卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第5回に登場するのは北海道小樽市で市役所職員として働いている南部 真人 (なんぶ まなと) さんです。
現在の仕事の内容や、大学時代の印象に残っている出来事などを伺いました。

弘前の四季のまつりでアルバイト。市役所職員を目指すきっかけ

ー小樽市役所就職までの経緯を教えてください。

学生時代、さくらまつり、ねぷたまつり、菊と紅葉まつり、雪灯籠まつりなどのアルバイトをしていて、これらは弘前市役所が募集していたアルバイトだったので、市の職員と身近に接する機会が多くありました。その中で、職員の方が住民や観光客に丁寧に接客している姿を見て、自分も市役所職員として働きたいと思うようになりました。①地元の北海道で働きたいということ、②市役所職員として働きたいということ、③観光の仕事に携わりたいということ、などを考えて小樽市役所を選びました。
実際に配属されたのは観光課ではなく環境課でしたが…いずれは観光課で働きたいと思っているため、自主的に小樽観光案内人検定1級も取得しました。

小樽市は人口約12万人の街で、年間観光客数が800万人を超える観光都市です。海と山に囲まれた自然豊な街並みに、歴史的建造物が建ち並ぶレトロな雰囲気が魅力的です。また、札幌市から電車で約30分、新千歳空港からも電車で1本という好立地条件もあり、国内外から多くの観光客が集まります。小樽運河、ガラス細工、オルゴール、海鮮など観光資源がたくさんです。

小樽の観光名所”天狗山”にて。鼻をなでれば願いが叶う「鼻なで天狗さん」

生活保護のケースワーカーとして働く

ー現在担当されている業務について教えてください。
 やりがいを感じるのはどんなときですか?

最初の配属先の環境課では、PM2.5などの大気汚染調査や小樽運河などの水質検査、騒音・振動・悪臭の苦情対応などをしていました。平成28年4月からは生活支援課に配属となり、生活保護のケースワーカーとして、主に生活保護受給者のお宅を訪問し、生活状況や通院状況などを調査しています。必要に応じて介護や障害のサービスを紹介したり、仕事探しを手伝うこともあります。また、毎月支給する生活保護費の計算などもしています。

やりがいを感じるのは、ベタですが、市民の方から感謝された時です。
お年寄りのお宅へ訪問調査に行くと、「話し相手がいなくて寂しい」などと言われ、ついつい長話に付き合ってしまいます。ご近所さんの噂話とか、戦時中の昔話とか、仕事とは直接関係のない話も多いです。やらなければいけない仕事はたくさんあるので、ここで長話をすると職場に帰ってから大変な思いをします。しかし、「話を聞いてくれてありがとう」「元気になったわ」などと言われると、こちらも嬉しくなります。これは仕事のやりがいと言えるのかわかりませんが、この仕事だからこそできる大切なことだと思います。

仕事風景
仕事中の南部さん

ボランティアセンターでの活動。野田村に元気になってもらいたい

ー大学生活で印象に残っていることを教えてください。

大学3年のときに東日本大震災が発生しました。寮の友達の実家が津波で流された、放射線の被害を受けたという話を聞き、決して他人事とは思えず、いてもたってもいられませんでした。そこで、当時弘前大学人文学部で、甚大な被害を受けた地域へボランティア活動を円滑に展開するために設立されたボランティアセンター*1の活動に参加しました。
当時、がれきの撤去などの支援の他に、野田村の住民に元気になってもらう方法がないか、と考え、野田村のマスコットキャラクターである「のんちゃん」のねぷたを作ることを発案しました。多くの大人たちの賛同を得て、ボランティアの手で作り上げ、2011年のねぷたまつりではボランティアも参加して運行しました。その後野田村でも何度か運行しています。発案者だったことから、結局その流れで初代の学生事務局代表になりました。

東日本大震災のボランティアでは、学生だけではなく市民ボランティアの方とも一緒に活動しましたが、中にはボランティアのベテランもいて、ボランティアの知識や心構え、被災者の方との接し方などはこのような方から学びました。

*1ボランティアセンター・・・平成23年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、弘前大学人文学部内に設立。平成24年10月に発展的に改組、現在は全学組織(弘前大学ボランティアセンター)として設置されている。学生事務局について、詳しくはこちら「弘大のサークル・部活紹介 Vol.1 大学を飛び出す学生

弘前ねぷたで運行した”のんちゃん”ねぷた

ボランティアの経験が仕事に、仕事の経験がボランティアに活かされる

ーボランティアセンターでの経験が社会人になってから活かされていると感じることはありますか?

現在の仕事である生活保護のケースワーカーでは、市民の方と接する機会が多いですが、困っている人への寄り添い方、相手の気持ちになって考えるということなど、ボランティアで学んだことが活かせていると思います。

平成30年に発生した北海道胆振東部地震では、厚真町のボランティアに参加しました。参加を決心したのは、野田村での経験が活かせると思ったからです。一緒に活動したボランティアの方から、「さすが市役所職員、住民への接し方が上手だね」と褒められました。学生時代にボランティアを通じて学んだことが仕事で活かされ、今度は仕事で学んだ住民対応がボランティアで活かされた瞬間でした。ボランティアセンターでの活動はとても貴重な経験として今の私を支えています。

現在は、小樽運河の清掃ボランティアをしています。また、この活動がきっかけで知り合った仲間と、24時間耐久ゴミ拾いや勤労青少年ホーム(公共施設)のDIYプロジェクトをしたりしています。

青少年ホームDIYの完成発表会
勤労青少年ホームDIYの完成発表会の様子

宇宙人を本気で探す!

ー勉強したことで何か印象に残っていることはありますか?

ゼミでは「系外惑星におけるハビタブルゾーン」の研究をしました。わかりやすく言うと、地球外生命体が存在している可能性のある天体を探す研究です。ゼミを選ぶ時点では既に公務員になることを希望していたので、研究はワクワクすることをやりたいと思い、このテーマに決めました。
NASAなどが公開している様々なデータを用いて計算し、本気で宇宙人を探すという経験はとても楽しい思い出です。また、当時は“はやぶさ”ブームがピークの時期でしたので、このようなことがきっかけで宇宙に興味を持つようになりました。現在は、天文宇宙検定3級を取得し、休日はプラネタリウムに行くのが趣味です。

学生時代の経験に鼓舞される。学生のうちにチャレンジを!

ー弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします。

学生のうちに様々なことにチャレンジして欲しいと思います。
私は東日本大震災で野田村に行くまでボランティアの経験がありませんでした。初めて野田村に行くと決めた時は、少し葛藤しました。経験がない自分が参加したら邪魔になるのではないか、別に自分がいかなくても誰か行くのではないか(公務員試験や卒論で忙しい時期だったし…)、などとウジウジしていました。しかし、今になって思うと、この時の決断が後の自分にとって大きな自信に繋がっていると感じています。
北海道胆振東部地震のボランティアに参加した時も、正直行くか迷いました。別に自分がいかなくても誰か行くのではないか、と。しかし、学生時代の経験があったからこそ、参加することを決めました。
「迷ったらやる!」そう決めると活動の幅が拡がります。自分に自信がつきます。

24時間耐久ゴミ拾いでの集合写真

弘前大学ボランティアセンターのホームページはこちら

野田村ボランティア集合写真
野田村ボランティアでの集合写真
住民の方と
野田村の住民の方と

Profile

小樽市役所
南部 真人さん

弘前大学理工学部地球環境学科(現 地球環境防災学科)卒 。
北海道苫小牧市出身。北海道苫小牧東高等学校を卒業後、弘前大学理工学部地球環境学科(現 地球環境防災学科)に進学。葛西真寿教授のゼミに所属し、地球外生命体の存在可能性について研究する。平成24年3月に卒業後、北海道小樽市役所へ入庁。環境課に配属され、平成28年4月からは生活支援課で働く。在学時には野球サークルミーツに所属。3年次より、東日本大震災をきっかけに設立された人文学部ボランティアセンター(現:弘前大学ボランティアセンター)の、初代学生事務局代表として活動する。学寮である北鷹寮で親しい友人がたくさんでき、まるで家族のように過ごしたことも思い出。