弘前大学の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第37回はSNSによる地方創生を目指し、『そらたび』のアカウントで青森の魅力を全国に発信している医学部医学科4年のTさんとSさん(仮名)です。大学進学を機に茨城県から青森に移り住んだTさんと、青森県出身のSさん。「SNS×Z世代の力で、もっと青森県を盛り上げる」をテーマに活動しているお二人に、弘前大学に入学した理由や『そらたび』のアカウントを始めたきっかけ、医学科の授業内容や今後の展望などについて伺いました。

そらたび:Tさん
学年:医学部医学科4年
出身:茨城県ひたちなか市
所属サークル:医学部テニスサークルKIDS
特技:マジック

そらたび:Sさん
学年:医学部医学科4年
出身:青森県野辺地町
所属サークル:なし
特技:ダンス
自らの手で患者さんを助けることのできる医師を目指して
— 弘前大学医学部医学科の志望理由を教えてください。
Tさん:中学生の頃から「人の命を守る」という医師の仕事に漠然と憧れを抱いていました。
僕は筑波大学大学院から弘前大学に学士編入しているのですが、前の大学で就職活動をしている時、本当に自分がやりたいことは何なのか真剣に考え直した結果、最終的に「医師」という選択にたどり着いたんです。特に、外科医のように自分の技術を磨き、患者さんを助けることのできる医師に憧れ、その道を志すようになりました。
弘前大学を選んだ理由は、医学科の学士編入学*の募集人数が他大学と比較しても多いことと、そこで同じような背景を持った優秀な人たちと出会えるのでは、と感じたからです。そういう方々と切磋琢磨できる環境は、医師を目指す上で自分を磨くことのできる場所だと確信し、弘前大学を志望しました。
*学士編入学…弘前大学医学部医学科においては、大学を卒業した者などが、2年次に編入学する制度
Sさん:医師になりたいと思った最初のきっかけは、中学生の頃の職場体験でした。
地元である青森県野辺地町の公立病院を訪れたときに、患者さんとの距離が近い地域密着型の医療がとても素敵だと感じたんです。その体験を通じて、医療職への関心が大きくなりました。
ただ、地元で過ごしていく中で、公立病院の診療科が縮小されたり、クリニックの先生方が高齢化で引退されたりするのを目の当たりにし、「患者さんと距離が近い医療」が徐々に失われていくことに寂しさを覚えました。そこから、地元の医療に自分も貢献したいという想いが芽生え、自らの手で患者さんを助けることのできる医師になりたいと思うようになりました。
私が弘前大学を選んだ理由は、地域枠があり、青森県での活躍を希望する方を対象とした選抜方法があったこと、そして、青森県の医療を6年間間近で学べる点に魅力を感じたからです。また、私自身青森が大好きで、将来は地元で働きたいという強い想いを持っていたことも大きな理由のひとつです。

青森の魅力を全国に伝えたい!「SNS」×「地域創生」の可能性
— 『そらたび』について伺います。SNSで青森の魅力を全国に発信しようと思ったきっかけについて教えてください。
Tさん:僕、地元が茨城県なんですけど、地元の友達に「青森ってどんなイメージ?」と聞くと、大体返ってくる答えは「雪が多い」「遊ぶところが少ない」といったものでした。正直、僕自身も青森に来る前は「これから先、何年もここで過ごすのか…」とネガティブな印象を抱いていました。
ところが青森で生活を始めてみると、バイト先で出会った方々の温かさや、Sさんとの出会いを通して、この地域の良さがどんどん分かってきて。自然が綺麗だし、ご飯も美味しいし、四季が楽しめるお祭りやイベントがたくさんある青森が好きになっていきました。最初は、青森の魅力を地元の友達に伝えたいという気持ちから始まりました。でも次第に、もっと多くの人に知ってもらいたいと思うようになり、SNSを通じて青森の魅力を発信していこうと決めました。

— 『そらたび』のアカウントを始めようと思った時期はいつ頃ですか。
Tさん:2024年6月頃からSさんと協力して発信を始めようと決意し、まずはSNSの発信方法を学ぶことからスタートしました。具体的には、以前からファンだったローカルインフルエンサーの方を訪ね、Instagramのアルゴリズムの仕組みや撮影方法を直接教えていただきました。
その後、撮影スキルを向上させるために何本も動画を撮影し、「何が良かったのか」「どこを改善すべきか」をSさんと話し合い、試行錯誤を繰り返してきました。本格的なアカウント運営は7月から始めたのですが、あらかじめ10本ほどの動画を撮影・編集し、準備を整えていました。
2024年7月に初投稿し、1か月でフォロワー数が3,000人まで増えたのですが、その後、原因不明のアカウント障害が発生してしまい、8月中旬~10月の上旬の約2か月間は更新が全くできない状況になったんです。その後、10月に新しいアカウントを立ち上げ、『新・そらたび』として再スタートを切りました。2025年1月20日時点で、Instagramは約22,000人の方が、Tik Tokでは約7,200人の方が『そらたび』をフォローしてくれています。
— 動画の撮影や編集はどのように行っていますか。
Tさん:撮影は全てスマートフォンで行っていて、編集には「CapCut(キャップカット)」という無料の動画編集アプリを使っています。動画の撮影時間は大体1~2時間程度で、お店でメニューを頼む際にSNSへの掲載の許可をとり、撮影しています。現在投稿している内容は県内の飲食店が中心ですが、宿泊施設や体験施設なども紹介しています。
編集作業は基本的にパソコンで行っていて、編集時間は1つの投稿につき5~6時間ほどです。編集作業は共有クラウドを使ってSさんと2人で分担して進めています。


— アカウントを運営していて楽しいこと、やりがいを教えてください。
Tさん:青森の魅力を発信すること自体がシンプルに楽しいですし、撮影という目的ではありますが、美味しいものをたくさん食べられますし。それに、青森県内を巡りながら魅力的なお店を発見できるのも嬉しいですね。
やりがいは何といっても、フォロワーさんからいただく言葉です。「ここ行ってみました!」とか「そらたびさんのおかげで素敵なお店を知れました!」といったコメントをいただくと、本当にこのアカウントをやってよかったなと思いますし、そうした声が活動の原動力になっています。
今後の目標としては、地元のメディアや広報と積極的に関わって僕たちの活動を知ってもらい、さらに青森を盛り上げていきたいと思っています。
Sさん:最近、お店の方や初対面の方に「ファンです」とか、「いつも見てます」「フォローしてます」と声をかけてもらえることが増えてきて、それが本当に嬉しくて。もっと頑張ろう!と思います。
『そらたび』を通じて感じるのは、青森県の方々が地元をとても大切にしている、ということです。これからもフォロワーの皆さんと一緒に、青森を盛り上げていけるような発信を続けていきたいと思っています。

実際の医療現場で活かせる医学科での学び
— 医学科の授業内容や、特に印象に残っている学びについて教えてください。
Tさん:現在は5年次から始まる臨床実習前に、臨床スキルを身に付けるための練習を行っています。
練習では、患者役と医師役に分かれ、患者役の人が模擬患者として症例に沿った役を演じ、医師役の学生が実際の診察と同じ流れで医療面接を行います。このような模擬診察を通じて、現場で必要な診断力や患者さんとのコミュニケーション能力を鍛えています。
授業以外では、先生に志願して実際の手術を見学したり、各診療科での説明会に参加して、トレーニング用の医療器具を使いながら手術手技を体験させてもらっています。医学科の先生方は、積極的にお願いすると貴重な機会を与えてくださる方が多いと感じています。
Sさん:1年生の夏に、初めて医学部附属病院で実習を行った2日間がとても印象に残っています。実際に患者さんと直接関わるなかで、「将来自分もこの場所で医師として働くんだ」と強く実感できた貴重な経験でした。
また、医学科で開催された医局説明会も印象に残っています。私は呼吸器内科学講座の医局説明会に参加し、先生方の発表を聞いたり、医療器具を使い内視鏡の手技を体験しました。先生と直接会話をしながら臨床について学べるのは、とても貴重でありがたい時間でした。
気合で両立!医学科の勉強と『そらたび』のアカウント運営
— 医学科の勉強とアカウントの運営はどのように両立していますか。
Tさん:もう、気合です(笑)。
医学の勉強は膨大で、その日だけで全てを終わらせることはできません。個人的には、勉強の“貯金”が大事だなと感じていて。アカウントを始める前にしっかり勉強していたことが、今活きていると感じます。
アカウントの運営については、テスト期間中には効率よく動画編集を分担しながら進め、勉強時間もしっかり確保してやっています。
Sさん:私も勉強とアカウント運営に多くの時間を使っています。最近は夕方まで実習があることが多く、帰宅後に勉強や編集作業を行っています。
勉強方法については、Tさんに教えてもらうだけでなく、自分から説明してアウトプットすることも大切にしています。2人で話しながら学ぶことで、記憶に定着しやすくなると感じています。
『そらたび』の撮影は基本的に土日に集中して行っていて、多い時では4件のお店をはしごしたことも(笑)。弘前市内のお店であれば、空きコマを使って撮影に行くこともあります。現在は、単にお店の情報だけでなく、天気やイベントなども含めて毎日発信するようにしています。
勉強も『そらたび』も全力で取り組んでいて、どちらも気合で頑張っています。

「医療」×「SNS」で地域医療に貢献したい
— 今後の展望を教えてください。
Tさん:元々は外科医を目指していたのですが、この活動を始めたことによって「医療」と「SNS」をつなげる仕事をしたい、という気持ちが芽生えています。
医療の現場でも情報発信はますます重要になっており、「医療」×「SNS」で多くの人々に医療情報を届ける必要があると感じています。例えば、オンライン診療の普及にもSNSの活用は欠かせませんし、青森のように医師不足が深刻な地域では、SNSを活用した求人活動はその解決策になるかもしれません。SNSを通じて、医師を必要とする地域により多くの情報を届けることで、地域医療に貢献できるのではないかと考えています。
このまま順当に「医師」として働くか、「医療」×「SNS」を担っていくような少し変わった医師になるか…まだ迷いはありますが、SNSの知識や発信力を将来的に医療にも活用していければ、と思っています。
Sさん:医師としてどの分野に進みたい、というのは決まっていませんが、一つの選択肢としてTさんと一緒に開業することも考えています。Tさんは細かい作業が得意なので、形成外科などの外科的な医療で、私は皮膚科に興味があるので、内科的な要素を加えた形で、1つのクリニックを開設したい、という気持ちもあります。
私は初期研修でしばらく青森にいる予定なので、まずはそこでしっかりと医療の基礎を身に付け、経験を積んでいきたいと考えています。
大学は素晴らしい人に出会うチャンスがある!
— 最後に、受験生へメッセージをお願いします。
Tさん:「夢を持って頑張ってほしいな」と思います。
私自身、ずっと医者になりたいという夢がありましたが、最初はその夢をかなえることができませんでした。しかし、筑波大学から大学院に進学し、その後諦めずに弘前大学に来たことで最終的には夢に近づくことができました。諦めずに努力し続ければ、どんな夢も叶うと信じています。だからこそ若い人たちにもそんな気持ちを持ってほしいですし、私たちの活動を見て「自分も頑張ろう」と思ってくれる方がいればとても嬉しいです。
弘前大学は、やる気を持ってアクションを起こせば、夢をかなえるチャンスがある場所だと感じています。受験生の皆さんは時間を有効に使い、目標に向かって全力で頑張ってほしいと思います。
Sさん:私自身、中学、高校と「絶対に叶えたい夢」というものがはっきりとしないまま大学に進学しました。
でも、弘前大学に来てみて気づいたのは、静かに過ごしていても、Tさんのような素晴らしい人と出会うチャンスがたくさんあるということです。
弘前大学に来ていろんな人と関わることで、人生が変わるような経験ができるかもしれません。思ってもみなかったような生活が送れる可能性もあるので、ワクワクしながら、いろんな人と関わってほしいと思います。
