弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第13回は、韓国の協定校への交換留学*1後、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」(以下 トビタテ)に第7期生として採択され、10か月間台湾へ留学した 工藤 里紗(くどう りさ)さんです。留学までの経緯や、今後の展望について伺いました。

*1協定校への交換留学:弘前大学と大学間交流協定を結んでいる大学への留学。詳しくはこちら

ここで自分の好きなことをしよう

ー医学部保健学科看護学専攻に入学した理由と、韓国留学に至る経緯を教えてください。

少し言いづらいのですが、当時は看護師になりたくて入ったわけではありませんでした。点数や地元ということ、就職といった条件を考えての進学でした。だから入学当初は看護の勉強が好きになれず、転籍とか、他大学への編入とか、いろいろ考えていて、留学も、自分のそういうコンプレックスからというところもありました。

小さいころから海外に行きたいという思いはずっとあったんです。大学1年次の夏休みに短期留学の案内を見つけて、「韓国」がすごく安くて。当時韓国が好きだったのもあって、2週間程の慶北大学校のサマースクール*2に参加しました。そのときに他の学部にも友だちが出来て、視野が広がって、弘大にいてもいいかなと思えるようになってきました。ここで自分の好きなことをしよう!と。
そこで、サマースクールで更に大好きになった韓国へ行こうと思い立ちました。入学当初、留学に関して保健学科の先生に相談してみたときは、看護で長期間留学をする人はいないし、看護師免許を取得してからでもいいのではと言われ、確かにそうかと。一度は諦めたんです。でも、一緒にサマースクールに行った他学部の友だちが1年間の留学を決めて。それと、交換留学で来ていた韓国人の友だちが、当初は平仮名もあまりわかっていないようだったのに、半年後に会ってみたらすごく日本語が上達していて!やっぱり留学したら違うんじゃないか、行きたいという気持ちが強くなって、改めて留学を決意しました。3年次の9月から10か月間、弘前大学の協定校で、サマースクールでも行った慶北大学校への留学です。
とりわけ父は心配していましたが、頑張ってくるからと説得しました。大学の先生方も、行くと決めたときには応援してくれました。

*2サマースクール:夏の間の短期語学研修・文化体験プログラム。

留学を通してやりたいことが明確に

ー韓国への留学は何を目的にしていたんですか?

当時は正直なところ看護師になりたくなかったので、違う道を見つけようと思って行きました。韓国が好きだから、韓国語を覚えて何かしようかなとか、軽い気持ちで考えていたんです。でも行ってみたら、英語がペラペラで、日本語も上手な人がたくさんいる大学で、考えの甘さを痛感して。言葉が少しできたくらいで、海外では通用しないんだと知りました。言語は強みとして持っておくとして、自分の専門はと考えたときに、「看護学」が必要だと思うようになったんです。そこで、韓国の大学病院のインターンシップに参加してみました。その経験が2度目の留学や今に繋がっています。

大学病院では、海外の患者さんを受入れている国際協力室という部門があって、書類を翻訳したり、日本語を教えたり、日本の病院との連絡調整や、病院の関係者の方々が日本の病院を見学するときに通訳をしたりと、主に事務的な仕事をしていました。その他にも、看護部の見学をしたり、現地の看護実習生と一緒に採血の練習をしたり、技術的な部分も指導していただける機会があり、とても貴重な経験ができました。
慶北大学校では韓国語を勉強した他に、看護学の授業も受講しました。

この留学で自分の専門的な強みを見つけなきゃというところから看護師になりたいと思えて、気持ちが楽になったというか・・・、やりたいことが明確になりました。

弘前大学医学部保健学科4年
留学でできた友人と。韓国にて。(工藤さんは写真左)

シミュレーション教育との出会い

ートビタテに応募しての台湾への留学はどのような経緯で決めたのでしょうか?

大学で「韓国語と中国語を覚える」というのを目標にしていたんです。台湾への交換留学ができるようになったことを国際連携本部の職員さんから聞いて、そこで決めました。2度目の留学ということもあり、両親からはさすがに反対されるかなと心配していましたが、母が私のしたいことをしなさいと全面的に応援してくれ、母の支えもあり、父を説得することができ、最終的に行けることになりました。トビタテは、後日新聞で記事を見た父から「2回目だし、今度はこういうのに応募してみたらどうだ。」と言われて初めて知りました。トビタテに応募するなら、語学以外にもテーマが必要で。
韓国にいた時病院でインターンをしてみて、台湾でも語学を学ぶだけでなく、看護も学びたいと思っていて、そこで思い当たったのが韓国で出会った看護のシミュレーション教育でした。シミュレーション教育では、模擬的な状況の中で医療を実践するトレーニングをします。例えば、韓国で見学させてもらったある大学にはシミュレーションセンター施設があり、そこでは病室のようにブースが分かれている部屋があって、シミュレータという声を出したり脈を測れたりする高度な人形機器が教材として完備されていました。そこで学生は、「今この患者はこういう状態で、あなたは看護師として~という処置を~分以内にやりなさい」といった課題に対して、時間内にシミュレータや先生、患者役のボランティアの方を相手に実践をします。

看護師になることに消極的だった私でも、シミュレーション教育での授業は、大変だけどすごく実践的で楽しいと思えたんです。保健学科の先生に声を掛けていただいて、1週間程ハワイでシミュレーション教育による授業に参加したんですが、やっぱりおもしろくて。こういう授業なら、学生の看護師になることに対する不安が軽減されたり、自信がついたり、そういう効果があって、シミュレーション教育を受けている学生といない学生を比べたら、看護師になることに対しての意思に差が出るのではないかと思い、調査してみたいと思いました。

そこで、トビタテでは台湾でのシミュレーション教育に関する調査をテーマに応募しました。
応募にあたっては、国際連携本部の笹森圭子先生からたくさんアドバイスをいただいて、留学プランを、筋が通る形にまとめることができました。受入先はハワイの研修に連れて行ってくださった冨澤登志子先生がシミュレーション教育に関して熱心な方なので、台湾で受け入れてくれそうな機関を伺って、台北医学大学を紹介していただきました。

弘前大学医学部保健学科4年
ハワイでの集合写真。シミュレータの人形と。

台湾で感じた看護教育の違い

ー台湾ではどのように過ごしていたのですか?

台湾では、前半は協定校の開南大学に通って中国語を勉強するのがメインで、後半は語学を続けながら台北医学大学の授業に参加しました。その他に、シミュレーション教育に関する調査をしました。

大変だったのはやっぱり語学です。中国語はなかなか聞き取れない、しゃべれない。授業の前には必ず予習をしていました。シミュレーション教育は座学ではないので、単語が少しわかっていれば、先生や他の学生の動きを見て、やろうとしていることはわかる感じだったので、どうにかついていっていました。
シミュレーション教育の内容は、例えば、「重傷の患者をストレッチャーで運んでいたら、意識がいきなりなくなり、移送しながら心肺蘇生術をする」とか、「病室でケアしていた患者の病状が急変し、医師への電話報告を、決まっている順序でわかりやすく伝える」とか、シチュエーションが作られていて、それに学生がグループで対応するという感じで、実践的でした。

向こうで授業を受けて実践的な技術演習・練習の多さに驚きました。日本と台湾では看護学生が卒業までに求められるレベルが多少違うとは思いますが、シミュレーション演習の実践数や学生の自己学習時間などかなり違いがあることが示唆されるので、カリキュラムなどはこのままでいいのかと。看護でもグローバル化が進む中で、日本の看護教育も変わっていかなければいけないのではないかと感じました。
学生も先生たちも、海外の事情をもっと知る必要があると思っています。今調査の結果をまとめている最中なので、完成したらいろいろな方に伝えていけたらと思います。

弘前大学医学部保健学科4年
台湾で台北医学大学の先生方と。

海外でも臨床経験を積んでいきたい

ー留学を通して変わったなと思うことはありますか?

愛国心がすごく芽生えました。高校のときの失敗でコンプレックスを持っていて、こういう日本社会の仕組みが嫌だ、日本が嫌いだという思いがずっとありました。そういう意味でも海外に行きたかったんです。でも、韓国の人も台湾の人も自国に対するプライドが高くて。私は日本のことを全然考えたことがないなと、友だちを見ていて思いました。特に台湾には日本のものが浸透していて、「日本ってすごいよね」と言ってくれる人たちがいて、海外で生活してみて様々な観点から日本って良い国なんだと改めて思えました。もっと日本人であることを誇りに思おうと思えたのも、大きな収穫です。

ー今後の展望を教えてください。

とりあえず、看護師にならなきゃと。プロフェッショナルなものを持たずに大学院に行っても、今の私ではできることが限られていると思うので、ひとまず看護師として一人前になってから、進学も検討したいです。海外でも臨床経験を積みたいと思っています。
まだまだ将来は未定なんですけど、留学して教員の道もありなのかなと考えるようにもなりました。留学を通して看護教育に危機感を持ったので。教員でなくても、日本でも今後シミュレーションセンターが増えていくようで、そうなるとシミュレーション教育が実践でき、施設を管理できる専門家が必要になってきます。そういう道もあるのかなと思っています。

弘前大学医学部保健学科4年
実際のシミュレーション教育の様子。(写真はハワイで撮影)

大学は自分を切り替えられるチャンス

ー最後に受験生や在学生へ向けてメッセージをお願いします。

看護学生に関しては、むしろ留学しやすいんじゃないかと。看護師で言語の強みがあればより必要とされると思いますし、留学は良いと思います。留学では語学だけ勉強するわけではなく、やりたいと思えばインターンに行けたり、授業を受けられたり、何かしら語学以外のことにも挑戦できるので、やりたいことがあって、それを積極的にできるようであれば行くべきだと思います。
私は高校でちょっとつまずいてしまったんですけど、そういう人も、そこで諦めないでほしいです。今自分の思うようにならなくても落ち込みすぎず、将来的に好きなことをみつけてくれたらなって。自分を切り替えられるチャンスだと思います。私は今はむしろあの時つまずいてよかったと思っていて、ある時親に「今大好きな韓国語を覚えて、韓国の人と意思疎通できるようになって、やりたいことを見つけられて、すごく幸せで、全然後悔していない。」と何気なく話したのですが、その一言に安心したと言ってもらえて。今お互いにすごく前向きになれています。時間がかかったんですけど、留学で自信がついて、自負心が持てるようになって、本当にやりたいことが明確になったので、よかったと思っています。

弘前大学医学部保健学科4年

◇医学部保健学科看護学専攻のホームページはこちら
◇弘前大学から海外への留学相談については弘前大学国際連携本部ホームページから

>>トビタテ留学JAPAN第4期生 橘 加奈子さんインタビュー
>>トビタテ留学JAPAN第5期生 水無 保乃香さんインタビュー

Profile

医学部保健学科看護学専攻
工藤 里紗さん

トビタテ!留学JAPAN第7期生 。
青森県板柳町出身。青森県立弘前高等学校を卒業後、平成25年4月に弘前大学医学部保健学科看護学専攻へ入学。成人看護学の長内智宏教授ゼミに所属。3年次9月から韓国へ10か月の長期留学後、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に第7期生として採択され、4年次9月から台湾へ10か月留学。帰国後は調査結果の集計、シミュレーション教育の指導者研修会に参加するなど活動している。