弘前大学教育学部で心理関係の授業を担当し、大学院教育学研究科で臨床心理士の養成を行っていた松田侑子准教授。
2020年4月、弘前大学医学部に新設される「心理支援科学科」では、8人の教員のうちの1人として配属され、職場における問題・キャリア形成に対する心理支援の教育などに携わる予定です。
先生の研究テーマや、新学科への思い、プライベートの話題についても伺いました。

大学時代、ニートやフリーターなどの社会問題に関心を持ち

― 心理学に興味を持ったきっかけと、学生時代について教えてください。

出身は愛知県です。「名古屋出身です」っていうと名古屋市民に怒られるんで(笑)。名古屋の“近く”です。東京の大学では教育学部に所属、その後、筑波大学大学院で学びました。
心理学に興味を持ったきっかけは、高校時代の友人が「将来、臨床心理士になりたい」と話していたこと。当時の私は、臨床心理士という仕事があることさえ知らなかったのですが、それを機になんとなく心理学に興味を持ち始めました。

博士論文は、就職活動中の学生を対象にした研究です。大学院で修士論文を書こうとしていたころは、ニートやフリーターが社会問題になっていた時期でした。幸い私は大学院に進学したので就活で思い悩むことはなかったんですが、まわりの友人はすごく苦労していて、身近でもメンタル的に不調になる友人がいたんです。それで、心理やキャリア形成に興味を持つようになったんです。

大学院在学中に、研究室の先生に紹介され群馬県の短大に就職しました。臨床心理士の資格を持っている女性が条件とのことで、研究室の中で該当者は私一人だけ。それで、2年間の任期付きで採用になり、この間に博士論文を完成させました。
その後、岐阜の私立大学で、心理の学生を対象に発達心理学、教育心理学を担当し、2013年に弘前大学に来ました。

弘前大学 松田侑子

心理学的知識を使った子どもへの関わり方の共同研究

― 弘前大学では、何を教えていますか?研究テーマについても教えてください。

2019年前期までは教育学部に所属し、「心理学基礎実習」「心理学課題研究」、教職科目の「カウンセリング基礎論」、教養教育科目の「キャリア形成の発展―社会と私―」を担当していました。現在は、医学部保健学科看護学専攻の学生を対象にした「カウンセリング論」を担当しています。

外部の先生との共同研究としては、保育者を対象にした研究を行っています。なかでも今、私が特に興味を持っているのは、保育学生です。保育を学ぶ学生に、心理学的知識を使った子どもとの関わり方や、子どもの行動の理解の仕方などを教えて、それを実際に実習で応用してもらっています。
学校で学んだ知識と、現場で起きている現象をどうつなげるか。そのつなぎになるのが今、私が教えていることかなと思っています。実習を終えた学生に面接調査を行うと、子どもとの関わり方の選択肢が増えたと感じている学生も多いようです。たとえば、子どもをほめること一つにしても、その効果を最大限引き出すための手法やアプローチがあります。もちろん、子どもとの関わり方に正解はありませんし、今後、社会に出て経験を重ねながらアレンジする力もついていくと思いますが、子どもの行動を考える上で1つの軸を提供できるのが、この研究のやりがいです。

人との関わり方、そして、人と関わる仕事には正解がありません。保育者の方は、専門家としてのアイデンティティを確立していく過程で、思い悩んで現場を離れていく人もいます。自分が子どもとうまく関われたことで喜びを感じたり、試行錯誤しながらも子どもと向き合っていく術を持っていることはとても大事なことです。私の教えたスキルが、保育者としてのキャリア形成に役立てばと思っています。

弘前大学 松田侑子

― 学外の地域社会活動もされているそうですね?

「臨床心理士」と、平成30年度から新たに始まった国家資格「公認心理師」の資格を持っています。これらの資格を生かした地域社会活動として、青森県内の自治体の職員を対象に、週1回メンタルヘルス相談を行っています。

相談を通じて感じるのは、メンタルの不調に陥ってしまう方は、自分の心を置き去りにしたまま、頑張りすぎてしまう傾向があること。たとえば、疲れた時はちょっと休もうとか、がんばったから自分にご褒美をあげようとか、ふとした時に自分の心の状態に意識を向け、調整することはセルフケアにおいて大切です。個々の状況に合わせて、専門家としてアドバイスしています。

心理支援職にとって大切なのは、今、目の前にいる人を大事にできること

― 弘前大学医学部に新設される「心理支援科学科」の教員として配属が決まったそうですね?

2018年3月まで弘前大学大学院教育学研究科で臨床心理士の養成を行っていましたが、現在、県内には心理支援職の人材を養成する機関がない状態です。2020年4月、弘前大学医学部に新設される「心理支援科学科」は、東北・北海道の国立大学では初開設となる「公認心理師」養成をめざす学科です。私は、この学科で指導にあたる8人の教員のうちの1人として配属される予定です。

急激な社会構造の変化、複雑化に伴い、子どもから高齢者までさまざまな年代で心の支援を必要としている人たちが増えています。弘前大学には附属病院もあり、地域の病院や関係機関とも強いネットワークがあるため、いろいろな心理支援の在り方や多職種による連携を学ぶ上で非常に恵まれた環境です。公認心理師の活躍の場は、保健医療、教育、福祉、司法・矯正、産業・労働など幅広い領域ですが、実習ではすべての領域をそろえているので、学生もいろんな現場を体験することができるのが強みです。

理系・文系は、こだわらなくてもいいと思います。実際、私も数学はそんなに得意ではなかったですし(笑)、特に理系に長けている人でなくても大丈夫です。知識やスキルの習得ももちろん大切ですが、一番大事なのは、心理支援職に就く者として、目の前にいる人を大事にできる人、人に対する向き合い方について深く考えられる人。そういう人材を育てたいと思っています。

弘前大学 松田侑子

総合大学の医学部に位置づけられた学科。自分自身も成長できる!

― 最後に、メッセージをお願いします。

弘前大学は総合大学なので、いろんなことに興味がある人に出会えるし、ふれあえる機会があります。出会いそのものが刺激になるし、そういう人達とつながることで新たな発見があり、自分の人生にとって意味のあるものになると思います。
また、心理支援職は人の心に向き合う仕事なので、人に興味を持ち、コミュニケーションに意識を向けることで自分自身も成長できると思います。ぜひ一緒に学んでみませんか。

Questionもっと知りたい!松田センセイのこと!

― 休日の過ごし方は?

土日のいずれかはヨガをやっています。教育学部の同僚の先生が紹介してくれて行ってみたら、これが楽しくって! 頭をからっぽにして、何も考えなくてもいい時間はとても大事ですね。先ほどお話ししたセルフケアと少し似ているんですが、ヨガは自分の今の状態に目を向けることを大事にするんですよね。結構、疲れているなと実感したり、頑張りすぎている自分に気づいたり。自分の体を置いてけぼりにしがちな人には向いている気がします。

― 趣味は?

スノーボードです。大学院時代に同期の友人と一緒に始めました。ボードを買ったとたん、弘前に行くことになってラッキー(笑)!
教育学部の先生や他学部の先生と一緒に、鰺ヶ沢や八甲田山に滑りに行っています。教育学部から医学部に移ることになったので、昨シーズン、ゼミ生たちと岩木山の方にお別れ会のスノボ合宿に行きました。
教職員のスノボサークルを作りたいなぁ(笑)スキーもOK! 一緒に滑りませんか?

弘前大学 松田侑子 八甲田にて
八甲田にて教育学部の先生と
弘前大学 松田侑子 安比高原にて
他学部の先生や学外の友人と安比高原に行った時の写真

ドライブも大好きです。最近、車を買い替えたので、コーナリングもスムーズだし、加速も気持ちいいです。それまでは、軽自動車だったので、いっきに進化しちゃいました。同僚の先生が「相棒のような存在だね!」と、言ってくれまして、今シーズンはスノボを乗っけてあちこち行ってみたいです。

思い出の写真館

弘前大学 松田侑子 ゼミの学生と大学祭に出店

ゼミの学生たちと出店した学祭でのワンシーン。学生がオーブンをフル稼働させて、スコーンを焼いたり、コーヒーを販売したり。これがバカ売れして(笑)。私は、売り子をがんばりました!楽しかった~!!

弘前大学 松田侑子 ゼミ合宿

ゼミ合宿で岩木山にあるアソベの森のコテージに宿泊したときの様子。夕飯はみんなで作った餃子と手巻き寿司。

※ 先生に対する個人的な悩み相談や質問は受け付けておりませんので、ご了承ください。

Profile

医学部 心理支援科学科 准教授
松田 侑子(まつだ ゆうこ)

愛知県生まれ 。
筑波大学大学院を卒業、群馬県の短大や岐阜の私立大学に務めた後、2013年に弘前大学教育学部に赴任。外部との共同研究や学外での地域社会活動も行っている。
2020年4月弘前大学医学部に新設される、心理支援科学科の教員として配属される予定(2019年12月現在)。