卒業生の活躍をご紹介する『卒業生インタビュー』、第17回に登場するのは、大学生向けの共育型インターンシップのコーディネートや若者の居場所づくり、地域づくりの中間支援事業を行っている一般社団法人 tsumugu(ツムグ) 代表理事の小寺 将太(こでら しょうた)さんです。tsumuguの運営以外にも、県内大学での非常勤講師や東通村の商工会長を務める小寺さんに、現在の仕事内容ややりがい、大学時代の印象に残っている出来事、将来の展望などを伺いました。
地域・企業・若者を繋いで、青森県を挑戦する場に
— 一般社団法人tsumuguを立ち上げた経緯・理由を教えてください。
弘前大学人文学部(現:人文社会科学部)の学部生時代に、講義や実習などで地域づくり・地方創生に関わる機会が多くありました。さまざまな地域に出向いて地域住民と対話し、一緒に地域づくりを行っていくことに楽しみややりがいを感じるようになって、そこから「地方創生」を生業にしていきたいと考えるようになりました。
もっと「地方創生」を学びたいと思い、卒業後は弘前大学大学院 人文社会科学研究科へ進学しました。大学院在学中にはCOC推進室の事務補佐員として採用していただき、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)*」の「県内定着」のミッションのもと、大学生が地域と触れる機会を増やすことを目的に、共育型インターンシップの企画・運営を行いました。
インターンシップをコーディネートしていく中で、地域・企業と若者を繋いでいくことにやりがいを感じ、大学院修了時の2018年に一般社団法人tsumugu(以下 tsumugu)を創業しました。
*大学が地方公共団体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、その地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの改革を断行する大学の取組を文部科学省が支援することで、地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的とした事業のこと。
— 現在のお仕事の概要と、主な仕事内容を教えてください。
tsumuguでは、3つの事業を主に行っています。
1つ目は共育型インターンシップのコーディネートです。大学生を対象に、むつ下北地域の企業・団体にて約4週間、新規事業の立ち上げを行う実践型のインターンシップとなっています。具体的には、受け入れ先の企業のプロジェクト設計、学生募集などの中間支援を行っています。2つ目は地域づくりの中間支援です。むつ下北地域や東青地域を対象に、関係人口の創出や地域共生社会の実現に向けて地域住民と行政の間に入り、ワークショップや講習会を実施しています。
3つ目はキャリア支援事業です。地域創生人材の育成を目的に、高校生の地域づくりの場を生み出しています。また、大学生の起業支援や地域内の若手人材の育成などを手掛けています。
tsumuguの運営以外にも、弘前大学や県内大学の非常勤講師を勤めており、地方創生を体系的に学ぶ内容の授業を行っています。さらに、今年度からは東通村商工会長に就任し、地域の経済界のトップとして商工事業者が地域内で事業を営みやすい環境を整えるため、事務職員とともに経営支援や地域振興事業を手掛けています。
学生の成長や地域の活性化が自身の活動のパワーに
— それぞれの仕事をしていて、楽しさややりがいを感じるのはどんなときですか?
tsumuguでは、共育型インターンシップのコーディネートをしている中で、1ヶ月のインターンシップを経て、大学生たちが成長している姿を見たときにやりがいを感じます。また、受け入れていただいた企業・団体から「インターンシップをやってよかった!」とお声をかけていただいた時は、やり遂げた!という実感が沸きます。
東通村商工会は、2024年11月時点で約210の事業者が加入しています。
東通村には原子力発電所及び建設予定地があり、原子力施設との共生を図りながら、村内の商工事業者が円滑に事業を行える環境を整えていくのが商工会の役割だと考えています。その中で、国や自治体、電力事業者への要望や対話を重ねていく活動を通して、“地域経済を守っていく”という使命にやりがいを感じています。
弘前大学や県内の非常勤講師については、起業したての24歳の時から務めています。
15回ある講義の中で、学生同士で積極的にディスカッションをしていたり、地域の課題解決策をプレゼンテーションする姿を見ると「あ、初回に比べてすごく成長したな」と嬉しく感じます。
— 今後、どのように働いていきたいですか?将来の展望などを教えてください。
tsumuguのミッションは「青森県の地域・企業・若者を紡ぎ、挑戦あふれる地域を創出する」としています。
今後も多くの大学生をむつ下北地域に関係人口として受け入れ、地域住民も大学生といった外部人材も挑戦しやすい地域を創っていきたいと考えています。
それは東通村商工会長や大学教員としても同じ想いで活動しています。青森県内の産学官連携を図っていくコーディネーターとして様々なステークホルダーを結びつけ、挑戦しやすい青森県を目指していきます。
仕事の原点になったサークルや実習の経験
— 学生時代について教えてください。大学生活で印象に残っていることはありますか?
課外活動では、友人や後輩たちとさまざまなサークルを立ち上げました。友人らとは軟式野球のチームを作り、大会に出場したこともあります。後輩たちとは地域貢献型のサークルを作り、観光パンフレットの作成や弘前市内の町内会の行事に参加したりしていました。
授業では、コースの必修科目であった「社会調査実習」が一番印象に残っています。
青森県内の工場や農園に出向き、「手作業と機械化の関係性を調査し、地域内でのローカルイノベーションを考察する」という内容でした。2、3年生が合同で実習を受けるのですが、レジュメを作成したり、フィールドワークを実施したりととても内容の濃いものでした。今の自分があるのもこうした実習のおかげだと思っています。
— 弘前大学での学びや経験が、社会人になって活かされていると感じるのはどんなときですか?
起業して気づけば7年目に入りました。
会社を経営するようになって、地域の皆様とのコミュニケーションはもちろんのこと、経営者同士での交流など「人との信頼関係」を構築することが重要だと身にしみて感じています。それは、大学生時代に実習を通して多くの方々と出会った経験が大きく影響しています。
また、プレゼンテーションや資料作成など、実習を通して厳しく指導していただいたことも今の仕事に活きています。
大学の外に出て、さまざまな人と積極的にコミュニケーションを!
— 弘大生やこれから大学を目指す高校生へメッセージをお願いします。
大学での4年間は、どう過ごすかによって人生が変わると思っています。
私は高校生まで、特にやりたいことなどありませんでした。弘前大学に入学し、実習や課外活動をしていくなかで、本当に自分がやりたいことを見つけることができました。それは大学内に留まっているだけはなく、大学の外に出て、さまざまな人と交流しネットワークを広げたことが影響していると感じています。
みなさん、ぜひ大学の外に出て、積極的に地域や大人たちとコミュニケーションを取ってみてください。人との繋がりができることで将来の選択肢が増え、そのことが自分自身にいい影響をもたらしてくれるはずです。