弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第16回は、弘前大学フィールドサイエンス研究会に所属し、ひろさき環境パートナーシップ21の自然環境学習会で発表を行った 荒井 良太(あらい りょうた)さんです。発表に至った経緯や、フィールドサイエンス研究会での活動、生き物に対する想いを伺いました。

北海道にはいない生き物が見たい

—弘前大学農学生命科学部生物学科を志望した理由を教えてください。

元々生き物、特に昆虫が好きで、生き物についての勉強を大学でできればと思いました。小さい頃から、家の近くの土手で何時間も虫とりをしたり、休日は父が山の方に釣りに連れて行ってくれたりしていて、それで虫が好きになったんですね。小学生になってからは近所で捕った虫の写真にデータを書いて、自由研究にしたこともありました。
大学では北海道にいない生き物や自然環境を、見たり体験したりしたいと思って本州の大学を探して、弘前大学にしようと決めました。

弘前に来て1年ですが、北海道では当たり前にいた雪虫をぜんぜん見なくて、あれ?って思ってます。出ると冬になったのかなと思うんですよね。
青森では、夜のスーパーの駐車場に普通にカマキリがいたりして、北海道ではなかなか見られないので、驚きました。

インタビュー中の荒井さん

市の自然環境学習会で発表。トンボの魅力

―ひろさき環境パートナーシップ21の自然環境学習会で発表をしたそうですが、
どういった経緯で参加されたんですか?

今所属しているフィールドサイエンス研究会の友だちに誘われて、当時の1年生2人と参加しました。この学習会は、自然環境に関して発表したいことを自由に発表できる機会です。いろいろな年齢層、所属も様々な方が参加していました。

昆虫の中でも特にトンボが好きで、この1年でいろいろなところに行ってトンボを捕ったので、そこでわかったことを発表できたらと思いました。

ートンボの魅力はどんなところですか?

捕まえる楽しさですかね。トンボは頭がいいので、一回網を振り逃してしまうと、そのことを学習して、なかなか近寄ってくれなかったり、網を見せてしまうと警戒して遠くのほうを飛んでいったりするので、そういうかけひきがおもしろいです。色も形もきれいでかっこいいですしね。
自分の中で最終的に採れたらいいなと思っているトンボはヤブヤンマというトンボですね。青森県なんかでも年に数例しか確認されていなくて、生息地はあるらしいんですけど、なかなかお目にかかれない珍しいトンボです。体色もとてもきれいですし。北海道にはいなくて、北限が青森というトンボです。

網をかざす様子
採集に使う網。これは柄の部分のみで本来は竹の棒を挿し、全体で2m70cmほどになる

種間雑種が確認されない謎

―どのような内容で発表したんですか?

「トンボの観察から得られた考察」いうタイトルにしていましたが、実はまだ“仮説”という感じです。仮説を検証してから“考察”になるので。オオルリボシヤンマとルリボシヤンマというトンボがいて、それが色も形もよく似た2種なんですけど、その2種の間には種間雑種・・・例えば、馬とロバが交雑して生まれるラバなんかがそれで、トンボでも確認される種もあるんですけど、オオルリボシヤンマとルリボシヤンマは種間雑種がまだ確認されていないみたいなんです。すごく見た目が似ているのに、どうしてなのかなと。住む環境を分けて交雑しないようにしているのでは、ということと、成虫の発生する時期を分けて、異種の雄と雌が出会わないようにしているのでは、という仮説を立てました。付け焼き刃というか、時間があまりなくて、自分だけで考えた仮説だったので、次はちゃんと先生や誰かに相談しながらやっていけたらいいなと思いますね。

他の2人はそれぞれ別のテーマで、1人はもともと高校のときからやってきていた研究をわかりやすく説明していて、一人は“虫こぶ”といって、昆虫が植物に寄生したときに形成される異常な瘤にすごく興味を持っていて、それをテーマに発表していました。

今年度また成果が得られたら、仮説の続きを発表してみたいなと思います。

トンボの標本
大学に入学してから作り始めた標本。トンボは特に作るのが難しい

生き物好きの集うサークル

―弘前大学フィールドサイエンス研究会に入った理由を教えてください。

住むところを決めるとき、生協のサポートセンターの先輩と話していて、生き物が好きなんですという話になって、そこでフィールドサイエンス研究会の存在を知りました。ここしかない!と思って(笑)
僕の代は異例みたいで10人以上入りました。これからまたどんどん仲間が増えていくといいなと思います。

活動としては、月に何回かみんなで集まって、海や山へ行って生き物を採って遊ぶという感じです。西目屋や十和田湖、夏休みの合宿では秋田白神まで行きました。
フィールドに着いたらみんなそれぞれ自分の好きな生き物のいそうな場所に行って、採集します。すごく自由な感じです。採集したら、見せ合ったり、写真を撮ったり、持ち帰って飼育したり・・・。とても楽しいです。
ハ虫類を好きな人、魚を好きな人もいます。昆虫好きは多いですね。
みんな個性的で、さっき話した”虫こぶ”が好きな人、オサムシが好きな人・・・それぞれの道のスペシャリストがいるのでいろんな話を聞けて、自分の知らなかった生き物の知識も入ってきます。みんなこだわりがあるので、話が盛り上がります。

総合文化祭では生き物の写真の缶バッジを販売しました。
みんなが撮った写真からアンケートで商品化するものを選んだんですけど、僕が送った写真は全部没になりました。良い写真があると思ったんですけど・・・(笑)
当日は子連れの方が多かったですね。オオクワガタの缶バッジがあったんですけど、子どもに人気でまっさきに全部売れました。あとは鳥が好きな人や、花が好きな人も来て、ぼちぼち売れていきました。

岩手大学や北里大学の方と合同合宿をしたり、弘前大学の中でも「野鳥の会」と交流したり、いろいろな交流の場面もあります。

白神山地周辺での採集の様子
弘前大学フィールドサイエンス研究会、白神山地周辺での採集を行う

虫が目覚める春の訪れ

―これから春に向けて、狙っていきたい生き物もいますか?

雪が溶けたら“オサ堀り”といって、オサムシを堀りに行きます。自転車をこいで山まで。ピッケル片手に入っていって、朽ち木を掘って、冬眠しているオサムシを採集します。そのシーズンが終わったら、個人的に行きたいのが、ムカシトンボという原始的なトンボがいて、渓流に発生するトンボなんですけど、それを採集したいなって。夜だったらライトトラップで集まってくるガを採集したいですね。ゴールデンウィークの頃だとエゾヨツメが出てきます。ヤママユガの仲間なんですけど、翅1枚1枚に紫色の目玉みたいな模様が入っていて、すごくきれいです。

ー今後どのような研究がしていきたいですか?

将来的に考えてるのはトンボの縄張り行動とか・・・あとは、ヤブキリというバッタのなかまがいて、地方によって同じ種でも鳴き方が異なっているんです。その鳴き声がどのように分化したのかとか、どうしてたくさんの種類の鳴き声があるのかを研究したいなと思ってます。

(左)ライトトラップ(右上)オサ堀りで掘り出したオサムシ(右下)収集したガの標本

趣味の合う仲間たちに出会える

―最後に新入生や受験生へ向けてメッセージをお願いします。

生物学科には、生き物を好きな人が集まってくるので、趣味の合う仲間と出会えて、趣味のことをいろいろ話せるのはいいことだと思います。高校までだともちろん虫を好きじゃない人もいるじゃないですか。なかなか自分の好きな話はできなかったですが、こういう学科だと生き物の趣味が合う人がいます。入学前にLINEグループができて、そこで標本箱を並べている写真を送ってきた人がいました。絶対こいつと友だちになろうって思いましたね(笑)今では一緒に採集に行く仲です。そういう、趣味の合う、いろんなタイプの人に出会えるというのはすごくいいと思います。

フィールドサイエンス研究会には野生動物が好きな人にはぜひ入ってほしいです。ある程度自由に活動できて、楽しいサークルなんで、ぜひ興味がある人は一度顔を出していただければ。
その道に詳しいすごい先輩もいるんで(笑)生き物が好きだったらぜひ考えてみてください。

十和田湖畔で実施された東北フィールドワーク報告会にて

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Profile

農学生命科学部生物学科2年
荒井 良太さん

弘前大学フィールドサイエンス研究会 。
北海道登別市出身。北海道室蘭栄高等学校を卒業後、平成30年4月に弘前大学農学生命科学部生物学科へ入学。生き物が好きで、弘前大学フィールドサイエンス研究科に所属。弘前市で実施された自然環境学習会に参加、県内外のいろいろな地域で昆虫の採集をするなど、精力的に活動している。