弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第28回は、宮城県仙台市で開催された第17回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG東北)にて審査員特別賞である日刊工業新聞社賞を受賞した佐々木 慎一朗(ささき しんいちろう)さんです。CVG東北への出場経緯や「物流」に焦点を当てたビジネスプラン考案の背景、課外活動や学生生活などについて伺いました。

医師への道だけではなく、人生の幅を広げるために

—弘前大学医学部医学科を目指した理由を教えてください。

中学のときから医学科を目指していました。医師になりたいという理由と、医師免許の取得で人生の幅を広げることができるのではと考えました。弘前大学を選んだのは、弘前高校出身なので進学した先輩が多くて情報が集めやすかったというのもひとつの理由です。姉が進学で県外に行ってしまったので、僕が両親の近くにいたいという思いもありました。

弘前大学医学部医学科
インタビュー中の佐々木さん

第17回キャンパスベンチャーグランプリ(以下 CVG東北)にて 日刊工業新聞社賞を受賞!

—CVG東北への出場経緯を教えてください。

CVG東北は学生起業家の登竜門として知られる、学生ビジネスプランコンテストです。
僕は「なぽグループ」という団体を立ち上げて、“周りを巻き込んでWOWを届ける”活動をしています。これまで、映像制作やアイドルのコピーダンスサークルのプロデュースなど、いろいろ実施してきました。僕は人の反応には「YES(肯定など)」「NO(否定など)」と「WOW!」があると思っていて、WOW!=感動体験を届けたいという信条のもと、活動内容を考えています。
そのなかで、もう一人のメンバーで副代表の下倉佑太くんと、社会問題の解決に取り組んでみたいという話をしていて。まずアイデアを考えて、ちょうどいい時期に実施されているビジネスコンテストを探し、CVG東北への応募を決めました。

—CVG東北に応募したビジネスプランについて教えてください。

自分たちの普段感じる身近な感覚と社会問題解決が結びつくところで考えました。そこでイメージしたのが、下倉くんが北海道に行くたびに僕のお気に入りのハンバーガーを買ってきてくれたことです。「こんな風に誰かが旅行帰りのお土産気分でハンバーガーを買ってきてくれたら…」と思いました。

受賞プラン「EviGO(エヴィゴ)- 持続可能な中継ぎ輸送の可能性 -」は、そんな自己経験と、コロナ禍により社会の消費行動が大きく変化した『物流』に焦点を当てて考案しました。誰にでもある通勤・通学・旅行の移動が物流の輸送媒体となり、誰でも=「Every」、輸送できる=「Go」システムです。


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受賞プラン「EviGO(エヴィゴ)」
弘前大学医学部医学科
賞状を持つ佐々木さん



昨今コロナ禍の影響により、家での巣ごもり消費が増加しました。軽くて小さいものもネットショッピング等で家にいながら購入する人が増え、いわゆる小口輸送が増加し、輸送業者の負担増、併せて排出ガス増加による環境破壊の加速にもつながっている状況です。

「EviGO」ではその小口輸送を、一般旅客が運送者として代替します。いつもの移動のついでに注文の商品を購入し、注文者が指定する駅のコインロッカーなどに商品を届けます。管理者は注文者の商品選択に応じて、地理的・時間的に都合のよい運送者のマッチングを行い、決済・報酬の支払いを行います。
実際の実施にあたっては法律上の問題など、解決しなければならない課題があるのですが、現在の物流の課題を解決し、持続可能な物流のカタチを提案する内容になっています。



—最終プレゼンはどうでしたか?

書類審査を経て、最終審査の5チームに選ばれました。2021年12月に宮城県仙台市で最終審査会があったのですが、最終プレゼン当日が休むことが出来ない実習の日で、医学科の後輩で当時1年の 佐藤萌香さんに代理を頼みました。佐藤さんが練習よりも本番が1番良く出来たと言っていたので、それで僕たちは満足でした。
ただ、全国大会に進めなかったことは悔しいのでまたチャレンジするつもりです。もっとたくさんのアイデアを練って、また、今回実施まで至っていないビジネスプランだったので、企画をしっかり走らせてから出したいです。次回は、「EviGO」の延長というわけではなく、まったく新しいテーマでチャレンジしたいという気持ちがあります。


—今回一緒に企画を考えた下倉佑太さんについてお伺いします。

大学で知り合った同学年の友人です。今回のスライド作成なんかはすべて彼に任せました。いつも僕の考え方をすごく理解してくれていて、「こんな感じでこういうふうにやりたいんだけどどう思う?」と会話をしながら企画をブラッシュアップしています。彼は基本的に頼んだことは何でもできるし、自分が途中で止まりそうになったときに動かしてくれる存在でもあるので、すごく尊敬しているし、僕にとっては無くてはならない存在です。

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下倉佑太さん(左)と佐々木さん(右)

勉強だけでなく、自己表現や人と触れ合う時間も大事にしたい

—部活などの課外活動について教えてください。

部活は医学部自転車競技部、医学部水泳部、医学部写真部に所属しています。自転車競技部では部長を務めていて、チャレンジヒルクライム岩木山などの県内の大会や、北海道、北東北の大会にも出場しています。旅行の一環でも自転車を活用していて、中部地方を一周したり、兵庫から大阪、京都、石川、富山、長野、岐阜、名古屋まで自転車で走ったこともあります。
水泳部は1年を通して活動があって、朝練や夜練に任意で参加しています。写真部は、年2回写真展が行われるので、それに向けて作品を作っています。


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チャレンジヒルクライム岩木山での1枚
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写真展に出展した作品



その他に「なぽグループ」と「学生団体CoCo-Cam(ココキャン)」に所属しており、どちらも代表を務めています。
「なぽグループ」は、映像芸術グループPros.やコピーダンスサークル桜坂の運営など、幅広く活動しています。Pros.では、自分たちの考えを映像にする、ということをやっています。昨年学祭で三味線とダンスを掛け合わせたショーを実施していて、その一環として「ハレトケ」という映像作品を制作しました。「ハレトケ」はハレ=祭りや儀式などの“非日常”、ケ=“日常”を意味する日本に昔からある言葉ですが、コロナ禍によって祭りが失われて、リモート、“離れる”ことが日常になってしまった今、どうしたら祭りや文化が現代人に馴染んでいけるのかということを考えて構想しました。祭りの象徴としての組みねぷたの顔部分を、東京のスクランブル交差点や街角などの現代人の営みを想起させるような場所に置いて、写真や映像作品にしています。

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国際フォーラム(東京都)で撮影。組ねぷたは佐々木さんが幼稚園の頃に制作したものを修復し、使用している

学生団体CoCo-Camでは、「地域と医療の架け橋になる」をコンセプトに、地域の方々がカフェに行くような気軽さで、健康・医療について話をするようになってほしいという思いから、医学生5人で「医Café SUP?」を立ち上げました。令和2年から市内の親方町で、コーヒーや紅茶、モクテル、ホットサンドなどを提供するカフェを営業しています。メニューを楽しんでいただきながら、健康相談や、高校生の進路相談に乗ったりしています。医カフェは、イベントの企画など、考えたことを実践に移せる場としても活用しています。

—多岐にわたる活動の中で心掛けていることはありますか?

医学部の勉強は、まわりのみんなが優秀で要領がいいので、みんなに遅れをとらないようにということを心掛けています。勉強時間はみんなと同じ分しっかり確保したうえで、自由な時間を自分の発想の時間として使うようにしています。あとは学友に限らず、人と触れ合う時間は大事にしていますね。
24時間フルで活動するときもあれば、何もしない日も作るようには意識しています。メリハリは大事ですね。やることが多くて寝れない日もたまにあるんですが、若さで乗り切っています(笑)

ちなみにCVG東北のプランは3日間で作成しました。僕らが何かするときに一番優先しているのは“スピード”です。ニーズなどの必要な情報はだいたい1日で集中的に調べて、2日でプレゼン資料を作り込みました。情報収集の際はいつもまずネットであらかた調べるんですが、基本的に一次情報を辿ることを意識しています。不足のあるところは本で調べて、それでもわからないことは最終的に先生をはじめどなたかに考え方をお伺いしています。

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少し先を見る、地域課題を解決するパイオニアに

—今後の展望を教えてください。

いずれは、青森県の医療について考察検証できる研究をしたいと思っています。青森県は少子高齢化の進展や過疎化などの課題先進県です。また、山・川・海の自然が豊かで、かつ、ある程度の都市レベルもあり、いろんな条件が青森県の中に揃っていて、研究に適している地域だと思います。
ここで課題を早い段階で見つけて根治するということを、社会レベルで実践できればと思っています。

僕は常に『少し先を見る』ということをしたくて。波がきた!と思ってやり始めても、実行できるときにはその波が一番下になっていて、チャンスを逃すことも多いなと。昨年の夏に厚生労働省のインターンに参加したのも、国が“今”求めていることがどんなことなのかを知りたかったからです。
県内にいながらもそういった感覚を大事に、常に先を見ながら活動していきたいと思っています。

今後の展望としては、広くいろいろなことの専門家でいたいと思っています。あらゆる分野の常識を知っていきたいですね。そして研究者に限らないアプローチで、ときには研究者、ときには実行者、ときにはアイデアマンのような、いろんな立場で動いていきたいと思っています。

気になる分野は徹底的に深堀りを!

—最後に受験生へメッセージをお願いします。

弘前大学を目指す人には、大学のホームページなどで情報をたくさん集めて、ビビッときたところを徹底的に深堀りしてみてほしいです。弘前大学は実行力があればなんでもできる大学だと感じています。自分がこの大学に入ったらこんなことをしたいということを少し考えるだけで、大きくアドバンテージが取れます。
先ほども「青森県は課題先進県」と言いましたが、問題がたくさんというところも取り組みがいがある部分です。中・高・大学生のうちからぜひチャレンジするべきだと思います。

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Profile

医学部医学科3年
佐々木慎一朗さん

第17回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG東北)日刊工業新聞社賞受賞 。
青森県弘前市出身。青森県立弘前高等学校卒業後、弘前大学医学部医学科に入学。 部活動は医学部自転車競技部(部長)、医学部水泳部、医学部写真部に所属。 その他、なぽグループ、学生団体CoCo-Camの代表を務める。なぽグループではCVG参加や映像制作、コピーダンスサークルのプロデュースなど幅広く活動。学生団体CoCo-Camでは、「地域と医療の架け橋になる」をコンセプトに、医カフェ運営をはじめ、青森、弘前を拠点として社会課題解決に取り組んでいる。