッチした最適なものを選び使用する必要があるので、一つ一つの行動を裏付けるために肥料や除草剤、土壌環境、栽培方法の細かな部分や農作業機などの知識を身につけるための勉強にも意識的に取り組んでいます。

*一筆…土地登記簿上の一区画の土地を指す単位

田植え後の田んぼ
田植え後の田んぼ
稲刈りの様子
稲刈りの様子

また、現在は、直接田んぼに種籾(たねもみ)を撒く直播(ちょくは)栽培にも少しずつ取り組んでいます。直播栽培だとコスト削減や1年の作業数削減が期待できるため、会社としての栽培方法が一年でも早く確立できるよう検証しているところです。現場で試験や検証を行って形にすることは、大学時代の実験に通じるところがあり、楽しいこともあれば大変なこともありますが、そのどちらも含めて充実しており、今のやりがいにつながっています。


—今後、どのように働いていきたいですか?将来の展望などを教えてください

一社員としては今後会社が作付けする面積をさらに増やし、安定した品質や収量のあるコメを生産していくという第一目標があります。その目標を達成できるように日々の業務を効率的に、スピード感を持って取り組んでいきたいと考えています。

一個人としては農業に関わり続けたいと思っています。実家でも米作りをしており、祖母と父親をはじめ、多くの親戚が協力して作付けしています。私自身も将来的にその一端を担うべきだろうな、と感じているので、今から心の準備をしているところです。また、中学時代の同級生が地元で農業に携わっており、「友達を集めて農業できたらいいな」という話をしたりもしています。将来チャンスがあるなら、これまでの、さらにこれからの経験や知識を活かして、実現できればいいなと淡く期待しています。

大学時代は自由を満喫

— 大学生活で印象に残っていることを教えてください

生活リズムが高校時代と比べて格段に自由になったため、自分で何を優先し、どのように生活の過ごし方を作っていくかを考えることに苦心したのを覚えています。初めての一人暮らしで、これまで親にしてもらっていたことを自分1人でやらないといけない状況に苦労しました。今でも仕事をしながら家事をすることに苦心していますが、大学時代の4年間で少しずつ慣れていったように思います。

また、大学生活で特に印象に残っているのが「サークル活動」と「自転車旅行」です。
1年生からお笑いサークル「WPS」に所属して、同じ農学生命科学部の同学年同士で結成したトリオで活動していました。毎月のライブで漫才やコントを頑張ったり、近くの学校の文化祭や西弘商店街のお祭りや西目屋村の乳穂ヶ滝氷祭などのステージなどに呼んでいただいたり、学外の幅広い世代の方たちにも笑っていただけるようにネタ構成を考えて披露したことも、いい経験になりました。

自転車旅行は、2年生のゴールデンウィークにロードバイクで「盛岡のわんこそば100杯を食べること」を目的に4泊5日で岩手県と秋田県を巡るという、無謀な計画でした。初日は大学から十和田湖の休屋まで、2日目は奥羽山脈を越え、盛岡市でわんこそば100杯を食べ切り、3日目は再度奥羽山脈を越え秋田市で稲庭うどんを食べ、4日目は大館市で力尽き、5日目のお昼に大学到着というハードかつ楽しいイベントでした。初日から筋肉痛、関節痛に悶えながらも山越えや長距離移動を楽しめました。途中パンクしたり、まだ積雪が残っている十和田湖周辺の道路で寒さに震えながら走ったり、ジャージにカッパ姿でホテルに泊まったりと、非日常な時間を友人と過ごしたことを、今でも鮮明に覚えています。過酷なチャレンジは、自分の弱さとの闘いでもあり、友人に叱咤激励をもらいながら自分を奮い立たせ自転車を漕いだことで、メンタルが強化されたイベントでした。

お笑いサークル「WPS」の活動の様子
お笑いサークル「WPS」の活動の様子
ロードバイクでの自転車旅行
ロードバイクでの自転車旅行

充実していた研究室での時間

— 大学で学んだこと(専門科目、ゼミの活動など)で印象に残っていることを教えてください

研究室所属が始まった2年生の後期から、石川隆二教授の研究室で「稲」の勉強をしたことです。
稲の遺伝子について研究するゼミで、研究するための試料を全て自分で選別し、苗を生育して、田んぼに手植えし、生育調査、試料採取、刈り取り、選抜、実験と、一連の作業のほぼすべてを自分で行いました。ほかの品種系統と異なる部分を知ることができたり、人工授粉の方法、実験器具の使い方や試薬調合の手順など、先輩や大学院生にもサポートいただき、多くの経験をすることができました。課題や実験を同期とがんばって一定の成果を提出できたことや、卒業研究課題のために同期と頭を悩ませたり、研究室にずっといたことが、いい思い出になっています。

石川教授研究室での研究材料育成圃場
石川教授研究室での研究材料育成圃場
自分の卒業研究で使用する苗作り
自分の卒業研究で使用する苗作り

「青森県の米」への熱い想いで、研究から就職へ

— 就職の経緯や理由を教えてください

まず弘前大学に入学した理由として、何かしらの形で「青森県の米」に関わる仕事につきたいと思っていたことがあります。稲を題材に研究している石川教授のもとで、稲について座学、実地どちらも勉強したいと思い、石川研究室に所属しました。

4年生になり、県内外の企業のインターンシップや就職活動に取り組んでいましたが、「思い通りの就職活動ができていないな」と感じていた時期でもありました。そんな時、石川教授がかねてより取り組んでいた共同研究を手伝っていた中で、株式会社ライケットが生産に挑戦することを知り、「自分自身もチャレンジしてみたい」と思ったのがこの会社に就職した理由です。生産から販売までを知ることができる環境なので、一連の流れとしてこの業界を知ることができています。

大切なことは細部に詰まっている、を実感する日々

— 弘前大学での学びや経験が、社会人になって活かされていると感じるのはどんなときですか

1番ひしひしと感じているのは、細かい部分に仕事の大事なことが詰まっていて、そこを探究していく時です。石川研究室に所属してから、実際に田植えする前の試料準備や備品準備、生育調査するために、表作成や圃場内の品種系統がどこに植えてあるかの地図作成などといった作業前の準備、作業するにあたっての注目しておくべきポイントがどこにあるのか、先輩から受け継がれたものを自分のものにできるように、聞いたり、実際に作業させてもらったりしてチームの力になるための行動をとっていました。

今、仕事として大学時代よりも幅広く、数多く任されており、細かい部分にこだわったり、大まかな流れとして段取りを組んだり、色々な経験をさせてもらってます。初めてのことや、前年とは異なる動きに対応するため段取りを工夫しながら、体を動かし、考えを巡らせて取り組んでいます。得意な分野ではありませんが、時に苦戦しながらも、自分の成長につながると信じて日々奮闘しています。


しっかりとした自己分析で、有意義な時間につなげて

— 弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします

自分の得意・不得意、どういうことに興味があるのか、自分がどんなキャラクターなのかなど、社会に出る前に「自分のことについて理解すること」がこれからの人生を歩んでいく上で大事になってくる要素の一つかなと、実感しています。自分自身、十分な自己分析をせずに大学生活を過ごしていたため、苦手なことや壁にぶつかった時の対処方法がわからないなど、困った経験があります。

弘大生の皆さんも社会人として生活していく時に、目指す仕事は自分にとって得意なのか、それとも憧れているのか、その仕事の実務はどんなものなのか、イメージと違った場合でもその仕事を自分はできるのか、苦手なことだとしても長い時間をかければできそうかなど、自己分析して欲しいと思います。

受験生のみなさんは弘前大学に入りたいと思った時、どんな分野に興味があって、その分野はどういう活動をしているのか、その活動は自分にとって得意なのか、興味があるのか自分を軸に判断していくようにすれば、いい大学生活になるかと思います。

「大学生活は人生の夏休み」なんて言葉もありますが、確かに自分を見つめるには最適な時間であるかと思います。ぜひこの時間を、これから続く社会人生活の土台を築くための有意義な時間にしてもらえればと願っています。

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Profile

株式会社ライケットアグリ
小寺 健児さん

弘前大学農学生命科学部食料資源学科卒 。
青森県立木造高等学校卒業後、弘前大学農学生命科学部食料資源学科食料バイオテクノロジーコースに進学。在学中は、お笑いサークル「WPS」に所属し、トリオで活動。2021年4月株式会社ライケットアグリに入社。株式会社ライケットとともに生産から販売までのすべてを自社で行うため、契約事務から稲刈り作業、農業用ドローン操縦など幅広く担当している。