卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第12回に登場するのはデトモルト音楽大学(ドイツの国立音楽大学)修士課程ソリストコースに在籍し、Leborts Quartetメンバーでもある今井 鈴海(いまい すずみ)さんです。
ドイツ留学までの経緯や、大学時代の印象に残っている出来事、今後の展望などを伺いました。

ドイツの音楽大学でトロンボーンを学ぶ!新しい環境で成長できる喜び

—現在通われている大学、所属コース・専攻等の概要を教えてください。

デトモルト音楽大学は、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州に4つある国立音楽大学のうちのひとつです。デトモルトは小さな街ですが自然豊かな美しい街で、ヨハネス・ブラームスもかつてこの街の宮廷に音楽家として勤務していたことがあるといいます。

弘前大学教育学部卒業生
デトモルトの風景
弘前大学教育学部卒業生
自然豊かで美しい街並みが続く

大学のトロンボーンクラスには、私を含め約15名の学生が在籍していて、教授との1対1でのレッスンの他に、ウォームアップ、アンサンブルやオーケストラの授業などが日々行われています。大学では年間を通じてコンサートがあり、演奏できる機会が学生に多く与えられています。曲の年代や編成もさまざまな、多くの音楽に触れることができています。また、学生同士で一緒にウォームアップしたりアンサンブルの演奏をしたりすることは今まであまり経験がなかったので、私にとっては新鮮に感じます。
毎回のレッスンにも、日常のなかにも新しい発見があり、それを自分の練習に取り入れて、また考えて…毎日がその繰り返しで、普段は自分自身であまり変化を感じなかったりしますが、「前できなかったことができるようになってきたかも!」と思えたときはとても嬉しく、やりがいを感じます。

デトモルト音楽大学のホールにて金管5重奏の演奏

一度はあきらめかけた音楽の道に再挑戦!

—卒業後、音楽以外の仕事に進み、その後再度音楽の道を志した経緯・きっかけを教えてください。

在学中から、卒業後も音楽の道を進みたいと考えていたのですが、学部を卒業する頃に体調を崩し、メニエール病と診断を受けました。耳の調子も悪くなり、「音楽の道を続けるのはだめかもしれない、就職しよう」と思い、音楽とは別の仕事に就きました。働きながらも地域のオーケストラやトロンボーン・アンサンブル団体で演奏活動は続けていましたが、次第に症状が良くなり、そうするとやはりもう一度音楽の勉強を続けたい、と思うようになりました。

幸いなことに、学部生時代の担当教員だった和田美亀雄先生が教授としてまだ在籍していらっしゃったので、研究生として受け入れていただくことができました。それから留学するまでの間、昼間は働き、そのあとは大学に行ってレッスンを受け、夜まで練習する日々を過ごしました。仕事と大学の両立は確かに大変でしたが、仕事から得たものが音楽や、今の自分に活きていると感じることがあります。また、仕事をしていたからこそ、人前で演奏できる機会をいただけたこともありました。一度別の仕事に就いたことは遠回りだったのではと思われるかもしれませんが、私としては、そのおかげで学べたことがたくさんありました。

青森トロンボーンアンサンブルの演奏会にて、師事していた和田美亀雄氏(写真左)、築舘恒氏(写真右)とともに演奏

語学学校には通わず、独自の勉強法でドイツ語をマスター

—ドイツ留学にあたり、入学試験に向けてどのように準備されましたか?

入学試験はコロナの影響により動画審査となり、和田先生にご指導いただきながら、練習していました。自分の演奏になかなか納得がいかず、動画送付の締切日ぎりぎりまで何度も撮り直しました。
また、留学したいと思っていた大学の教授と面識がなかったため、まず挨拶と、あなたのクラスで勉強したいということをメールで送ったのですが、その頃はドイツ語が全くできなかったため、音楽学ゼミの朝山奈津子先生に代筆していただきました。私は音楽学講座のゼミ生ではなかったにも関わらず、朝山先生にはその他にも留学や語学勉強についての相談にのっていただき、協力してくださったことに感謝しています。

ドイツ語の勉強は、ドイツ語教室には通わずにいろいろな方法を試してみました。自分で買ったテキストの問題を何周も解いたり、オンライン上で配布されている無料教材を活用したり、タンデムパートナー(語学交流パートナー)やドイツ語ネイティブの人と会話練習をして自然な言い回しを学んだり…。大学で指定されているレベルのドイツ語試験には合格できましたが、さらに次のレベルに向けてドイツ語の勉強を続けています。

弘前大学教育学部卒業生
デトモルト音楽大学のトロンボーンクラス

トロンボーンを通じて恩返しがしたい

—卒業後に向けて、将来の展望などを教えてください。

将来はトロンボーン奏者として演奏活動をしていきたいと考えていて、そのために自分自身の音楽を着実に磨いていきたいと思っています。
日本へ一時帰省ができたら、わたしがドイツで音楽を勉強できるように協力してくれている両親や、音楽やそれ以外にもたくさんのことを教えてくださった和田先生、お世話になった方々など、多くの人に演奏を聴いていただける機会をつくる、というのも目標のひとつです。
また、音楽が好きな学生に、わたしがドイツで学んだことを伝えることができたら、地域にも貢献できるようでうれしく思います。

弘前大学教育学部卒業生
金管楽器クラスの演奏会にて。ソロ演奏している様子

サークルやゼミでの出会いが、音楽家への道を決めた

―学生時代についても伺います。
 大学生活で印象に残っていることはありますか?

学部生時代のわたしは決して成績優秀でも、まじめでもない学生でした。和田美亀雄先生のもとでトロンボーンの勉強がしたい!という動機で弘前大学を受験して、入学してからも本当にトロンボーンしかやってこなかったような学生でした。サークルは弘前大学フィルハーモニー管弦楽団と弘前スライド・ミュゼッグに在籍し、そのうち2年間、弘前スライド・ミュゼッグの代表を務めていました。全学部からトロンボーンを愛好する学生が集まり、小編成から大編成までさまざまなアンサンブルを経験することができました。毎年の定期演奏会や老人ホームなどからの依頼で一緒に演奏し、卒業した今でもドイツにいるわたしを気にかけてくれる先輩や後輩たちにも出会えました。そういった人や音楽との出会いがあったことをありがたく感じています。

また、器楽(管楽器)ゼミでは年1回、弘前大学創立50周年記念会館のみちのくホールで研究発表会があり、そのホールで演奏できることは学生にとって貴重な機会でした。それに向けた毎回のレッスンでは、時には的確なアドバイス、時には自分で考えてみるように、などといろいろな角度からご指導いただきました。音楽家としての進路についても親身に相談にのってくださり、留学以外にも様々な選択肢を示してくださいました。
和田先生からは、教授着任以前にプロオーケストラに所属していた時の豊富な経験談を聞けることもあり、和田先生のもとで学べたからこそ、現在のわたしがいると思っています。

弘前大学教育学部卒業生
弘前大学創立50周年記念会館にて、弘前スライド・ミュゼック定期演奏会での集合写真(弘前スライド・ミュゼックTwitter

自分で決めた道は、楽しみながら全力でチャレンジ!

—弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします。

もしも目の前に自分のやりたいことがあるのなら、ぜひチャレンジしてみてください。それがどんな結果になっても、挑戦したことは経験値として、未来の自分の一部になります。
そして、自分のやりたいことと関係ない、やりたいことじゃないと思っていたことでも、真摯に取り組んでいればそこから新しいアイディアが浮かぶこともあるし、もしかしたら自分にとって、とてつもないチャンスにつながるかもしれない。いつ何が人生の転機になるかわかりません。自分が進む方向を決めたら、全力で楽しみながら、たくさんのことを吸収していけたらいいですね!

弘前大学教育学部卒業生

Profile

デトモルト音楽大学修士課程ソリストコースに留学
今井 鈴海さん

弘前大学教育学部生涯教育課程卒 。
青森県弘前市出身。 青森県立弘前南高等学校卒業後、2013年弘前大学教育学部生涯教育課程芸術文化専攻(現在は募集停止)へ進学。 和田美亀雄教授の管楽器演奏法研究ゼミに所属。 和田美亀雄、築舘恒(弘前大学卒業生)、Otmar Strobel 各氏にトロンボーンを師事。 2017年11月に開催された日本トロンボーン協会第6回トロンボーンコンペティション独奏部門、一般の部において奨励賞受賞。 2017年に卒業後、再び研究生として和田教授に師事。 研究生在籍中、弘前スライド・ミュゼッグアンサンブルコーチとして指導にあたる。 現在、デトモルト音楽大学修士課程ソリストコースに在籍。Leborts Quartetメンバー。 2021年10月より、ボーフム交響楽団研修生。

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