卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第10回に登場するのは青い森信用金庫 弘前・津軽地区本部で働く 五十嵐 真二(いがらし しんじ)さんです。
五十嵐さんは、令和元年度から、弘前大学地域創生本部連携推進員として青い森信用金庫から派遣され、弘前大学との連携活動や、大学が主催する研修や講演会に参加するなど、能力開発にも取り組んでいます。
現在の仕事の内容や連携推進員としての活動、大学時代の印象に残っている出来事、今後の展望などを伺いました。

地域に寄り添いお互いに発展する、信用金庫に勤めて

ーお勤め先について教えてください。

青い森信用金庫は、青森県を営業基盤とする地元の中小企業や住民が会員になって、お互いに発展していくことを共通の理念として運営されている相互扶助型の金融機関です。

信用金庫と銀行の違いがよくわからないという方もいるかもしれませんが、信用金庫の目的は、「地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元することにより、地域社会の発展に寄与する」ことです。信用金庫と銀行の根本的な違いは、銀行は株式会社、いわば株主の利益を優先して追求する営利法人で、信用金庫はその信用金庫の会員から出資を受けて成り立っており、非営利法人だというところです。
また銀行には会員資格や業務範囲に制限がないのですが、信用金庫には制限があります。株式会社のように利益を追求するのが最大の目的ではないのです。地域を限定してその中の人たち、とくに中小企業の方々を会員としてお金を融通するのが信用金庫の特徴です。法律で地域や融資をする相手が限定されているので、その地域を超えて出店して範囲を広げることはできません。
信用金庫は地域の人々の発展を最優先として存在する共同組織であり、そこには「困ったときはおたがいさま」だからと、みんなで助け合う相互扶助の精神があります。地域を絞って営業している信用金庫だからこそのきめ細かなサービスやご提案ができるものと私は考えています。

ー具体的に、どういった業務を担当されていますか?

弘前・津軽地区にある店舗の総括部門である弘前・津軽地区本部に在籍し、法人担当の仕事をしています。
主に、地域の中小企業へ訪問し、経営者の方々と面談し、企業が抱える悩みや課題、将来の事業展望などについてお話することで当金庫ができる様々なご提案をしています。ご融資の提案だけではなく、企業の販路拡大につながるようなビジネスマッチングのお手伝いや設備投資の際に必要な補助金申請に関するお手伝いなど、最近はコンサルティングの要素が強いお仕事をさせていただいています。
また、2019年度より定期的に弘前大学に出向いて、当金庫と弘前大学との連携協定に基づいた「連携推進員」の仕事も兼任しています。

弘前大学人文学部卒業生
青い森信用金庫本店営業部(八戸市)の外観

頼りにされている、感じる自信が原動力に

ー仕事のやりがいを感じるのはどんな時ですか?また、今後の展望を教えてください。

当金庫の主な担当業務は、営業担当(いわゆるテラーなどの窓口担当)、融資担当、渉外担当の3つに分かれます。私は、渉外担当、いわゆる「外回り」の担当業務がこれまで最も長いのですが、直接お客様の会社へ伺い、事業や業界のこと、地元のイベントや旬な話題、社長さんや私の趣味の話やその時のうれしい事や悩み事などまで、ビジネスの話から雑談までいろんな話をして、新たな気づきや発見、私自身勉強になることが多いです。会話の相手が主に会社を代表する方が多いので、これまでの経営を続けてきた上での苦労話、とくに会社経営のピンチのときにどうやって乗り越えたかなど教えていただいた時には、気心が知れた仲になれた気がします。なんといってもやはり一番やりがいを感じるのは、社長さんからご自身の経営についての相談を持ちかけられたとき、「頼りにされてるなあ」という気持ちになり、なんとしても力になろうと思います。
こうやってこれまでたくさんの経営者の方々と交流を重ねてきたことで、信頼を得ることができ、それが私の自信につながっています。
自信がさらに働き甲斐ややる気を生み出し、いまの原動力となっているわけです。

弘前大学人文学部卒業生
デスクで仕事中の五十嵐さん

ー今後、どのように働いていきたいですか?
 将来の展望などを教えてください。

現在、次長席として管理職のポストについていて、営業店では支店長、本部では部長を補佐する立場にあります。将来支店長として一つの営業店をマネジメントしていくことを目指していますが、そのためには営業・融資・渉外という各担当の垣根を越えて、職場の部下・後輩が気軽に相談を持ちかけられるような上司になりたいです。また、お客様に対してはかけがえのない相談相手となり、当金庫と取引して良かったと感じていただけるように、私を通じて当金庫のファンが増えるように活動したいと思っています。
当金庫のファンが増え、私たちがこの青森県の中小企業や住民の方々に対し、様々な形で支援できれば、志望動機であった「地元への恩返し」ができるのではないかと思っています。

弘前大学、自治体・金融機関の職員と、地域課題解決に取り組む

ー弘前大学地域創生本部連携推進員としての活動についても伺います。
 これまでどのような取り組みをされてきましたか?

連携推進員は、自治体・金融機関の各機関より派遣され、具体的な地域課題解決等の事案への取組を目的に各機関と弘前大学との橋渡し役として活動しています。昨年度は自治体・金融機関共通課題として子育て・少子化問題を挙げ、「子育てにやさしい地域」としての魅力を発信するために、地域情報アプリの必要性についての考察を行いました。
また今年度は人文社会科学部の学生に対し、「キャリア教育」の講義を行い、これまで信用金庫で働いてきた経験から、金融機関を取り巻いている金融環境やこれから金融機関職員に求められること、最終的には今後社会人になるにあたって求められることなどについて講演させていただきました。
今後は担当している企業の経営課題解決のために、弘前大学と企業のコーディネート役を果たすとともに、自らのコーディネート能力の向上を目指しています。また大学の講義や研修への参加を通じて、専門的な知識を習得することが、今後の業務やコミュニケーションのスキルアップにつながることを期待しています。

連携推進員の定例ミーティングの様子

ー卒業後、改めて弘前大学に関わることで気づくことや、新しい学びはありますか?

卒業してから20年近くになる今になって、まさか弘前大学と関わりのある仕事ができるとは思いませんでした。弘前大学は青森県内の各自治体や金融機関などと連携協定を結んでおり、弘前大学が持っているネットワークの多さ、関係機関の多さにまず驚きました。連携推進員として弘前大学が主催するセミナーや講義に参加しましたが、そこに協賛して講演してくださる青森県経済界の名士や、注目を浴びている企業の社長さん、また各分野で活躍する著名な先生方など、国立大学法人でなければお話を伺うのは難しい方々の講演を聞くことができました。
また弘前大学は地元企業と関わり合って、例えば健康食品の開発などをしています。学生時代には大学が企業と連携していることなど考えたことはありませんでした。
最近では学生を連れて大学が県内企業の視察ツアーを行っているなど、学生が県内企業へ就職する意識づけにもつながっており、弘前大学の学生が県外へ流出することを留める効果があると思われ、これも地方創生の一環だと思います。

地域活性化のために。連携を活かしていく

ー連携推進員としての活動が、お勤め先でのお仕事に活かされていると感じる部分はありますか?

連携推進員として弘前大学へ出入りし、大学主催の「地方創生ネットワーク会議」や「じょっぱり起業家塾」などのセミナー、講義に参加させていただいたことで、人口減少問題など青森県が直面している課題に触れたことは、今後も信用金庫で働く上で認識すべき重要なことであると思います。信用金庫は営業エリアが限定されており、金融機関の中でもより地域性が強く、地域と運命共同体にあるといえます。地域の課題を解決し、活性化に結び付けることは、勤務する信用金庫にとって、果たすべき使命です。
私にとっても連携推進員の活動は、自己の仕事の意義を再確認する場であります。法人担当として企業の経営者と面談するときは、弘前大学の連携推進員をやっていると伝えています。数多くの企業を訪問しましたが、企業は何かしらの経営課題を抱えています。そこで弘前大学の名前を出すことで、会話がスムーズになり、大学と共同して何か解決できることはないか問いかけています。
今後も課題解決するための手段の一つとして、弘前大学との連携推進員制度をもっと活用していきたいです。

弘前大学人文学部卒業生
令和元年度の活動報告をする五十嵐さん

社会学を専攻。就職は地元へ恩返しができる地域密着型の信用金庫へ

ー学生時代についても伺います。
 大学生活や学んだことで印象に残っていることはありますか?

大学時代は4年間、硬式テニス部に所属していました。それまではテニスはもちろん、体育会系の部活はやったことはありませんでした。大学1年生の時に、たまたま学生食堂を歩いていたら、当時のテニス部の先輩達に声を掛けられ、テニスには興味があったので入部してしまいました。
テニス初心者でしたが、授業のない空き時間にでも相手を見つけては練習するほど熱が入り、その成果があってか、4年生の春には大学王座の選手メンバーに選ばれました。

本業の学業では、社会学を専攻し、ゼミでは西目屋村やつがる市稲垣地区(旧・稲垣村)など過疎化の問題を抱えている農村地区へフィールドワークという形で訪問し、そこに住む人たちの生の声を聞いて、地域活性化の取り組みなどを研究しました。

4年生の春まで部活に専念していましたから、就職活動のスタートがすっかり遅くなってしまいました。

弘前大学人文学部卒業生
大学時代のテニス部の仲間と

ー就職の経緯・理由を教えてください。

就職活動が思いのほか進まず、どうしようかと悩んでいた4年生の秋、私の父が当時勤務していた会社が、当金庫と取引があり、私も一度父についてある支店の窓口に行ったんです。そこで窓口で対応してくれた女性の対応が、親しみがあって、信用金庫に対して良い印象を感じました。
また、大学のゼミや卒業論文作成のために地元を歩いて、地元の人たちに触れて、地元に愛着があったため、何か恩返ししたいと思うようになり、結果県内に営業基盤を置き、地域密着している信用金庫で働いてみたいと思い、採用試験を受けました。最初から金融業界を志望していたわけではなく、大学時代の経験からなぜか興味を持ち、現在に至るというわけです。
あとは、15時で窓口が終わるというのを聞いて、早く帰れることに憧れていたというずるい気持ちもありました。結局就業時間は17時30分迄の勤務ですし、融資案件の稟議書作成やミーティング・会議、外郭団体の行事の準備などやるべき仕事はたくさんあり、残業する日もあります。


ー弘前大学での学びや経験が、社会人になって活かされていると感じるのはどんなときですか。

ゼミでは、過疎農村地区住民へ現地での聞き取り調査をしましたが、住民の方々からどのような暮らしをしてきて、地域に対し、どのような思いを抱いているかなど聞くことができました。これはいまの仕事に通ずるものがあります。
現業務においても、企業を支援していくためには、経営者の方から会社理念や方針、会社へ抱く思いを聞くことは重要なことであり、聞き取りのスキルについては大学時代の経験が活かされていると思います。
卒業して来年で20年になりますが、いまでもテニスは毎週欠かすことのない楽しみの一つです。複数のテニスサークルを掛け持ちして所属していますが、テニスを通じた人脈もまたこの仕事をしていく上で役立っているのかなと思います。

弘前大学人文学部卒業生
テニスは卒業後も続ける趣味に

成功体験で生まれる自信。大学時代はいろいろな経験をして

ー弘大生やこれから大学を目指す受験生へメッセージをお願いします。

私たちが働く業界は、商品知識の習得も大切ですが、お客様や同僚・上司とうまくコミュニケーションをとるための能力が不可欠です。これはどの仕事にも当てはまることだと思いますが、仕事をする上で相手の話に耳を傾け、話を聞く力や話を理解する「傾聴力」が必要になってきます。
また「自分を売る」ことも時には必要で、相手がお客様であろうと職場の同僚であろうと、自分や自分の商品を知ってもらい、積極的にコミュニケーションをとることで、契約がとれたり、職場内でもスムーズに仕事が進みます。
その成功体験が繰り返されると働き甲斐や使命感といったものが生まれ、自分への自信につながります。

私は高校生までは消極的で内気な性格でした。とくに初対面の相手と話しをするなど避けてきました。それが、大学時代にゼミや部活動で出会った多くの仲間とかけがえのない貴重な経験をしたことで、いまでは初対面の方に対しても積極的にコミュニケーションをとるようにし、仕事では与えられた目標に対して、必達するよう率先して行動するようになりました。
そのおかげで、当金庫の成績上位の渉外担当者に与えられる最高賞の「理事長賞」の表彰を授かることもできました。負けず嫌いの性格は大学時代で養われたと思います。

モノがありふれているこれからの時代は、個々の能力が見直され、人と違うものや考え方が尊重される時代ではないかなと思います。多くの企業で人事評価の仕方も「年功序列」から「成果主義」にシフトされています。
個人の能力にフォーカスされることが多いですから、学生時代に部活動やサークル、アルバイトなどいろんな経験をして、できるだけ多くの人とコミュニケーションをとって、いろんな経験をして、いろんなことを感じて、自分の能力を高めてください。

弘前大学人文学部卒業生
令和元年の弘前大学連携推進員のメンバーと

Profile

青い森信用金庫 弘前・津軽地区本部
五十嵐 真二さん

人文学部人文学科(現:人文社会科学部) 。
私立東奥義塾高等学校卒業後、弘前大学人文学部人文学科(現:人文社会科学部)に進学。社会学ゼミに所属。硬式テニス部に入部し、テニスに打ち込む。平成14年3月に卒業後、あおもり信用金庫に就職。2009年にあおもり信用金庫が合併により青い森信用金庫となった。県内の支店を異動しながら融資、渉外等の担当を歴任。2019年に現在の弘前・津軽地区本部の法人担当副長、2020年から部長代理を務め、現在に至る。2019年から弘前大学地域創生本部連携推進員を兼務。