卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第14回に登場するのは、北海道にある太平洋総合コンサルタント株式会社で土木構造物、道路の設計等の業務を担当している及川 稀英(おいかわ きえ)さんです。
及川さんは今年7月、合格率10%台の測量士試験に見事一発合格しました。今後は、女性技術者の活躍の場をさらに広げていきたいという及川さんに、現在の仕事内容や大学時代の印象に残っている出来事、将来の展望などを伺いました。

資格取得に励みつつ、地元釧路に貢献したい

—就職の経緯・理由を教えてください。

農学生命科学部に在籍していたので、当初は食品企業を中心に考えていましたが、就職活動を進めていくなかで地元の釧路に貢献したいという思いと、不安定な社会情勢の中で自分の強みをつくりたい(手に職をつけたい)と考えるようになり、働きながら資格の取得をしたいという思いが強くなりました。

現在の職場である太平洋総合コンサルタント株式会社は、釧路本社を拠点に、北海道各地の公共土木工事等に技術提案を行う建設コンサルタント企業で、社内独自の講習や模擬試験を実施するなど業務に関連する資格取得に力をいれていることから、入社を志望しました。

弘前大学農学生命科学部
社内でのドローン操作講習

—お仕事の概要、現在のご自身の主な仕事内容を教えてください。

現在入社3年目、本社設計企画部に所属し、土木構造物や道路の設計を行っています。
具体的には、主にCADというソフトを用いて、基本設計や詳細設計などを行います。必要に応じて現場に出向き写真を撮影したり、より詳しく現場の状況を調べるために現地で現況測量を実施し、設計図面を仕上げることもあります。
現在は、北海道オホーツク地方にある紋別市の道路設計業務を担当しています。

弘前大学農学生命科学部
デスクで仕事中の及川さん

合格率10%台の測量士試験に見事一発合格!

—測量士試験を受けるまでの経緯や、試験に合格した時の気持ちを教えてください。

大学では土木を専攻していなかったため、入社当初は私にできる仕事が限られていました。そんな中でどうしたら会社に貢献できるかを模索していたところ、『測量士補』の試験があることを知りました。
実際に試験勉強をすると、専門用語や測量方法など仕事に直結する知識を得ることができ、仕事の幅が広がると感じたため、昨年『測量士補』の資格を取得しました。

今年はさらに知識を深めるため、『測量士補』よりも難易度が高い『測量士』の試験を受験しました。
勉強は充分にしたつもりでしたが、手ごたえがあまりなく…正直、合格発表の日が憂鬱でしたが、無事合格できてほっとしました。試験は午前と午後に分かれており、午前の択一問題では思ったよりも点数を取れなかったのですが、午後の記述問題でなんとか巻き返した感じです。会社の先輩、同僚から「合格おめでとう」と言って貰えて嬉しかったですし、自信に繋がりました。

弘前大学農学生命科学部
北海道建設新聞 2022年7月26日付で掲載された及川さんの記事

道路の設計を通して、人々の暮らしがより豊かになる仕事をしていきたい

—仕事をしていて楽しさややりがいを感じるのはどんなときですか?

設計に携わった工事が終わり、実際に完成した道路などを目にしたときです。以前よりも綺麗に道路が整備された様子や、道幅が拡張されるなどして走りやすくなっているのを見た時、設計した甲斐があると感じます。

また、設計は基準や規格に則って行うのが原則ではありますが、現地の状況によって用いる工種・材料など臨機応変な対応が求められます。コスト面を考慮しながら、決められた予算内で最大限発注者の意向に沿える設計を行う技術者の技量が求められると同時に、最もやりがいを感じる場面だと思います。私も技術と知識を深め、早く先輩たちのように最適な技術提案ができるようになりたいです。

—今後、どのように働いていきたいですか?将来の展望などを教えてください。

北海道は広大な土地が広がっており、空路、鉄路、陸路などの交通網の維持、整備は地域の発展にとって重要であり、特に道路は、そこに暮らす人々の生活の基盤となる最も重要な交通網だと言えます。
そうしたインフラ整備に関わる技術者として、これからさらに知識や現場経験を身につけて、地元である道東エリアを拠点に、道路の設計を通して人々の暮らしがより豊かになるような仕事をしていきたいです。

また、全体の1割にも満たないといわれている女性技術者の活躍の場を広げていきたいと考えています。そのためにも、『測量士』試験よりもさらに難関と言われている『技術士』試験に合格することが今後の目標です。

弘前大学農学生命科学部
コンクリート構造物点検作業の様子

ゼミの仲間に刺激をうけ、積極的に学ぶことの楽しさを知る

—学生時代について教えてください。大学生活で印象に残っていることはありますか?

初めて親元を離れてのひとり暮らしだったので、とても思い出深い4年間でした。中でも特に印象に残っていることは研究室での学びです。

ゼミに所属するまでは、どちらかというとアルバイトに精を出しているような学生でした。ですが、石塚哉史教授の食料経済学ゼミに所属し、卒業論文のテーマなどを決める時期にさしかかった頃から、同期や先輩に刺激を受けて先行研究をたくさん読むようになり、意見交換を積極的に行うなど真剣に取り組むようになりました。

卒業論文では「八戸前沖さば」のブランド化をテーマに、市役所、商工会議所、水産加工食品の販売会社へのヒアリング調査を行い、地域ブランド化への可能性と課題等について研究しました。私が在籍していたゼミでは、先生1人に対して学生が3名と少人数であったことから、同期との関係も深いものとなりましたし、先生の手厚い指導を受けることができ、卒業論文は私なりに満足のいくものとなりました。

—弘前大学での学びや経験が、社会人になって活かされていると感じるのはどんなときですか。

弘前大学で過ごした4年間は、社会人となるまでの準備期間だったと感じています。たくさんの人たちと関わり合い刺激を受けたことで、社会人として働く今、少しの困難にぶつかっても乗り越える力が身についたと思います。

弘前大学農学生命科学部
「八戸前沖さば」の卒業論文調査にて。ゼミのメンバーと

少しでも興味を惹かれたら迷わず挑戦!

—弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします。

弘前大学は学部・学科が理系から文系へと多岐にわたっており、学生の出身都道府県も様々で大学院生や留学生も多く在籍しているため、多くの人達と関わることができるとても恵まれた環境で生活していたと感じています。
社会人として働く今振り返ると、学生時代は本当に様々なチャンスや機会が与えられていたなと感じます。私はゼミ活動や学科のカリキュラムで、青森県内だけでなく台湾での海外研修にも参加させてもらいました。

また、通常の授業でも豊富な知識を持った先生方の講義はもとより、外部講師を招いての講義も受講することができました。今振り返ると、私自身もっと貪欲にセミナーや授業に参加していたら、さらに多くの学びや発見があったかもしれません。

皆さんには学業やそれ以外でも、少しでも興味を惹かれるものがあれば迷わず挑戦してほしいです。そうした経験を積み重ねることで、自身の成長に繋がるだけでなく、就職活動にも活かされてくると思います。

弘前大学農学生命科学部
職場の仲間と一緒に。及川さんを含め、5名が弘前大学出身者

採用担当者様からお話を伺いました!


新谷様

太平洋総合コンサルタント株式会社
取締役管理部長・品質保証室長
新谷 英嗣 様


2019年2月に弘前市で開催された合同企業説明会に初めて参加した際に、弊社の企業ブースを訪れた及川さんと出会いました。及川さんと話をしているうちに、社会人になっても自分を高めて行くことへのこだわりと、地元に貢献したいという強い気持ちが伝わってきたのを今でも覚えています。そして、この合同企業説明会を通して出会った弘前大学の学生の皆さんが、自分の考えをしっかりと持ち、将来に対するビジョンも明確に持っていることに大変感心しました。
以来、弊社の採用活動は弘前大学の学生を重視するようになり、毎年採用を重ね、及川さんを含めて3年間で5名の新卒者を採用することが出来ました。弊社では他大学からも採用をしており、それぞれ活躍していますが、良い出会いがあれば、今後も弘前大学の学生を採用していきたいと考えています。

Profile

太平洋総合コンサルタント株式会社
設計企画部
及川 稀英さん

弘前大学農学生命科学部国際園芸農学科卒 。
北海道釧路湖陵高等学校卒業後、弘前大学農学生命科学部国際園芸農学科に進学。石塚哉史教授の食料経済学ゼミに所属。2020(令和2)年卒業後、太平洋総合コンサルタント株式会社に就職。現在は設計企画部で土木構造物、道路の設計等の業務を担当。2021(令和3)年に測量士補試験に合格し、今年合格率10%台と言われる測量士試験に合格。今後は、さらに難関といわれる技術士の資格取得を目標としている。