2020年4月に新学長に就任した福田眞作学長。
学長は、2016年から4年間にわたって弘前大学医学部附属病院の病院長を務めたほか、弘前大学学長特別補佐として大学の運営にも関わってきました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、学びの環境や生活にさまざまな変化が生まれている今だからこそ、学生たちに伝えたいメッセージとは? 
弘前大学で学ぶ意義、今後の抱負を伺いました。

新型コロナという困難と向き合い、知恵を出し合って克服する経験を通じて、みんなの心がひとつに

― 学長に就任されてからの近況について教えてください。

4月着任早々、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を行なって参りました。まず何よりも優先したのは、全国から集まっている学生の皆さんを感染症から守ること、そして、本学で働く教職員の健康を守ることです。

新型コロナの予防・拡大防止策としては、密集・密接・密閉(いわゆる三密)を避けることが重要です。三密を避けながら学生の学びの機会をどう確保していくかについて一番悩みました。

たとえ、大学に来ることができないような状況になっても授業が継続できるようにしようと、学務部をはじめ職員が一丸となって急ピッチで準備を進め、5月11日から「メディア授業」を開始することができました。

初めての取り組みということもあり、当初は学生も戸惑いがあったと思います。コンピュータを持っていない学生や、Wi-Fi環境のないところに住んでいる学生もおります。大学側がハード面の準備を行い、学びの機会を確保できるようにサポートしました。これまでとは全く違った形ではありますが、現在、学生たちはメディア授業を通じて学習に励んでいます。

メディア授業は、大学の教員にとっても新しい経験です。慣れない環境のなかでも教員たちは学生のことを第一に考え、きちんと対応してくれています。あらためて、本学の学生や教員に誇りを感じています。

新型コロナウイルスは、多くの人に大変な影響を及ぼしました。しかし、私たちは今回、新たな感染症という危機を共有し、ともに知恵を出し合いながら模索し、この危機を克服するための努力を続けています。この経験は、弘前大学をより良い大学にしていくために、学生や教職員の心が一つになる絶好の機会になったのではないかと感じています。

― 学長は、2016年から4年間、弘前大学医学部附属病院の病院長を務められ、また、学長特別補佐として大学の運営にも関わってこられたんですよね?

本町キャンパスに関しては、全責任を持って取り組んできたつもりです。また、学長特別補佐になってからは、前・佐藤学長のリーダーシップのもと、組織改革、機能強化、国際化など大学運営全般について勉強させていただきました。あの4年間があったからこそ、今があると思っています。もし、あの4年間がないまま学長になって、いきなりコロナ対策に直面していたら、おそらく精神的に参ってしまっていたかもしれません。そのくらいあの4年間は貴重な経験であり、今の自分の支えになっています。

本町地区総合防災訓練
本町地区総合防災訓練では災害対策室長として全体を統括
医学部附属病院 納涼祭り
毎年、患者さんやそのご家族のために開催している「医学部附属病院 納涼祭り」。病院長時代には、患者さんたちと一緒に楽しいひと時を過ごしました。

地域を支え、地域から支えられる大学

― 学長が思う弘前大学の魅力は、どんなところでしょうか?

総合大学ですので、さまざまな学部の学生や留学生など、多様な人々と一緒に大学生活を送ることができること。そして何より、「地域とともにある大学」だということ。これが、本学の一番の魅力だと思います。

歴史的な背景を振り返れば、当時、青森市にあった青森師範学校と青森医学専門学校が青森空襲によって壊滅的な被害を受け、両校は移転せざるを得ない状況下におかれました。通常であれば、一府県一大学の国立大学は県都・青森市に設立されるわけですが、この時、弘前市が積極的に誘致してくれたこともあり、1949年、青森県の高等教育機関が統合する形で国立弘前大学が開学しました。このようなこともあり、本学は住民との結びつきが強く、地域から愛されている大学だと思っています。

また、地域と連携しながら世界レベルのさまざまな研究を行っており、そこから生まれた研究成果によって地場産業の振興や地域活性化に貢献していること、これも弘前大学の魅力です。

そして、他の大学と比べて、学生が非常に元気で活気があると感じています。部活動やサークル活動が非常に盛んなことも特徴です。さらに、学生たちはボランティア、地域活動、祭りやイベントなどを通じて地域の人々と積極的に関わっています。学生自らが行動し、発信し続ける姿も、他にはない弘前大学の魅力なのではないでしょうか。

今年4月のこと。本学の医学部を卒業して地元に戻った卒業生からメールをいただきました。「青森を離れてから、青森の人たちって本当に優しかったなと思い出しています。青森の人たちの優しさに包まれて6年間を過ごしたことで、自分も人に優しくなれました」。縁があって弘前大学で育った学生自身が、地域との交流を通して人間的な成長を実感できたというメールを読んでとても嬉しくなりました。本学は、地域との関わりという点では、どこの大学にも負けません。

弘前大学長 福田眞作

令和元年度の学部学生の就職率は歴代2位の98.9パーセント!
有名企業の人事担当者が「採用を増やしたい」大学NO.1にもランキング!

― 日本経済新聞社と就職・転職支援の日経HRが実施した『人事が見る大学イメージランキング』(2018年版)では、人事担当者が「採用を増やしたい」と考える大学1位に弘前大学がランキングしました。学長は、その理由についてどのようにお考えですか?

私が思うに、素直な学生が多いからではないでしょうか。たとえば、今回のメディア授業を例に挙げても、大きなトラブルもなく継続できているのは、学生の皆さんが素直で協調性に優れているからだと思います。本学は、東京大学や京都大学などのいわゆる旧帝大と比べれば、いわゆる知識の点ではかなわないかもしれません。しかし、社会に出ると、知識そのものよりもコミュニケーション能力や協調性が問われる場面が多いですよね。本学の学生は、地域社会と深く関わり、さまざまな世代と交流しながら多種多様な経験を重ねています。企業人の方々から見れば、そうした学生は非常に魅力的ですし、ぜひ自社で育ててみたいと思うのではないでしょうか。

また、本学の教員たちは、それぞれの学生に合わせて能力をうまく引き出し、伸ばしてあげることに一生懸命です。キャンパス内外の学びを通して、学生たちは成長していくのだと思います。

本学の令和元年度の学部学生の就職率は98.9パーセントとなり、平成29年度の99.1パーセントに次ぐ歴代2位を記録しました。本学の卒業生は青森県内をはじめ全国で活躍しており、就職先からも非常に高い評価を得ています。

地域に根ざした弘前大学だからこその取り組み!
弘前大学と弘前商工会議所が連携した、全国でも珍しい「プレミアム食事券」事業!

― 新型コロナウイルスに関連する学生の支援策について教えてください。

新型コロナに伴う経済的な理由で、学生が学業の継続をあきらめざるを得なくなる事態を回避するために、国の奨学金や給付金を使って支援を行いました。さらに、本学独自の支援を行うために「弘前大学生活支援奨学金」による募集も行いました。

また、新型コロナの影響で経済的に困窮した学生の健康を維持するために、弘前大学生協の文京食堂店で、学生を対象に「100円夕食」の提供を実施しています。

100円夕食

さらに、新型コロナの影響で経済的に困窮している学生を支援し、同じく新型コロナでダメージを受けた地元の飲食店に貢献しようと、弘前大学と弘前商工会議所が連携して、「弘前大学コロナに負けるな!!プレミアム食事券」事業を開始することにしました。食事券は5,000円分の食事ができるもので、大学側が2,000円、弘前商工会議所側が1,000円を負担。学生は、1人につき1枚2,000円で購入できます。

弘前大学の負担分は、寄附金で運営する「弘前大学修学支援基金」を活用しています。新型コロナの影響により、学生が経済的な理由により修学を断念することなく安心して学業に専念できるよう基金を募っているもので、全国から温かい支援が多数寄せられています。
寄附をしてくださった卒業生のなかには、「私も経済的に大変苦しいなか、いろいろな方の支えがあって卒業することができました。今は大変な時ですが、学生さんたちもどうか大学を辞めずに頑張ってください」という激励のメッセージを寄せてくださった方もいます。全国の本学の卒業生が後輩たちを応援し、支援の輪が広がっていることは本当に有難く励みになっています。

学生にとって、魅力的な大学でありたい!

― 学長がめざす弘前大学の姿は?

学生が、楽しく生き生きと学べる大学にしたいと思います。そのためには、弘前大学が学生にとって魅力のある大学でなければならないと考えます。地方大学の魅力って何だろうって考えた時に、やはり地域と連携しながら面白い研究を行い、その成果を地域に還元し、さらに世界へ発信していくことではないかと思います。

弘前大学医学部時代は卓球部で活躍!

― 弘前大学の学生さんは、新型コロナの影響でまだ学長にお会いしたことがない方もおります。そこで、学長のプライベートについてもお伺いします。ご出身はどちらですか? 学部を決めた理由についても教えてください。

出身は秋田県大仙市で農家の長男坊です。高校時代は化学に興味があり、化学の研究をしたいと思っていました。「医者をめざしてはどうか」という親や先生の勧めもあり、弘前大学の医学部に入学しました。「生化学」という学問があると知り、当初は自分の好きな化学に関する研究をしたいと思っていたのですが、病める患者さんに対して真剣に向き合っていきたいという気持ちがどんどん強くなって、4年生の時に臨床医を目指すこととし、卒業後に消化器内科の方に入局させていただきました。

― 大学時代、思い出に残っていることは何ですか?

小中学時代は野球部でしたが、大学では医学部の卓球部に所属しました。「東医体」(東日本医科学生総合体育大会)では、個人戦ベスト32の記録もあります。卓球部の同期の仲間10人くらいで、よくボーリングや麻雀をしていました。意外と運動神経は良くて、ボーリングのスコアは最高で240でした。卓球部のメンバーの出身地は、青森、秋田、北海道、長野、富山、愛知、奈良とバラエティに富んでいて、今でも交流を重ねています。

弘前大学在学中の卓球部のメンバーと
弘前大学在学中の卓球部のメンバーと。全国各地で活躍しており、このうち3人が教授に。

― ご趣味や特技は?

自宅の庭で、サクラ、フジ、ライラック、オオデマリ、コデマリ、エゴノキなどの樹木を育てています。春から初夏にかけては次々に花が咲いて眺めているだけで癒されます。庭の雑草を取るのも嫌いじゃないんですよ。無心になれる時間です。

学長の自宅の庭に咲くフジの花
学長の自宅の庭に咲くフジの花。樹木の手入れも学長が行っており、毎年、季節の花が咲くのを楽しみにしている。
自宅の庭にあるエゴノキ
こちらも自宅の庭にあるエゴノキ。

4、5年前からはまっているのは、胡蝶蘭を育てること。毎年、咲かせるにはコツがあるんです。それは、あまり優しくし過ぎないこと。病院長に就任した時にプレゼントしていただいた胡蝶蘭は、毎年きれいに咲いてくれます。

時間がある時は、ゴルフにも出かけています。また、3年前からは、弘前大学や附属病院の職員たちと一緒に釣りを楽しんでいます。弘前を深夜に出発し、鰺ヶ沢、平内、三厩などで釣り船を借りて海釣りを楽しむんです。釣りが終わった後は、釣果を持ち帰って反省会。持ち帰れない時は…魚を買って参加します(笑)。

病院長就任のお祝いにいただいた胡蝶蘭
2016年に、病院長就任のお祝いにいただいた胡蝶蘭。毎年きれいな花を咲かせる。

夢は、「日本一、学生に優しい大学」をつくること

― 在学生へのメッセージをお願いします。

新型コロナウイルス感染症というのは、100年に1度あるかないかの大変な出来事です。それだけに、この苦難を乗り越えた先の皆さんは、この先長い人生に訪れるいかなる苦難をも乗り越えることができると信じています。学生の皆さんには、弘前大学としてできる限りの支援を行いますので、決して一人で悩まずに、何か困ったことがあったら相談していただければと思います。

― 高校生へのメッセージをお願いします。

高校生の皆さんも、授業もままならないような状況が長く続き、将来に対する不安を抱えていることでしょう。でも、予期せず生まれた時間を有効に活用し、自主的に学びを深め、視野を広げる絶好のチャンスでもあります。弘前大学は、非常に魅力があって、楽しい大学です。また、弘前市は暮らす街としてもとても魅力にあふれています。大学選択の際には、是非、弘前大学を選択肢の一つに加えてください。

私の夢は、弘前大学を「日本一、学生に優しい大学」にすること。大人の主張を押し付けるのではなく、学生の声に耳を傾けつつ、学生からみて優しい大学でありたいと思っています。ぜひ、一緒に弘前大学で学びましょう!

弘前大学長 福田眞作

Profile

弘前大学学長
福田 眞作(ふくだ しんさく)

秋田県大仙市生まれ 。
弘前大学医学部卒業。平成28年4月から、弘前大学医学部附属病院長と弘前大学学長特別補佐を務め、令和2年4月に国立大学法人弘前大学長に就任。