弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』。第35回は、合格率は平均10%前後、会計資格の中で最難関と言われている「公認会計士試験」に合格した葛西 俊史(かさい しゅんじ)さんです。大学入学と同時に公認会計士試験の勉強をスタートさせた葛西さん。公認会計士を目指したきっかけや、膨大な勉強量をこなすためのモチベーション維持について、また、大学の授業や今後の展望などについて伺いました。
昔から好きだったエンタメ業界で「経営」に関わる仕事がしたい
— 弘前大学人文社会科学部を志望した理由を教えてください。
以前から「会社の経営」に漠然と興味がありました。実家が自営業をやっていて、小さい頃から親が経理業務をしている姿を見て育ったことがきっかけになっているかもしれません。
あとは、昔からドラマや映画、お笑いやスポーツなどのエンターテインメント(※以下 エンタメ)が好きで、将来はエンタメ関連の仕事に関わりたいという想いがありました。エンタメは身近でありながら自分の支えになっているものだったので、将来自分がどう関われるかを考えた時に、その企業の経営や会計のサポートが出来る仕事もいいなって思って。
人文社会科学部社会経営課程(企業戦略コース)では、自分の興味がある経営や会計について深く学べるということもあり、弘前大学を選びました。
ふと目にした「公認会計士」の仕事。
会社経営への興味から資格取得を目指すように
— 公認会計士について伺います。公認会計士の仕事について簡単に教えてください。
公認会計士は、ひとことで言うと「会計監査のプロフェッショナル」です。
主な仕事は、独占業務である「監査」を行うほか、「税務」「コンサルティング」「会計」なども行います。幅広い業務内容と、企業の内部からサポートできるというところが「公認会計士」の魅力だと感じています。
— 公認会計士を目指そうと思ったきっかけは何ですか。
高校3年の夏にたまたまインターネットでいろいろな職種をまとめたサイトを見ていて、そこで初めて「公認会計士」という仕事の存在を知りました。もともと会社経営に興味があったので、「公認会計士」という言葉がひっかかったのかもしれません。
しばらくして、他のサイトで「公認会計士」の資格予備校の広告を目にした時、ふと「これは何かの巡り合わせだな」と思ったんです。それまでは将来なりたい職業や具体的な目標が無かったんですけど、自分のこれからの人生を考えていく中で「エンタメ業界に関わっていたい」という想いがあったので、経営や会計の面から企業をサポートできる「公認会計士試験合格」を目標にしようと決めました。
— 公認会計士試験についても伺います。公認会計士試験について簡単に教えてください。
「公認会計士試験」は「司法試験」「医師国家試験」と並ぶ三大国家資格と言われており、合格率は平均10%前後、会計資格の中で最難関の試験です。
公認会計士試験合格を目指すにあたり、まずは「日商簿記1級を取得しよう」と決めました。日商簿記では一番難しい1級の勉強が、公認会計士試験の基礎固めや応用に役立つことと、計算力を高めることで後々それが自分の強みになるだろうなと考えたからです。
僕が通っていた高校は普通科だったので、大学に入学してからすぐに独学で簿記の勉強を始めました。猛勉強の甲斐あって、大学1年次の1月には日商簿記1級を取得することができました。
公認会計士試験については、「短答式試験」と「論文式試験」の2段階試験となっていて、その両方に合格する必要があります。日商簿記1級取得後、大学2年次の5月に初めて1次試験の「短答式試験」にトライしたんですが、あと一歩のところで合格出来なくて。
そこから公認会計士の通信教育に通い始め、その年の12月に行われた2回目の1次試験では無事合格、翌年の8月に行われた2次試験の「論文式試験」では、一発で合格することができました。合格発表で自分の番号を見つけた時は、とにかくホッとしました。
膨大な勉強量をこなすためのモチベーションは
「息抜きの時間」と「エンタメ業界への強い想い」
— どのくらい勉強されましたか。
1日だいたい7~8時間は勉強していました。「公認会計士試験合格までに必要な勉強時間の目安は約3,000時間」と言われたりしていますが、実際はもっと多くの時間が必要だと感じました。
主に朝や空きコマ*、大学から帰宅してから集中して勉強していましたね。基本的にオフの日は無かったんですけど、何かを犠牲にして勉強している、という感じはあまり無くて。特に睡眠時間を削ることも無かったです。やっぱりちゃんと寝ないとリフレッシュできないので(笑)。
大学の授業との両立については、授業でも会計の科目をとるようにしたりと、資格取得と並行して勉強できるよう工夫していました。
*空きコマ…大学では授業時間のことを「コマ」と表現し、授業が無い空き時間を「空きコマ」と呼ぶ
— 膨大な勉強量をこなすためのモチベーション維持はどうしていましたか。
毎日必ず「息抜きの時間」を作っていました。1日1時間は自分の好きな動画やドラマ、映画を見てリフレッシュするようにしていて。今振り返ってみても、モチベーションを保つためには「息抜きの時間」は絶対必要だな、と感じています。あとは、「エンタメ業界に関わりたい」という想いが強かったので、頑張れた一番の理由はここにある気がします。
— 「公認会計士」の就職活動についても伺います。就職活動期間は短いそうですね。
公認会計士の就職活動は、他の就職活動と比べハイスピードで終了することが特徴です。
監査法人は公認会計士試験を基準に採用スケジュールが組まれていて、8月の2次試験終了後、11月の合格発表まで監査法人の説明会やイベントが集中して開催されます。その期間で情報収集をして、合格発表後にすぐ面接に行く、という流れになっているようです。僕は場合は約1週間で都内の大手監査法人から内定をいただきました。
経営に活かせる実践力を養う魅力ある授業。地域企業と連携も
— 大学の授業についても伺います。印象に残っている授業があれば教えてください。
僕は経営に関する授業を中心にとっていますが、中でも森 樹男 教授の「事業計画演習」と「ビジネス戦略実習」が印象に残っています。いずれも、地域企業から提示された課題に対し、解決策の検討から市場での検証・提案を長期間かけて行う課題解決型の授業で、「弘前大学ならではの授業」だと先生から聞きました。
2年次に行った「事業計画演習」は、個人やチームでビジネスプランを考える授業で、「青森県で起業するにあたっての戦略」を考えたり「起業してから5年間の収支見込表」を作成したりと、実践に近い本格的な内容でした。
3年次の「ビジネス戦略実習」は、地域企業と連携し、企業から出された経営課題に対してグループで話し合いながら課題解決に取り組む、というものでした。僕が関わったのは青森県内にあるコンサルティング会社で、多くの企業が抱えている「人材不足」の課題について、その企業の方とディスカッションをしたり企画提案などを行いました。
どちらも「事業を企画するためにはどのような視点が必要か」「商品・サービスは本当にその価格で売れるか」ということを地域企業の方から直接指導してもらえるので、本当にためになりましたし、将来経営の仕事に関わりたい人にはとても価値のある授業だと感じました。
— ゼミについても伺います。ゼミには所属されていますか。
3年次から「管理会計ゼミ」に所属しており、先生は会計学の商哲先生です。2022年に弘前大学に赴任された先生で、僕ら4年生がゼミ1期生のような感じです。
ゼミでは、先生がおすすめするテキストをみんなで勉強し、発表して、先生からフィードバックをもらう、という講義が中心です。分からないことがあればみんなで話合ったり考えたりしながら進めていきます。
また、商哲先生の専門分野であるバランスト・スコアカード(BSC)という企業を成長させるための経営ツールを使って勉強したり、ビジネス戦略に成功している企業の事例について研究したりしています。
最初の頃は専門的な話が多く、もしかして少し気難しい先生なのかな…と思ってたんですけど、話してみるととても気さくで。優しくて、ユーモアな一面もある先生です。
将来はエンタメ業界が抱える「困りごと」を解決できる公認会計士に
— 将来の展望について教えてください。
生きがいややりがいの面でも「昔から好きだったエンタメに関わっていたい」という想いが強いので、将来はエンタメ業界のサポート役として、業界が抱える「困りごと」を解決できる公認会計士になりたいと思っています。
上手くいかないときは原点に立ち返る!
— 受験生へメッセージをお願いします。
公認会計士試験に挑戦したことで、「簡単には物事を投げ出さない力」と「自分で考える力」が身に付いたように思います。大学生は時間がたくさんあるので、僕のように資格の勉強をするでもいいし、好きなことに打ち込むでもいいので、とにかくいろんな経験を糧にして成長していってほしいです。
— 最後に、公認会計士を目指そうと思っている高校生や大学生にメッセージをお願いします。
公認会計士試験は難しいので、試験に落ちたり、なかなかいい成績が出ない期間があったりするんですけど、その時は「なんで公認会計士を目指したか」という原点に立ち返って、諦めずに続けていってほしいです。僕の記事を読んで、弘前大学から公認会計士を目指す学生が出てきてくれたら嬉しいですし、公認会計士に関わらず「自分の好きなことに関われる仕事がしたい」という部分で誰かの後押しが出来ればと思います。