卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第24回に登場するのは、有限会社グリーンテーブル(TAKIZAWA WINERY)のアシスタントワインメーカー・平田 佳佑(ひらた けいすけ)さんです。人文社会科学部の学生時代に出会った一冊のワイン入門書をきっかけに、人生の進路を大きく転換。フランスでのワイナリー滞在や理系へ進路変更した大学院での学びを経て、現在は北海道でブドウ栽培からワイン醸造まで手掛けています。そんな平田さんに、ワイン造りへの情熱や仕事の魅力、弘前大学で得た経験、そして将来への想いについて伺いました。

ワイン造りへの憧れと醸造家としての道のり

—いつ頃からワインに興味を持ち始めたのですか。

実は、弘前大学在学中にワインに目覚めました。大学2年生の時、あるワインの入門書を読んで「品種によって味が変わる」とか「道路を隔てた隣の畑とほぼ同じ条件で栽培しているはずなのに、できたワインの味が全然違う」などの知識を得て、ワインって面白いなと感じたんですよね。

そこからワインについて学ぶために、在学中に1年間休学して、フランスに行きました。
フランスでは、ワイナリーに住み込みで働きながら各地を巡る旅をしていました。その中でフランスを代表するワイン産地のひとつである、ロワール地方のとあるワイナリーで働くことになり(働きたいです!と150件のメールを送った中で、唯一返信してくれた選ばれしワイナリーです笑)、そこでワイン造りの良さを感じました。私がそのワイナリーで働いていたのは秋で、ちょうどブドウの収穫時期でした。日本では、かなりテキパキと収穫作業を行うイメージでしたが、そこでは、オーナーの家族や友人、子供たちと、レコードを流しながら楽しく収穫をしていました。その姿を見てワイン造りに憧れを抱くようになりました。

平田 佳佑さん
フランス・ロワール地方での収穫の様子


弘前大学卒業後には、山梨大学大学院生命環境学専攻 食物・ワイン科学コースに進学しました。学部時代までは文系でしたが、大学院でワイン科学を学ぶために理系へ転向しました。入学当初は、中学校の卒業以来見ていなかったビーカーやメスフラスコを目にし、使い方や洗い方をイチから教えてもらうところから始めた修士生活でしたが、最終的には学会で大会発表賞を受賞できるくらい自分の研究に没頭することが出来ました。

平田 佳佑さん
大会発表賞受賞時の様子


—有限会社グリーンテーブルへの就職の経緯・理由を教えてください。

大学院修了後、初めての就職は長野県のとあるワイナリーでした。長野県は山梨県に続くワイン生産量2位の県で、ある方の紹介で、このワイナリーへの就職を決めました。ここでは主に赤ワインを造る仕事を経験しました。その後、現在の勤務先の有限会社グリーンテーブル(TAKIZAWA WINERY)に転職しました。

現在の有限会社グリーンテーブルを選んだ理由は2つあります。
1つ目は、前職で赤ワインのみを造っていたため、白ワインやスパークリングワインなど、様々なタイプのワインを造っている今の会社に惹かれたからです。また、前職よりも幅広い品種を扱えるので、自分の技術の幅が広がると捉えていました。

2つ目は、北海道に戻り、北海道のワイン造りを早く見たかったからです。日本ワインの生産量ランキングは、現在1位:山梨県、2位:長野県、3位:北海道です。大学院時代(山梨県)から最初の就職(長野県)までは有名産地でワイン造りを経験していましたが、いずれは故郷の北海道でワイン造りに関わりたいと考えていました。家庭の事情もあり、北海道に戻る良いタイミングと思い、今の会社を選びました。

ワイン造りの基礎を学んだ、前職場での仕込みの様子

ブドウ栽培からワイン醸造、事務作業まですべてをこなす

—現在のご自身の主な仕事内容を教えてください。

現在は、「ブドウ栽培」から「ワイン醸造」まですべて行っています。TAKIZAWA WINERYはいわゆるドメーヌ型*のワイナリーで、ブドウ畑を所有・管理し、ワインにして、瓶詰め・ラベリング・販売までをすべて自社にて行います。
「ブドウ栽培」の細かい仕事内容をお伝えしますと、まず雪が溶けてから春作業が始まります。豪雪地帯である北海道三笠市は、雪の重さで垣根栽培を維持する番線が曲がったり折れたりするため、毎年番線を貼り直します。そのため、他の地域と比較すると、4月からの作業量が多いです。ゴールデンウィークを過ぎた5月中旬頃からブドウが芽吹いてきますので、そこから管理作業に入ります。芽かき・誘引・摘芯・農薬散布・乗用草刈機や刈り払い機を使用した草刈りなど多岐にわたります。9~10月にブドウを収穫すると、11月は雪が降る前に粗剪定をこなさないといけないので、かなり大忙しです。

*ドメーヌ型ワイナリー:ブドウ栽培から醸造・熟成・瓶詰めまでをすべて自社にて行うワイナリーのこと。

平田 佳佑さん
ブドウ樹の誘引作業の様子


「ワイン醸造」は、ブドウが収穫される 9~10月から始まります。白ワインであれば、プレス・アルコール発酵、赤ワインであれば、除梗破砕*の後、アルコール発酵、プレスが一般的な流れでしょうか。
果汁をそのままにしていても発酵はしますが、良いワインは造れません。発酵期間中の温度や比重、味の変化などを観察し、ワインにしていきます。

アルコール発酵が終われば、マロラクティック発酵*の管理や澱引き*、貯酒管理など多岐にわたります。特に貯酒管理は重要で、木樽に入れたワインの補酒や亜硫酸管理などかなり慎重になるフェーズです。最後に瓶詰めです。ただ瓶に入れれば終わりではなく、なるべく瓶詰め中にワインが酸化しないように炭酸ガスやアルゴンガスを使用しながら丁寧に一本一本詰めていきます。

また、アルコールやpH(水素イオン濃度)などを測定する分析業務や、帳簿管理や酒税申告などのデスクワークもしっかりあります。
以上の内容をすべてこなすのが「ワイン醸造家」です。


平田 佳佑さん
瓶詰めやラベル貼りも自身の手で行い販売する

*除梗破砕:除梗(じょこう)…茎を取り除くこと 破砕(はさい)…ぶどうの粒を軽く潰すこと ブドウの果汁を出すための行程。
*マロラクティック発酵:ブドウ果汁に元々含まれ、鋭い酸味を持つリンゴ酸を、より柔和な酸味ある乳酸に変換する発酵。
*澱引き:発酵後、タンクの底に溜まった酵母などの澱(おり)と、上澄みのワインを分ける作業。

—仕事をしていて楽しさややりがいを感じるのはどんなときですか?

お酒を造る仕事の醍醐味は、お客様の顔が見えることだと思います。ワインメーカーをしていると、「メーカーズディナー」と呼ばれる、レストランで料理を振舞いつつワインを楽しんでもらうイベントがあります。目の前で自分が造ったワインを飲んでもらって、「美味しい!」と言ってもらえることが最高のやりがいなのではないでしょうか。

また、畑作業では四季を感じながらブドウに向き合っています。ブドウ樹の変化は勿論ですが、季節によって変化する草花や虫、動物を感じながら働くことができるのはとても特別なものだと思います。

お客様に楽しんでもらうため、常にワインと向き合っている

北海道を世界的なワインの銘醸地にするために貢献したい

—今後、どのように働いていきたいですか?将来の展望などを教えてください。

「ワイン醸造家」としてのキャリアを今後も続けていきたいと考えています。

ただ、北海道や日本という枠にとらわれず、色々な世界を見たいと思っています。日本は北半球に位置しており9~10月に仕込みを行いますが、南半球は季節が真逆で仕込み時期(1~2月頃)が被らないため、オーストラリアやニュージーランド、南アフリカなどの国へワインの仕込みに行きたいです。勿論、北半球にも、フランス、イタリア、アメリカなど魅力的な産地がたくさんあるので、それぞれの産地にも訪れてみたいです。

最終的には、北海道が世界的なワインの銘醸地として認知されるよう、その発展に貢献することが目標です。

ブドウを醸しているタンクの様子

—学生時代について教えてください。大学生活で印象に残っていることはありますか。

やはりねぷたまつりではないでしょうか。弘大囃子組に所属していたこともあり、ねぷたまつりはかなり近い距離で体験できたと思います。地元ではここまで規模の大きいお祭りはなかったので、初めて参加した時は本当に興奮しました。また、弘前公園のさくらまつりも好きでした。毎年桜を見に行くのが楽しみで日によって変わっていく桜の表情は何度見ても良いものですね。

また、在学中にはホテルのサービス業務やカフェでのホール業務、飲食店、百貨店での催事イベントの裏方、軽作業など、様々なアルバイトをしていたので、それぞれの異なる世界を垣間見ることが出来ました。社会人になってからはなかなかそのような機会がないため、思い返すと、学生時代に色々と体験出来てよかったと実感しています。

弘大囃子組として、毎年弘大ねぷたの運行に参加

なりたいものになれる人は、最後まであきらめなかった人

—最後に、弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします。

弘大生や受験生に伝えたいのは、「自分の可能性に蓋をせず、信じて、進みたい方向に向かっていただきたい」ということです。
弘前大学は、皆さんが学びたいこと、やりたいことに対して手厚くサポートしてくれる教職員の方が多くいらっしゃると感じます。

他人と比較せず、常に敵は自分だということを覚えておいてください。なりたいものになれる人は、最後まであきらめなかった人だと思います。
是非、後悔のないように学生生活を謳歌してください!

平田さんは他にどんなことをして過ごしていますか?

仕事以外で取り組んでいることは、筋トレと語学ですね。
筋トレについては、北海道出身で現在アメリカで活躍されている、BIG HIDEこと山岸 秀匡プロのYouTubeを観るのが好きです。

また、語学について、英語は勿論ですが、ワインに携わる者としてフランス語も必要です!
なので、今年、フランス国民教育省認定のフランス語資格試験であるDELF B1を受験予定で、日々勉強しています。

多忙ではありますが、充実した日々を過ごせていると思います!

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Profile

有限会社グリーンテーブル(TAKIZAWA WINERY)
平田 佳佑さん

弘前大学人文社会科学部社会経営課程卒 。
北海道札幌開成高等学校(現:市立札幌開成中等教育学校)卒業後、弘前大学人文社会科学部社会経営課程経済法律コースに進学。山本 康裕准教授(現:教授)のもと、マクロ経済学について学ぶ。在学中に1年間休学し、単身フランスへ渡りワイン造りについて学んだ。弘前大学卒業後、山梨大学大学院生命環境学専攻食物・ワイン科学コースへ進学。文系学部から理系大学院への進学という異色の経歴ながら、学会において大会発表賞を受賞。修了後、長野県のワイナリーに勤務し、本格的にワイン醸造家としてのキャリアをスタート。2024年8月には、ワインに関する高度な専門知識を証明する国際資格「WSET Diploma Level 4 in Wines」を取得。2025年3月より有限会社グリーンテーブル(TAKIZAWA WINERY)に入社。北海道三笠市を拠点に、アシスタントワインメーカーとして、ブドウ栽培からワイン醸造、販売、帳簿管理、酒税申告まで、ワイン造りに関わる幅広い業務を担当している。