弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第3回は、機械材料工学の研究室に所属し、専門性を活かして就職を決めた 森野 春香(もりの はるか)さんです。金属の加工に関する研究の内容や、サークル活動で印象に残っていることなどを伺いました。
北海道斜里郡清里町から弘前大学へ
—ものづくりに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
また、弘前大学、今の学部学科を選んだ理由は?
小さいころから、小学生でもわかるようにエレベーターの仕組みを説明しているような絵本を読むのが好きで、周りのものを解体することや、工作が好きだったので、物心ついたときにはものづくりに興味を持っていました。家族も、机やおもちゃ、絨毯、楽器まで、身の回りのいろいろなものを自分で作ってしまうのが好きなので、そういう環境も影響していたのかなと思います。
機械やロボットについて学びたいと考えていたときに、高校の先生から弘前大学に知能機械工学科(現:機械科学科)があることを教えていただき、先生方の研究内容に魅力を感じて、推薦入試を受験しました。地元を離れないと進学はできなかったので、これを機に新しい生活を!と思いました。
統率のとれた仲の良い研究室
ー機械材料工学の紙川研究室を選んだ理由と、研究室での”リケジョ(理系女子)”事情を教えてください。
就職のことを考えたときに、機械系に関わる仕事がしたいと思って。私が所属している研究室は“機械材料”を扱っています。私は機械に関わる上で材料は欠かせないもので、中でも“金属”は機械のもととなる大事な部分だと考えているので、学んだことを将来に活かせるのではと思いました。あとは、紙川先生の授業が好きだったということもあります。研究室は先生との相性も大きいと思うので、その理由もあって紙川研究室に興味を持ちました。
4つの研究室でひとつの部屋を使っていますが、その中では先輩にも同期にも女性はいなくて、最初はどうしよう、居づらいなと感じました。
そんな中、みんなはフレンドリーに話しかけてくれました。学科で年に1度ソフトボール大会があるんですが、紙川先生は野球が好きなので、研究室のみんなは全力で取り組むんです(笑)私は参加を遠慮しようと思っていましたが、練習のときに先輩が「森野さん行かないの?」と声を掛けてくれて。女子だから気を遣って誘わない、というのではなく、なじめるようにいろいろなきっかけをくれました。今ではすごく研究室が楽しいんです。他の研究室の先生からも、「こんなに統率のとれた研究室は初めてかもしれない」と言われるほど仲が良いです。最初のような戸惑いは、もうありません。
ただ、理系を目指す女性は増えてほしいと思っています。いわゆる”リケジョ“が増えてきていると言われていますが、金属材料、機械の女子はめったにいないので。同じ境遇、同じ条件で同じことをしている人がいたら心強いなと思うこともあります。もっともっと興味を持ってほしいな。
パンチをひたすら金属板に押し込んでいく
ー研究内容について教えてください。
私は金属の“加工性”に着目した研究を行っています。金属の研究の中に「エリクセン試験」という、薄い金属の板にパンチをどれくらい押し込めるかを調べる試験方法があります。加工しづらい金属だとパンチを押し込むとすぐに割れてしまい、製品には使えなくなってしまいます。金属板が割れるまでの値、つまりパンチが移動できる距離が、材料の種類によって全然違うんですよ。材料の種類を変えるとどうなるのかに着目した先輩の例もありますが、私は同じ材料で”寸法“を変えるとどうなるのかを研究しています。板厚、パンチ直径を変えたときの変化の関係性は、板厚に依存するのか、パンチ直径に依存するのか、はたまた違った原因があるのかを解析し、また、変形の仕方も観察します。
JIS規格で「エリクセン試験」の方法は規定されていて、金属の板、試験片の寸法も決まっていますが、その大きさの試験片を用意するのは、小規模の研究室では難しい場合があります。私はいろんな寸法で行った試験結果を定量的に解析することで、小さい寸法で得られた結果からJIS規格の寸法で行った場合の数値をだいたい予測できるのではないかと考えています。予測が可能であれば、試験にかかる材料用意の負担を軽減できるかもしれません。
パンチを押し込む試験が終わると、透明な樹脂に変形した金属片を埋めこんで、断面、形状を観察する段階に進みます。今この解析結果をまとめていますが、想像通りの実験結果が出てくれたので、よかったぁと思っています(笑)実験結果が得られたときが一番嬉しいですね。がんばった結果としてデータが出る達成感があります。想像がつかなかった新しいことを発見できるのもおもしろいです。
私は自動車のフレームなどのプレス加工技術を主軸とした会社に就職が決まっています。やってきたことがそのまま活かせるという訳ではないですが、研究で培った考え方、得た知識など、実験をするにあたっていろんな工作機械を使ってきた経験が生きるのではないかと思っています。
発想が試されたロボット製作!
ー研究以外で楽しかった講義などはありますか?
3年生のときに専門で「創造実習」という科目がありました。
実習では2つ課題があって、一つはミニカーを作って動きをプログラミングする課題です。指定された道をいかに速くゴールできるか、迷路を脱出できるかをテストします。車を作るのが本当に楽しかった!
もう一つが、4人くらいのグループでオリジナルのロボットを作る課題です。私のグループでは「腕枕」を作りました!首から下の肩から手にかけた部分を作って、二の腕に体重がかかると腕が曲がって、彼氏が腕枕をしてくれている体験ができるという、女子ならではのおバカなロボットです(笑)起こすときは二の腕が振動して、内蔵されたスピーカーから「おはよう。起きて」と声がして。体重がなくなると腕が開いて起きられるという。先生からは「ユーモアがある」とお褒め(?)の言葉をいただきました。最後のプレゼンで、みんなのユニークな発想を見るのも楽しかったですね。学科らしい授業で、一番印象に残っています。
活動の中で培われた責任感
ー弘前大学吹奏楽団に所属していますが、印象に残っている活動などを教えてください。
私は打楽器をやっています。コンクールに出るのは3年生までで、4年生は引退という形になりますが、地域の商業施設や小学校での演奏、全体の定期演奏会に出るといった活動は続けます。
活動では3月にある、被災地への訪問演奏旅行(さくら満開プロジェクト)が強く印象に残っています。演奏会に来てくれた方がすごく温かくて。「ありがとうございました」と書かれた横断幕や、「本当にありがとう、また来てね」の言葉など、たくさんの感謝の気持ちをいただけて、とても感慨深いものがありました。サークルに入ってこういう活動ができたことが本当によかったと思います。
活動を通して、「よくしていくためには自分でどんどん動かなきゃいけない」と考えることが増えました。演奏がうまくなるために講習会に行こうとか、同じパートの人を誘ってアンサンブルコンテストに出てパートのスキルアップをしようとか。学生だけでやるしかないと思うと、一人一人の行動の大事さや責任を感じるようになりました。
初めての一人暮らしも安心できる街
ー最後に受験生へ向けてメッセージをお願いします。
私は弘前大学に入って良かったと思っています。大学から一人暮らしを始めましたが、弘前は住みやすく、街の人も優しいので、遠方出身で始めての一人暮らしの方も安心です。音楽活動が盛んなところもいいなと思っています。弘前大学は総合大学なので、違う学部学科の人とも交流ができて、専門分野の違う内容の情報も入ってくるので視野が広がります。先生方も面倒見が良すぎるくらいの方がたくさんいてくれて、学生と向き合ってくれているのを感じます。
女性で理系の学部を目指している方も、男性が多い、という理由で尻込みすることはありません。私の研究室や授業のことでお話したように、知能機械工学科(現:機械科学科)は性別を気にせず楽しめる学科です。まわりの女子学生も就職が決まるのが早かったですし、就活中も”リケジョ“でよかったと思うことは多々ありました。機械系の女性はレアなので、就職を視野に入れて機械系に入るのもおすすめです!
理工学部機械科学科「教員・研究紹介ページ」はこちら
「弘前大学吹奏楽団ホームページ」もぜひご覧ください!Twitterも配信中です!