弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第5回は、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に第4期生として採択され、1年間東アフリカのタンザニアへ留学した 橘 加奈子(たちばな かなこ)さんです。留学までの経緯や、帰国後の活動について伺いました。

アフリカを自分の目で見たい

ー今の学部・課程を選んだ理由は?また、国際分野に興味を持ったいきさつを教えてください。

 近所に昔、海外でバリバリ働いていた方がいて、英語の教室を開いていたんです。そこに小4から通い始めたり、中学校で英語の弁論大会に出たりしていくうちに、英語をツールとして世界を知りたいと思うようになりました。
 高校では3年間英語漬けで、国際関係を学び考える日々を過ごしました。2、3年の時に英語で論文を執筆するのですが、ウガンダの少年兵について書いたことでそこで初めてアフリカに触れました。ただ、その2年間で、なんで私は行ったこともない国のマイナスな面ばかり捉えてしまっているんだろう、と嫌気がさしてしまって・・・。いずれマイナス面ではないアフリカを自分の目で見たいという気持ちが強くなりました。それで、地元の近くでアフリカの研究者が多い大学を探して、弘前大学がヒットしました。アフリカを知るためには国際情勢や国際政治も学ばなければと思って、現代社会課程に入り、国際社会コースに進んで、今、アフリカを専攻しています。

高校の時からの夢、タンザニアへ留学

ータンザニアへの留学に至った経緯を教えてください。

 2・3年次で「グローカル人材育成事業」という、地域の課題に対し、グローバルな視点から解決策を提案する事業に参加して、フィンランドとメキシコで調査を行いました。
 この3年次にメキシコの観光について調査した経験が、後の留学に直結したと思っています。メキシコでの観光は、ただモノや景色を見て歩くものではありませんでした。“モノを買う”こと一つとっても、いろいろな体験をして、“モノ”のバックグラウンドを知ったうえで購入に結びつける。今までの観光とは違うアプローチを見て、私も将来、体験を通して現地の人と繋がり、それが産業化できるような観光の在り方を築きたいと思いました。
 「トビタテ!留学JAPAN(以下「トビタテ」)」については同じゼミ生に3期生としてアメリカへ留学する人がいたことがきっかけで調べてみて、経済的支援もあり、行きたい国、期間、留学中の活動も全部自分で決められるということにすごく惹かれました。アフリカへ留学することは高校の時からの夢だったので、アフリカに詳しい杉山祐子先生に相談して、私の理想とする観光のビジョンについて勉強するのにいいフィールドがないか伺ったときに、勧めていただいたのが「タンザニア」でした。

 留学の意志を決めてからは、親や親戚の理解を得るのにかなり時間がかかりました。エボラも流行っていた時期だったし、年配の方々には未知な場所だったので、危険な所に行かせられないと。それでも行きたい気持ちが強かったので、リスクへの対処についても入念に調べ上げて、現地の人にも情報を提供してもらい、時間をかけて説得しました。
 初めての大陸、初めての国へ行くことは不安でもありましたが、わくわくのほうが大きかったです。大学の講義でアフリカの人たちの生活を勉強してきたので、それが実際にどうなのかを見ることにとても好奇心をそそられました。
 出発の時にゼミのフィリップス先生から「本当におもしろい地域だから存分に楽しんでいっぱい学んでこい。来年どんな姿で帰ってくるのかすごく楽しみだ。」と言っていただいたことが、私のモチベーションを上げてくれました。

弘前大学人文学部4年
メキシコでの調査。体験購入一体型の織物製作所へ視察

旅行会社でのインターンと大学での勉強

ータンザニアでの生活について教えてください。どんな活動をしていたのですか?

 現地の言語はスワヒリ語ですが、トビタテに採択されてから出発まで時間がなく、語学に手が回らなくて。現地に着いてから本当に死にものぐるいで勉強しました。空き時間に近所のおばさんたちの世間話に加わり、わからないながらも一緒に過ごして語学や生活を学ぶ経験もしましたね。
 
 活動としては、主に旅行会社でインターンをしていました。会社から「スワヒリ語をちゃんと使えるようになるまでは認めない」と言われ、3か月、語学学校で必死に勉強しました。その結果、夏に旅行会社が実施するツアーの添乗と通訳を担当させてもらえることになりました。日本人のお客さんを連れてキリマンジャロの麓にある村に一週間くらい滞在するものです。まだ語学力に自信があったわけではなかったですし、お客さんに対してはインターン生ではなく一従業員として接しなければいけなかったので、知識量の面でも、初めて行く土地だったという点でも不安はありましたが、お客さんから最後に「あなたが通訳でよかった。ありがとう。」と言ってもらえたのがすごく嬉しかったです。頑張ってきてよかったと、報われました。
 その後は1か月くらいタンザニアの国内を旅行してまわりました。10月からは留学生として大学に入り、観光学を学んで、1~3月はもう一度旅行会社に戻ってインターン、というような感じです。

 タンザニアの大学では興味のある講義を全部履修できました。一番印象に残っているのは、3・4年生のクラスで観光について議論する講義です。現地の人の考える”観光”と私の考える理想の“観光”は少し違うと思って発言すると、おもしろいと受け入れてくれました。積極的に他の視野からの意見を取り入れるのは日本でもなかなか難しいことだと思うので、すごく印象に残っています。タンザニアでは「日本」というと“トヨタの自動車”のイメージしかなく、どんな人が暮らしているのか、どんな観光ができるのかということは彼らにとって未知だったようで、とても白熱した議論ができ、充実した大学生活を送ることができました。

弘前大学人文学部4年
インターンのツアー添乗でキリマンジャロの麓にある村の中学校の先生方と一緒に

留学の価値を伝えたい

ー帰国後の活動について教えてください。

  留学の価値や身をもって経験したことを、地方の学生にも伝えていきたいという気持ちが強くなって、トビタテの学生ブランドマネージャーという仕事や、Beyond Schoolの活動に繋がっています。

 学生ブランドマネージャーはトビタテの応募者を増やすためだけでなく、どんな形でも海外に出て、自分の目で見て経験したことを、日本に活かしてくれる学生を増やしていくことを目的とした活動です。
 私は大学の留学説明会を変えたいと思い、活動してきました。
 留学に興味を持つ学生を増やすためには、“学生の、学生による、学生のための留学説明会”を開くべきだと思ったんです。留学経験者は弘前大学にも実はたくさんいます。その経験者と留学したい学生を結びつける機会を作りたいと思ったわけです。
 そこで、今まで半年に1回程度の実施だったものを、1か月に1回にし、実施時間帯も工夫して、学生が参加できるチャンスを増やしました。また、留学経験者の話をメインにして、交流できる自由な時間も設け、「留学座談会」という名前で実施しました。
 留学経験者はトビタテの利用者、交換留学、短期留学、また別のプログラムで行った学生など、留学のジャンルが違う人を集めて、自分に合う留学プランが何なのかを知ってもらうために、選択肢を示しました。回を重ねる毎に、留学に興味を持つ学生が増え、実際に留学を決意する学生もかなり出てきて、頑張ってきた甲斐があり良かったと思っています。
 マネージャーとしての活動は3月で終了しますが、私が卒業してからも、留学に対する興味を失ってほしくないという気持ちを込めて、北海道・北東北の学生を巻き込んで巨大ポスターを作成しました。

弘前大学人文学部4年
留学経験者の声を集めたポスター。留学促進活動の集大成として制作。(PDFはこちら

将来は起業へ

ーもうひとつの「Beyond School」ではどのような活動をしていたのですか?また、卒業後の進路について教えてください。

 Beyond Schoolはトビタテで留学を経験した東京の学生が立ち上がって作った団体です。地方の学生とも連携して、日本全国の中学校、高等学校へ「留学」、「キャリア」、どう自分の興味関心を深めていくかの「探求」をテーマにお話したり、ワークショップを実施したりという活動をしています。
 青森県内では2月に東奥義塾高等学校で実施しました。先生にお話を持ちかけたところ、かなり興味を持っていただけて、実現に至りました。高校生のみなさんは積極的に発言してくれましたし、先生や生徒からも良い評価をいただけたので、かなりいいワークショップになったんじゃないかなと思います。

 将来は、10年、15年後くらいを見越して、自分の理想とする観光を実現できるような会社を起業したいので、卒業後はスキルを身につけられそうな会社に就職します。観光関係の会社ではないですが、仕事を通して起業に必要なコンサルティングやマネジメントの勉強をするつもりです。青森からは一度出て、最終的にまた戻ってきたいなと思っています。
 ゆくゆくは、旅行者と現地の人がお互いに相互作用を与えられる、そんな観光づくりをしたいと思っています。最終的にどんな感じに落ち着くのかはまだわからないですが。これからですね。

弘前大学人文学部4年
ホームステイ先の近所に住む子供たちと一緒に

青森、東北から世界へ

ー最後に受験生へ向けてメッセージをお願いします。

 留学と一言で言っても、人によって留学する目的ややりたいこと、留学に対する想いはまったく違ってくると思います。語学に抵抗がある人が多いと思いますが、留学は、自分の将来の夢、なりたい理想像に近づくために利用するもの、プロセスの一部だと思っています。それを達成したい、勉強したい、というときに、海外に出るのがもし良い選択なのであれば行くべきです。語学は二の次だと思います。
 自分が今後どんな人生を歩んでいきたいか考えたときに、ひとつの選択肢として「留学」が出てくればいい。そんな学生がどんどん弘前大学、青森、北東北でも増えていくといいなと思っています。

弘前大学人文学部4年

人文社会科学部文化創生課程 多文化共生コースホームページはこちら
Beyond School」ホームページもぜひご覧ください!

◇弘前大学から海外への留学相談については弘前大学国際連携本部ホームページから

>>トビタテ留学JAPAN第5期生 水無 保乃香さんインタビュー
>>トビタテ留学JAPAN第7期生 工藤 里紗さんインタビュー

Profile

人文学部現代社会課程(現:人文社会科学部文化創生課程)4年
橘 加奈子さん

「トビタテ!留学JAPAN」学生ブランドマネージャー 。
北海道札幌市生まれ。札幌市立清田高校グローバルコースを卒業後、アフリカ研究をしたいという想いで、平成25年4月に弘前大学人文学部現代社会課程へ入学。国際社会コースへ進み、フィリップス ジョン エドワード教授のアメリカ・アフリカ歴史学ゼミに所属(現:人文社会科学部文化創生課程 多文化共生コース)。文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に第4期生として採択され、4年次にタンザニアへ1年間留学。帰国後は「トビタテ!留学JAPAN」学生ブランドマネージャー、「Beyond School」のメンバーとしての活動など、留学促進に努めた。サークルはアカペラサークルV.E.L.に所属。英語、スワヒリ語、スペイン語、フランス語を修得したマルチリンガル。