理工系学部は、一般的に男子学生が多いと言われ、弘前大学理工学部も女子学生比率は学部全体で約15%。その中で、女子学生はどのようなキャンパスライフを過ごしているのか。理工学部数物科学科の「江居研究室」を紹介します。
女性研究者と女子学生(学部生、大学院生)&卒業生が、研究の魅力などを本音でトーク。進路選びに迷う後輩理系女子に熱いメッセージを送ります!
member座談会メンバー
佐藤 真織 さん
学年:理工学部 数物科学科 4年
研究室:江居研究室
趣味:お菓子作り、テニス
所属している部活やサークル:硬式テニスサークル
澤田 奈央 さん
学年:理工学部 数物科学科 4年
研究室:江居研究室
趣味:バスケ、YouTube観賞
所属している部活やサークル:バスケサークル
三浦 彩菜 さん
学年:理工学研究科 博士前期課程 2年
研究室:江居研究室
趣味:ゲーム、釣り
所属している部活やサークル:硬式テニスサークル
金谷 華乃 さん
※オンライン参加
勤務先:㈱フコク情報システム
理工学部 数理科学科(現:数物科学科) 2019年3月卒業
趣味:野球観戦
江居 宏美 先生
理工学部数物科学科 准教授
出身地:広島県尾道市
趣味:山登り、畑
弘前大学理工学部 江居研究室の研究内容紹介
文字の置換規則や数の展開と関係した離散力学系から、フラクタル図形やタイル張りを構成し、その性質を調べています。
フラクタル図形とは、全体とその一部分とが相似になっている図形です。自然界には雪の結晶や海岸線、血管の分岐構造などフラクタルなものが数多く存在しています。
右図は、連分数展開とよばれる複素数の展開から決まるフラクタル図形と、フラクタル図形を用いて平面を敷き詰めたタイル張りの図です。
それでは、まず初めに自己紹介をお願いします。
弘前大学大学院理工学研究科理工学専攻2年の三浦です。「0」と「1」で構成されている数列の中で、特別な条件を持つ数列の性質について研究しています。
理工学部数物科学科4年の澤田です。図形をうまく切って他の図形に変形する過程を研究しています。
理工学部数物科学科4年の佐藤です。今は、ラテン方陣の研究をしています。ナンプレ(ナンバープレイス)のようなものです。
2019年3月に理工学部を卒業した金谷です。現在は「(株)フコク情報システム」に勤務し、主に生命保険業界のシステム保守をしています。
進学にあたって
皆さんが、数物科学科を選んだ理由について教えてください。
高校時代の数学の先生に憧れて、教師になりたいと思ったからです。理工学部では教員免許が取得でき、より専門的な知識も学べるので、この学科を選びました。
私も同じです。
数学が得意だったこともあり、高校の先生に勧められて。
私も理数系科目が得意だったので理工学部を選びましたが、数学の分野に進むことについては、「将来何になりたいのかも決まっていない状態で、その先どうなるんだろう」って悩んだ時期もありました。でも、今、社会人になって思うのは、自分の得意な数学を通して考える力を身につけたり、人間性を磨くことができたんじゃないかなと思っています。
理工学部数物科学科(理工学研究科)に進学して良かったと思うことは?
大学での数学は、高校までと違って「論理力」が必要。物事を考える時、今までは雰囲気や感覚で処理してきたことも、段階を踏んで考えるようになったかも。
三浦さんは大学院に進学して、学部と大学院で勉強の仕方に違いはありましたか?
大学院では、先生から1対1で研究指導を受けることで、専門分野をより深く習得することができました。
私はもともと教師になりたくてこの学科に入ったのですが、自分とは違う目標を持った人、単純に数学が好きという人、多様な考えや価値観を持った人に出会って視野が広がりました。IT系に進む人もたくさんいるし、将来の進路選択の幅も広がった気がします。
数学のおもしろさについて
大学で学ぶ数学のおもしろさ・魅力は何ですか?
数学は、ゲームのRPGとちょっと似てるかも。RPGはレベル1から始まって、必要な情報を集めたり、魔法を覚えたり武器をそろえたりして、少しずつ強い敵を倒していくでしょ。数学も、新しい定義や定理を覚えることで、問題が解けるようになる。そこが面白いです。
数学はロジック的に物事を考えていく学問。職業柄プログラムを書いているのですが、プログラムが動かないときに「なぜそうなるのか」を調べ上げる力は大学での学びからきているのかなと思います。
数学は、証明をするときなど、論理的に一つひとつ積み上げていく感覚があるのが楽しいですよね。理工系学部では、どの学科でも数学の基礎学力は必要になります。数学で身につけた思考力は、将来いろいろな方面で役に立つと思いますよ。
理工学部について
卒業研究がある、という点についてはどうですか?
学部や大学院での学びの集大成として、いいと思います。
職場の同期に聞くと、数学系の学科は研究発表を実施しない大学も多いようですが、会社では資料を作って発表するのも日常茶飯事なので、仕事に役立っています。
金谷さんは、卒業研究の時も納得するまで何度も質問して問題を解決していましたね。卒業研究発表ではプレゼン力も備わり、迫力がありましたよ。
そうですか? でも、二度と思い出したくないな~(笑)。
「女子が少ない学部」ならではのメリットと、逆に困ったことがあれば教えてください。
女子の人数が少ない分、女子同士の仲がいいですね。
男女問わず仲が良くて、みんなでごはんを食べに行ったり…。
金谷さんの学年は、女子が学科で一人という珍しい環境でしたよね。
入学式前の顔合わせで、女子は私一人だけ、ということを知ってショックでした(笑)。でも、その分メンタルは強くなったかも(笑)。今の職場は8割が男性ですが、私の場合はすでに免疫があるので全然平気です!
私自身、学生時代も研究者としても、これまで女性だからといって困ったことは特に思いつかないです。確かに、理工系分野の女性比率はどこにいっても低いですが、では逆に、女性が圧倒的多数の学部や職場が女性にとって最高の環境なのかというと、必ずしもそんなことはないですよね(笑)
学生の目線で、弘前大学理工学部の魅力を伝えるとしたら?
就職率が高いこと。以前、新聞で弘前大学が全国の国公立大学のなかで上位にランキングされているのを目にしましたが、就職のことを考えるならおススメですね。
日本経済新聞社と就職・転職支援の日経HRが実施した『人事が見る大学イメージランキング』で、弘前大学は「採用を増やしたい大学」に2018年版が全国1位、2021年版が全国2位にランキングしました。
東京でも意外と弘大の知名度は高いんですよ。地方国立大出身者の人柄も評価されているのかな(笑)「弘大の理工学部出身なの? すごいね」、「いい大学だよね!」と言われることも多く、今では誇りに感じています。まわりの評価もすごく高いので、自信をもっておススメします!
弘前大学理工学部は、理学と工学が融合した学部なので、数学などの純粋理学から応用化学まで幅広く学べる教育環境があることも特徴です。弘大は、理工学部、人文社会科学部、教育学部、医学部、農学生命科学部の5学部からなる総合大学なので、さまざまな分野を学ぶ学生や先生と知り会えることも大きな魅力ですね。
将来、何の仕事に就きたいか決まっていない人も、この学部で学びながら考えてもいいのではないでしょうか?
今、大学卒業後の進路の話が出ましたが、金谷さんが在学中に「こういう仕事をしてみたい」と、進路を決めたタイミングはいつですか?
授業でプログラミングを学び始めた頃ですね。それまでは、ITというワードすら知らず、正直言って初めはあまり楽しくなくて(笑)。でも、授業がきっかけでIT業界について調べ始め、興味が湧きました。今思えば、その出会いが分岐点だったのかも。
弘前市の魅力
暮らす街としての弘前の魅力は?
歴史ある城下町で、明治・大正時代のレトロな洋館も多い趣のある街です。江居研究室のある理工学部2号館からは岩木山も一望でき、眺めは最高ですよ!
桜で有名な弘前公園など、インスタ映えするスポットがたくさん!
お洒落なカフェが多いです。弘前は「珈琲の街」とも言われてて、キャンパス内にある「弘大カフェ」は、大正時代に建てられた外国人教師館を改装したもので、観光名所にもなっています。
自然が多いので、野菜や果物など食べ物が安くて新鮮。特に生産量日本一のりんごはとても美味しく、アップルパイは絶品ですよ。
煮干しラーメンが恋しい~!郷土料理の「けの汁」も大好き!
私は山登りが好きなので、岩木山や八甲田山が近くにあって、ちょっと足をのばせば世界自然遺産白神山地がある環境は最高ですね。
弘前大学は、新型コロナの影響で経済的に困窮した学生を支援するため、さまざまな取組みを行っています。コロナ禍で学生支援を利用した経験や、それ以外にも弘大のサポートが役に立ったことがあれば教えてください。
「100円夕食・昼食弁当」や、市内の飲食店で利用できる「プレミアム食事券」の取組みです。あとは、学内で新たなアルバイトの機会を設けてくれたり。コロナ禍でアルバイトができなかった学生に対して、金銭的な支援も有難かった…。もう、弘大様様です(笑)
学生・教職員を対象とした、新型コロナワクチンの一括接種ですね。大学で早くに接種できたので良かったです。
「地元産品を活用した食支援プロジェクト」など、地域の方たちからの支援も有難かったですね。地元産のお米をいただき、しっかり抱いて帰りました(笑)
教員志望者向けの講座や公務員講座など、将来に向けてのサポート体制が充実しているのも助かりますね。
就職活動にあたっては、キャリアセンターの対応はかなり手厚かったですね。足しげく通いました。本当に感謝しています。
理系女子の卒業後の進路について
卒業後の進路、将来の夢について教えてください。
私は、IT企業に就職が内定しています。プログラミングのスキルを磨き、お客様の要望にしっかり応えられるような人材になりたいですね。
私は、地方自治体から内定をいただきました。まだ配属先は決まっていませんが、数字に強い点を業務に活かせればいいなと思っています。大学で身につけたコミュニケーション能力を生かして頑張りたいです。
私も地方自治体に内定しました。先生には、「理数系は頭脳系だから重宝されると思うよ」と言われました。
私は、現在SE(システムエンジニア)として、生命保険のシステム保守の仕事をしています。入社3年目ですが、プログラミングが楽しくなり始めていて、とってもやりがいを感じています。次のキャリアプランとしては、経験を生かして後輩の人材育成も頑張っていきたいと思っています。
理系女性の先輩、江居先生への質問タイム!
最後に、私たちからも先生に質問させてください。
先生は、なぜ研究者を目指したのですか?
初めから研究者を目指していたわけではなくて、高校3年の頃に当時話題になっていた「フラクタル」の本をたまたま目にして、コンピューターグラフィックスの絵に衝撃を受け、大学で専門的に勉強したいと思うようになりました。初めは「学びたい」から始まり、学んでいるうちに次々と興味が広がり、いつの間にか研究者になっていました(笑)。研究者とは自分がやりたいことを続けた先にある道なのかな。研究者だけでなく、どんな環境でもコツコツと努力を積み重ねていけば、どの分野でも牽引する立場になれると思います。
研究のおもしろさはどんなところですか?
自分自身で予想立て、論理を積み上げてそのことを証明していく過程が面白いです。数学の場合は、ある事実を証明する道筋はいろいろあります。アイディアひとつで、美しい証明ができたときは嬉しいですね。
学生たちを指導するうえで、心がけていることは?
「数学が面白い!」という気持ちをみんなと共有したい…その一言に尽きます。そう思ってもらえるように授業をしているつもりですが…どうでしょうか?(笑)
イキイキしている雰囲気と、楽しさが伝わってきます!!
めっちゃ、わかる~!(笑)
後輩たちへのメッセージ
最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。
特に将来やりたい仕事が決まっていなくても、少しでも数学や理科が好きだという気持ちがあれば、ぜひ弘前大学理工学部で学んでほしいと思います。男子学生が多く初めは圧倒されるかもしれませんが、少ない女子どうし仲良く、楽しい学生生活が送れると思います。絶対おススメです!!
勉強をしたくなかった私の経験談からすると(笑)、男女問わず、高校時代は受験勉強がいちばん辛いと思います。それでもあきらめずにその期間を精一杯頑張れば、楽しい大学生活が待っています。しかもその辛い時期を乗り越えたことで、就職活動も同じように頑張れると思います。頑張れば頑張った分、将来好きな道が選べるし視野が広がりますよ。
理工学部は弘大のなかでも圧倒的に女子が少ないですが、他学部には女子がたくさんいます。大学生活全般ではアルバイトやサークル活動など、いろいろな交流を通して充足感を得られるし、社会性も学べるのでおススメです。
私自身、この大学に入学したことでの後悔は一切ないし、毎日充実しています。希望をもって受験勉強を頑張ってください。
「学びたい」「知りたい」という気持ちがあれば、ぜひ大学でその分野を深めていってほしいと思います。本日は、ありがとうございました。