弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第29回は、青森県の若者の投票率向上のため、青森県選挙管理委員会から『大学生サポーター』の任命を受け、代表として活動している唐井 瞭(からい りょう)さんです。大学生サポーターの活動内容ややりがい、学生生活などについて伺いました。
中学の時に訪れた大鰐町に魅力を感じて
—弘前大学教育学部を志望した理由を教えてください。
弘前大学を志望した理由は2つあります。僕は静岡県出身なのですが、地元とは違う気候や文化が感じられる地域に行ってみたいと思っていました。もう1つは、中学1年でアルペンスキーを始めたのですが、その年の冬に昔祖父が住んでいた大鰐町のスキー場に行く機会があったんです。その大鰐町で過ごした時間がすごく楽しくて。進学を考えたときに、他の大学も候補にはあったのですが、当時の記憶がずっと心に残っていて、大鰐町の近くにある、ということも決め手になりました。
教育学部の小学校コースを選んだ理由は、小学校6年生の時にお世話になった先生の影響です。当時、人間関係に悩んでいた時期があったんですが、その時の担任がすごく親身に相談にのってくれて。すごく救われました。そこから、小学校の先生っていいな、という意識が少しずつ芽生えてきて、教員を目指してみようと思うようになりました。
サブコースは理科教育を選択していて、指導教員は佐藤崇之先生です。ゼミでは、どんな情報通信技術を活用すれば授業がもっとよくなるか、ということを研究しています。佐藤先生は、授業などで僕が発表すると予想もしていないような角度から質問を投げかけてきて(笑)そのたびに、いろいろな角度から物事を考える必要があるんだ、ということに気づかされます。
前回の選挙で感じた投票率向上のむずかしさ
—若者の投票率向上を啓発する大学生サポーターの活動を始めた経緯を教えてください。
昨年の夏に、社会科教育の蒔田純先生の授業で「県の選挙管理委員会が衆議院議員総選挙(以下 衆院選)に向けて、若者の投票率を上げるために大学生サポーターを募集している」という話を聞きました。元々選挙や政治に少し関心があったことと、教育だけではなく他のことにもチャレンジしていきたいと思い始めていた頃だったので、ちょうどいい機会だと思い手を挙げました。
青森県の国政選挙の投票率は、北海道・東北の中でもかなり低い傾向にあり、特に若者の投票率が低い状況です。高校卒業と同時に進学や就職でそれまで住んでいた土地を離れる際、新しい土地に住民票を移していないことが、若者が投票に行かない要因のひとつだと僕は思っています。住民票を移していない場合、「不在者投票」もできるのですが、手続きが複雑であることや、不在者投票を知らない若者も多いのでは、と感じています。
昨年10月末に行われた衆院選では、若者の投票を促すため、投票方法の説明動画や高校生・大学生向けのポスターを制作し、啓発活動を行いました。選挙終了後の投票率を見てみると、令和元年7月の参院選と比べ投票率は約10%上昇したのですが、全国平均値も上がったため、都道府県別ランキングで青森県は42位という結果でした。動画再生回数も伸び悩み、活動の効果があまりみられなかったように思います。前回のリベンジも含めて、今年の参議院議員通常選挙(以下 参院選)でも引き続き活動をしています。
若者に「わかりやすく」選挙を伝える活動を
—大学生サポーターについて伺います。具体的にどういう活動をしていますか?
大学生サポーターは、青森県選挙管理委員会が任命した県内大学生10名で構成されています。「若者の投票率を上げるためにはどうすればいいか」をテーマに、大学生サポーター内で作戦会議しながら具体的な啓発活動を決めていきます。会議は5月初旬からスタートして、7月10日の投開票前まで4~5回行う予定です。
今年決まった活動内容は以下の4つです。
①大学でのプレゼン実施による啓発(青森県の投票率について、投票行動の呼びかけなど)
②テレビ出演(大学生サポーターの活動紹介や選挙周知を行う)
③投票を呼びかけるポスター制作(高校・大学・商業施設等に配布)
④高校3年生向けのチラシ制作(県内高等学校へ配布)
僕は代表として全体の活動方針を決めたほか、④のチラシ制作を企画・担当しています。
2015年に選挙権年齢が20才から18才に引き下げられ、今年18才になる高校3年生は今回の参院選が初めての選挙、という人もいます。高校生に配るチラシについては、初めて投票に行く人にも伝わるよう親しみやすいイラストで投票手順を説明したり、文言を短くシンプルにして分かりやすい内容になるよう工夫しました。参院選の投票方法は少し複雑で、比例区は政党名だけじゃなくて候補者名も書けるよとか、特定枠があるよ、とかいろいろあるのですが、情報が多いと混乱すると思い、投票の流れだけはしっかり理解できるような内容にしています。
—やりがいはどうですか?
大学生サポーターのメンバー間でSNSのグループを作っていて、そこで制作物の進捗状況を共有しています。今週はここまで出来たとか、来週までにはここまで終わらせるといいよね、というやりとりの中で、制作物が少しずつ形になってくるとすごく達成感がありますね。難しさを感じるのは、メンバー内でも各々政治的な考えがある中で、活動内容に偏りが生じないようにするところです。常に中立の立場で考え、活動進めていくことを心がけています。
小さな『1票』が、未来を動かす力になる
—投票について、若者へメッセージはありますか?
今、世の中で議論されている経済や憲法のこと、ジェンダーなど様々なジャンルがある中で、多分1つは疑問に思ったり気になることがあると思います。そこを深堀りしていくと、政治と関係していることが多くあります。僕も活動を始めてから、前よりさらに選挙や政治に興味を持つようになって、Twitterやニュースアプリで世の中の動向などをチェックしています。そういう小さい疑問を調べたり考えたりして、少しでも政治に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
もうひとつ、選挙に行ける権利があることはとても恵まれていることなんです。国民に選挙権がない国もあるので、そういうことを調べていくと選挙権があることのありがたみを感じます。よく「自分が投票に行かなくても変わらない」という声も聞くのですが、開票してみたら100対100だったなど、同票で抽選になってしまう、という事例が選挙ではまれにあるんです。そうなると、いかに1人の『1票』が大事かがわかりますよね。
選挙権は、僕たちに平等に与えられた国民の「権利」です。皆さんの『1票』が未来を動かす力になるので、ぜひ投票所へ足を運んでほしいです。
方言と気候と温泉。地元とはまた違った弘前の魅力
—学生生活についても伺います。弘前での生活はどうですか?部活動についても教えてください。
弘前は静岡とはまた違った文化があって魅力的です。教育実習で介護施設に行く機会があるのですが、もう津軽弁がすごくて(笑)聞き取れないことも多いですが、やはり遠くに来た甲斐があるな、と感じます。
静岡もなまりはあって、語尾が「~だら」「~だもんで」だったり、単語が少し違ったりしますが、津軽弁よりマイルドですね。
あとは春から秋にかけて涼しい日が多く、とても過ごしやすい気候だと感じます。静岡は本当に暑いので。地元は雪があまり雪が降らないところだったので、弘前に来た当初は雪を見て感動していました。ただ、1日に30~40cmも積もったりすると生活面で困るときもありますが(笑)
市内でよく行く場所は弘前公園です。静岡から友達が来ると、必ず弘前公園に連れて行って、弘前城を見たり公園内を散歩したりします。あとは温泉が好きで、酸ヶ湯や青荷温泉、碇ヶ関の温泉など県内の温泉巡りを楽しんでいます。ぬるめの温泉が好きなので、好みの温泉を見つけるのも楽しいです。一人で行くことも友人と行くこともありますね。
部活動は競技スキー部に所属していて、夏は陸上トレーニング、冬は雪が積もり次第スキー場で練習しています。夏はランニングやラダーなどで体力作りのためのトレーニングをしています。大学内のトレーニングルームが開放されていて、そこでもトレーニングしているようですが、今は課題や大学生サポーターが忙しくて参加できていなくて。
冬の練習は週6日あり、自主参加なので週4~5日程参加していました。競技スキー部では大会にも参加していて、僕も昨年、秋田県の鹿角市で開催されるインカレ(全日本学生スキー選手権大会)に出場しました。スキーに関しては、中学1年からアルペンスキーをはじめて、そこからのんびりやっている感じですね。
好きなこと・興味のあることは積極的にやってみる!
—最後に受験生へメッセージをお願いします。また、将来の展望を教えてください。
高校生のうちに好きなことややりたいことが明確にあれば、今からそれを絶対にやっておくべきです。無いなら、しっかり勉強に取り組んでいて損はないと思います。しっかり勉強して、もしやりたいことが弘前大学にあるなら入ってくれたら嬉しいです。
弘前大学は、親身に対応してくれる先生が多く、授業中に気になる点や疑問点を聞きに行くと細かいところまで丁寧に教えてくれます。皆さんも弘前大学に入ったら、積極的に先生に聞きに行くことをおススメします。
あとは、コロナ禍から始まった「100円昼食弁当」もありがたいですね。僕も週に何回か利用しています。そういう学生支援がしっかりしているところも弘大の魅力だな、と感じています。
僕は教員を目指しつつ、将来の選択肢を広げるために幅広い知識を習得したいです。いろんな知識を持っていて、どんなことでも受け答えできる人って素敵ですよね。自分は飽き性なので、一つの分野を専門的に調べる、というより興味があることをどんどん調べる方が性にあっているようです。幅広い知識を持ちつつ、柔軟に物事を判断できる社会人になりたいですね。教員の道に進んだとしても他の道に進んだとしても、自分の意見や個性を出し続けていきたいと思っています。