弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第4回は、細胞検査士のカリキュラムを履修している 小田嶋 広和(おだしま ひろかず)さんです。研究の内容や細胞検査士養成課程での学修、部活動の経験などを伺いました。

「人はなぜ死ぬのか」を解明する病理学

ー今の専攻を選んだ理由は?また、細胞検査士養成課程を選択することに決めた理由を教えてください。

 僕は「何が原因で人は死ぬのか」に興味があって、病気の原因を解明するような病理学を学びたいと思い、臨床検査技師や医師を意識するようになりました。弘前大学医学部保健学科検査技術科学専攻へは後期試験で合格し、入学しました。弘前大学には医学科も含めると5つの病理研究室があって、これが全国でも珍しく弘前大学の特徴だと思います。

 僕は大学2年のときに風邪薬で薬剤アレルギーが出てしまって、3か月くらい入院したんです。そのとき色々な検査があって、その中で臓器の一部を切り取って調べる検査が、個人的にすごく嫌で負担でした。患者さんの負担を軽減するためには、回数を少なく済ませる、正診率を上げる、ということが必要なので、本腰を入れて勉強しようと思いました。細胞検査士養成課程があることは受験当時わかっていませんでしたが、そんな経緯があって選択することを決めました。

弘前大学医学部保健学科4年

新しい細胞診法と従来法の違いを研究する

ー細胞診研究室での研究の内容を教えてください。

 細胞検査士養成課程を受講する場合、3年次前期終了時の「細胞診断学講義」の期末試験が選抜試験になって、合格すると3つの研究室に分かれて所属します。僕は渡邊純先生の研究室に所属していた友人から話を聞いて、研究内容自体へ興味がわいたのと、もし自分だったら、、、と思うところがあって、問題意識があるほうが意欲を持って取り組めるのではと思い、希望しました。

 研究テーマは、新しいことで、臨床の現場に還元できることにしたいと考え、「子宮内膜液状化検体細胞診法(LBC法)と従来法の形態学的相違とLBC法の有用性について」としました。顕微鏡でがん細胞を探し出す検査を“細胞診”といいます。従来法では細胞をスライドガラスに直接塗沫(とまつ)しますが、細胞が壊れていたり、細胞が重なり、観察できなかったりします。一方LBC法では特殊な固定液に細胞を集め、細胞の重なりを軽減できるので、邪魔なものを除去できて観察しやすいのです。また、従来法で1日数十枚も見ると目も疲れますが、LBC法は塗沫範囲が小さいため検査士の負担が少なくて済みます。負担が減ると、婦人科検診や喀痰検診でも、より多くの患者さんに対応できるようになるので、検診を受けられる人も増え、がんにかかる人も将来的には少なくなるでしょう。見つけづらい早期がんの発見が可能になることも期待できます。LBC法は青森県ではかなり普及していますが、全国的にはまだまだ普及していない細胞診法です。僕はLBC法の特徴を解明し臨床現場へ還元できるよう、従来法との違いを研究しています。

 今は、併設されている大学病院の患者さんの標本を、3Dプロジェクタのように表示できる機械で観察しています。細胞はその機能に応じた形をしていますが、その機械のカメラで撮影すると細胞の形が全部残り、顕微鏡では不可能だった観察ができるようになります。それで、従来法で採取されたものとLBC法のものだとどう違うのか、つぶれ方の違いや、細胞や核の形の違いなどの特徴を調べています。

 僕は研究を続けたいと思い、大学院に進学します。今は子宮内膜をテーマに、婦人科系の疾患に絞っていますが、がん以外の疾患や呼吸器など他の器官にも少しずつ研究の幅を広げたいと思っています。

弘前大学医学部保健学科4年
デジタル標本を作製する機材を使用して細胞を観察する

細胞検査士資格取得に向けて

ー細胞検査士養成課程では、どのような学修をするのでしょうか?

 3年前期に座学で勉強して、後期は臨地実習が終わった後の空き時間を利用し卒業研究をしたり、スクリーンに細胞の画像を投影し、その細胞について自分の所見や診断を話したりというのを繰り返します。4年になると顕微鏡を使って大学病院や他の施設からお借りした標本を実際に見て、自分で診断できるよう数を重ねていきます。
 また、全国の様々な施設から先生がいらっしゃる講義もあり、とても刺激になります。養成課程の内容とは少し外れますが、先生方との出会いからご縁もあって、平成29年5月末に大阪であった臨床細胞学会の総会で、学生としては珍しく発表する機会をいただきました。僕が研究しているLBC法は、先ほど説明したように新しい方法で、病院に導入する必要性から従来法で実施してきた先生方も勉強されている状況なので、興味を持って聞いていただけたと思います。

 細胞検査士の試験は10月に一次試験、12月に二次試験がありますが、僕たち6期生は全員合格できました。1~5期生も、全員合格しています。今年度の合格率は30%くらいだったので、厳しい中で全員が合格したのは全国的にも意義のあることなのかなと思います。
 臨床検査技師の国家試験に合格しなければ、試験に合格していても細胞検査士の資格を取得することはできないので、今は2月の国家試験に向けて勉強しています。

弘前大学医学部保健学科4年
オープンキャンパスの様子

さまざまな立場の人と関わり、視野が広がる

ー研究室はどのような雰囲気なのでしょうか?
 また、保健学科の他専攻との交流についても教えてください。

 研究室は分かれていますが、実習などは同じ部屋でやるので、細胞診研究室全体の活動が多いです。医学科の病理学研究室とも交流があり、合同で症例検討会を開催したり、いっしょに弘前公園の雪燈籠まつりのために雪像を作ったりしたことも印象に残っています。
 今年度は、大学病院の病理部勤務で細胞検査士の資格を持っていない方たちが一緒に試験を受けることになり、研究室にいらっしゃいました。細胞検査士の二次試験で、標本を作る試験がありますが、実際に病院に勤務されている方から教えてもらえたことはとてもプラスになりました。
 また、臨床検査技師は治療まではあまり関わらない職種ですが、指導教員の渡邊教授は医師なので、医師の視点で治療についても話してくれます。細胞診なので細胞しか見ていないこともありますが、実際の病理では“組織像”と“細胞像”を比較することが重要である、といった僕たちとは違う視点から指導をしてくださるので視野が広がります。

 保健学科全体でいうと、1年次に全専攻必修の講義があって、他専攻に友人を作る機会があります。保健学科で5専攻がある大学も珍しく、いろいろな話が聞けます。
 例えば、MRIのことは放射線技術科学専攻の学生に聞くとわかりやすかったり、患者さんとの接し方やリスクマネジメントについては、患者さんと普段から接点の多い看護学専攻の学生に聞いたりと、国試に向けて、お互いに勉強し合っています。

部活でリフレッシュ

ー剣道部に所属していますが、部活で経験したことなどを教えてください。

 小学校のころから剣道を続けていたので、大学でもと思いました。
 全学の剣道部と、医学部の剣道部に所属しています。全学の剣道部では週2回、八段の先生がいらっしゃって指導してくれます。弘前学院大の学生も一緒に活動しています。今年後輩たちが団体でインカレに出場してくれ、今後も活動がより活発になっていくと思います。
 医学部の剣道部では北日本ブロックの北医体、東日本ブロックの看護体や東医体があります。1年のときには北医体の新人戦で団体3位、看護体は個人でベスト8まで進出できました。医学部の主将を任された年もありましたが、学年が上がってからは実習や国試がありなかなか部活に参加できないので、ストレスが溜まりがちです。身体を動かすとリフレッシュしますし、花見やバーベキューなどの行事も多く、いい息抜きの場になっています。
 高校では練習試合の相手は県内でしたが、大学では他県の大学や企業と交流する機会もあり、幅が広がりました。大学で部活をやる醍醐味だと思います。

弘前大学医学部保健学科4年

同じ目的を持った仲間を見つけて

ー最後に受験生へ向けてメッセージをお願いします。

 目標は高いほうがいいと思います。
 受験では、まわりの人にこの大学に受かる!この点数をとる!と宣言して、どうしても引けない状況を作ってから勉強するのがいいと思います。
 国試が近づいてきて思うのは、センター試験は出る範囲が決まっていて、大学入試も問題傾向が大学によってだいたい決まっているので、同じところを受ける仲間を見つけて、自分が情報弱者にならないように情報を共有できる交流の輪を作っていくのが大事だなということです。まわりに同じ目的を持った人がいると、自分も成長できると思います。

弘前大学医学部保健学科4年

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Profile

医学部保健学科検査技術科学専攻4年
小田嶋 広和さん

細胞診研究室所属 。
秋田県横手市出身。横手高等学校を卒業後、病理学を研究したいという思いで、平成25年4月に弘前大学保健学研究科検査技術科学専攻へ入学。3年次から細胞検査士養成課程を選択し、渡邊純教授の細胞診研究室に所属。大学院進学予定。部活は剣道部に所属し、3年次には主将を務めた。