自分で時間割を決める大学の授業。教養教育科目や専門教育科目など、様々な科目がありますが、大学生ってどんな授業を受けているのでしょうか?
今回は、教養教育科目の中から、入学した1年生が必ず履修する「基礎ゼミナール」をご紹介します。
各学部・学科ごとのクラスに分かれて実施される、いわば「ホームルーム」のような授業です。
そのうちの一つ、理工学部機械科学科のクラスを取材しました。
科目情報
| 科目名 | 基礎ゼミナール(教養教育科目) |
|---|---|
| 履修時期 | 1年次前期 |
| 担当教員 | 各学部・学科ごとのクラスに分かれ、各学部所属の教員が担当 |
※本記事の内容は取材時点のものです。
Interview先生インタビュー
「基礎ゼミナール」の担当教員のひとり、理工学研究科の城田 農(しろた みのり)教授にお話を伺いました。
― 「基礎ゼミナール」はどのような授業なのでしょうか?
基礎ゼミナールは、全ての学部学生が1年次に必ず履修する科目で、学生の「主体的・能動的学修」の能力を形成することを目的としています。
主体的・能動的学修とは、自ら課題を設定し、その課題に対して自分自身、そして社会や学会が納得できるような解を模索していくことです。この力は、大学生活そして社会に出てからも常に求められます。

拙くても良いし、失敗しても良いので、まずは挑戦し実際に経験してみることが大事です。
そして学修の過程や結果を学修記録簿(ポートフォリオ)に記録し、自ら管理していく習慣を身につけていけば、徐々に力が育まれていきます。
そのためにも安全で健康的な学生生活を送るための基本ルールを身につけることや、学生相互や教員との円滑なコミュニケーションを育むことが望まれます。



機械科学科ではバレーボールを実施

基礎ゼミナールは、少人数クラスを編成し、学生が自ら分析や調査、討論、発表等を行う「ゼミナール方式」を採用しています。
基礎ゼミナールのエッセンスは、学生一人ひとりが、教員や仲間の助けを借りながら、探究していく過程に宿っています。恥ずかしがったり、失敗を恐れたりせず、探究の世界に飛び込んでみて欲しいです。


― 授業の特色を教えてください。
これまでの基礎ゼミナールは、大学生活に必要な基本的知識や制度を伝えるガイダンス的要素が中心で、「主体的・能動的学修」を掲げながらも、実際には学生が受け身で情報を受け取る場面が多く見られました。
こうした状況を改善するため、今年度(令和7年度)からは授業構成を大きく見直し、反転学習の手法を積極的に導入しています。

大学施設をめぐる「キャンパスツアー」

大学生活でお世話になるスポットを知るきっかけに
学生は事前に動画や資料で基礎的な知識を身につけ、授業ではその理解を前提とした「対話」や「協働的な探究活動」に集中します。
グループでのテーマ設定、調査、討議、発表を通じて、問いを深め、他者と関わりながら学ぶ経験が得られます。さらに、授業で得た気づきや考察はポートフォリオに記録し、学修の蓄積と振り返りに活用します。
このように、従来の知識注入型授業から脱却し、学生が自らの学びを設計し実行する力を育むことが、今年度の基礎ゼミナールの大きな特色です。

その内容を授業で紹介し合う「ビブリオバトル」

― 授業では学生のどのような力を伸ばしたいと考えていますか。
基礎ゼミナールでは、単なる知識の獲得にとどまらず、自らの頭で考え、行動に移す「知恵」を育むことに重きを置いています。知識は講義や資料から得られますが、知恵は問いを立て、調べ、他者と対話し、失敗や発見を経てようやく身につくものです。
学生には、グループでの探究活動を通じて、多様な視点に触れながら思考を深め、他者と協働しながら答えを模索する経験を積んでもらいます。その過程で養われるのは、「論理的思考力」「表現力」「批判的思考」「協働性」といった知恵の土台となる力です。
さらに、ポートフォリオを用いた振り返りによって、自らの成長や課題に気づき、学びを継続する力=学修の自己調整力も育んでいきます。

Student’s Voice受講生インタビュー
城田先生が担当するクラスの受講生3名(理工学部機械科学科1年)にお話を伺いました。

― まずは、授業を受けての率直な感想を教えてください。



― 授業で印象に残っていることや「勉強になった」「おもしろい」と思ったことはありますか?
今野さん:機械科学科所属の学生は全部で6クラスに分かれているんですけど、クラス対抗でバレーボールをする授業回が楽しかったです。久しぶりに身体を動かして楽しかったのと、先生が景品としてお菓子を用意してくれたりして、盛り上がりました。同じ学科内でもなかなか接点がなかった人と話す機会があり、チームワークも高まったように思います。
清野さん:普段はマンガを読むことが多いんですけど、一人一冊本を選んで紹介する「ビブリオバトル」の授業のとき、あまり読んだことがない自然科学系の本を選んで読んでみたら、意外と楽しいなって気づいて新鮮でした。
笹野さん:「キャンパスツアー」の授業回で、スタンプラリーをしながらキャンパス内を回ったのが印象に残っています。自分ひとりではなかなか行かないようなところも、友達と協力しながら場所を探したりして、おもしろかったです。「フーコーの振り子」*が印象的でした。
*フーコーの振り子:1851年に地球の自転を証明するため使用された実験装置。当時と同じ仕組みの振り子を、理工学部2号館で展示している。

(上)本を紹介する清野さん
(下)「フーコーの振り子」はキャンパスツアーのチェックポイントのひとつ
― 授業を受けてみて高校までの授業と違いを感じたところを教えてください。
清野さん:高校のときは、教科書で決められた範囲の内容を叩き込んで能力を上げていくような印象があったんですけど、大学に入ってからは、「自主的に」って言葉をよく言われるようになって、内側からやる気を引き出してもらっている気がします。
今野さん:先生から一方的に話されるだけじゃなくて、各自、グループで主体的に考えて動いていくことが高校と違うなと感じます。
あと、基礎ゼミナールは毎回課題が出るんですけど、「次の授業までにこの動画を視聴して感想を書く」とか、「本を読んで内容をまとめてくる」といった課題を、自分たちで自主的に進めていくところも、高校との違いを感じました。
笹野さん:高校の授業では課題研究があって、自分たちで研究・制作して、最後にみんなの前で発表したりしたんですけど、自分たちで動く機会は高校3年間でそのくらいで。
高校は、先生から知識を投げかけられて、それをいかに効率よく覚えるかが中心にあるように感じていましたが、大学は、自分で疑問を抱いて、その疑問を深めて議論をしていくことが中心にあると感じていて、より主体的に動いていくところは高校のときとは違うなと感じました。

― 授業で学んだことを、今後どのような場面で活かしていきたいですか?
清野さん:僕はバレーボールサークルに入っているんですが、授業でバレーボールをするとき、城田先生から「みんなにアドバイスない?」って聞かれて、「とりあえずまずは上にボールをあげていくといいと思う」と答えたことがあって。そのとき、経験の有無にかかわらず、みんながバレーボールを楽しめる方法って何だろうと考えたりしたんです。この「誰でも楽しめるように」という考え方は、これから社会に出て何か企画をするような場面とかで活かせるかもしれないなと思いました。
笹野さん:授業では、「ビブリオバトル」や新聞を読んで興味のある記事を紹介するといった、自分の考えを発表する場面が多かったので、自分が思っていることを頭の中で整理し、いかに分かりやすくまとめるかっていう「伝える力」を学びとして得られたと思います。これから、自分の研究とかで発表するときに活かしていけそうだなと思いました。
今野さん:ちょうどいま授業で、チームを組んで「問い」や研究テーマを立てて、研究するということをしているんですけれど、チームで課題を深掘りしていく作業が面白いなと感じていて。この経験は、今後研究室に入って自分の研究を進めていくときにも活かせそうだなと思っています。
何が正解か分からない場面に出会ったとき、自分なりの答えを見つけることは、決して簡単なことではないと思います。
正解のない「問い」に対して「とりあえずやってみる」。
「基礎ゼミナール」の授業は、そんな背中を押してくれる授業でした。


