弘前大学で活躍中の現役学生をご紹介する『在学生インタビュー』、第12回は、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」(以下 トビタテ)に第5期生として採択され、8か月間オーストラリアに留学した 水無 保乃香(みずなし ほのか)さんです。留学までの経緯や、今後の展望について伺いました。

司法と社会の関わりを勉強したい

-弘前大学人文学部現代社会課程を志望した理由を教えてください。

大学へは司法アクセスを勉強したいと思って入りました。高校生のときに、身近な人に法の助けがあったら、あんな人生の選択をしなくてもよかったのではないのかなと思った人がいました。そのときに、なんでみんな法に従って生きているのに、法は縁遠いのかな、もう少し司法を市民にとって身近にできないかな・・・とモヤモヤしていました。それがきっかけで司法アクセスに興味を持ち、法社会学の先生がいた弘前大学の活動をネットで見て、おもしろそう、こういうのもやってみたいと思い、進学を決めました。実は、その先生は私の入学前に転出されてしまったんですけど、活動自体は他の先生が引き継がれていて、思った以上の活動ができました。
人文学部の現代社会課程の中には法学コースがあって、法律の勉強もできたし、いろんなことをこの人文学部の中で勉強できたということはとてもよかったです。哲学とか経営とか英文学とか、いろいろな分野の講義も受講できて、自分の中の教養の幅が広がりました。

大学でやりたいことをやりきる

ー留学する前はどう過ごしていましたか?

後期には、社会に出る前に、大学という自由なフィールドを使い、純粋に興味のあることに取り組んでみようと思い、司法アクセス調査の準備と併せて英会話に挑戦しました。
もともと海外志向はなかったので、英語は全然しゃべれなかったんです。だから、とりあえずイングリッシュラウンジ*1に行ってみたら、ラウンジの先生に「座ってみんなと話しなよ。」とぽんっと投げられて、急に!でも、ちょうどそのときにいた留学生がすごくいい人で、優しくいろいろ教えてくれて・・・知ってる単語だけ並べても楽しい、文としてしっかりしてなくても伝わるんだとそのときに知りました。それからは、英語で思いを伝えるのが楽しくなり、話しながら英語は鍛えていくのが一番大事だと気づきました!

ー留学に至る経緯を教えてください。

留学生と話していて、英語をもっと鍛えたいし、経験として海外に行ってみたくなって留学を考えました。でも、行くなら絶対、やってきたこととマッチさせるしかないと。ただ英語だけ学びに行くのは意味がないなと思っていました。トビタテは日本の社会に還元できるような留学プランを考えて応募するので、合格したら、海外で学ぶことの自信にもなるし、社会に求められてると感じられると思って、確認と挑戦を兼ねて申請を決めました。「日本を変えるために、この経験がなきゃ私はまだまだ未熟なままで、海外でこういうことをやる必要がある。行って帰ってきたからにはそこを目指して頑張りたい。」という思いを大事に計画の構想を考えて、平野先生に日本での司法アクセス調査のための協力をして頂いたり、受入先の国や機関を相談できるような方を紹介していただきました。そこで先程の転出された法社会学の先生を紹介していただいて、オーストラリアの先生に繋げてもらいました。あとはネットで調べて、やりたいこととマッチする受入機関を探しました。「日本の学生です、法律勉強してます、こういうことをやりたいので、まず会わせてください。」というEメールを大量に送って。アメリカも考えていたんですが、アメリカの大手のローファームだと、インターン生としてそこで働けるかどうかを見抜くという感じが強くて、いい結果が得られず、オーストラリアは知りたいことがある人を柔軟に受け入れてくれる感じで、「ぜひぜひ来てください!」という反応が返ってきました。

親には一次の書類審査が通ってから言ったんです。筋が通っていて、覚悟があるなら「やめろ」とは言わない親だったので。でも合格したときにはびっくりして慌ててました、私よりも(笑)。3年生の6月に合格が出て、その後は日本の司法環境の現状・課題を把握するために調査をしていました。それと並行して準備をしていたらあっという間に時間が過ぎて。日本ではやりきったなって感覚で、その当時は自信満々でした。

*1イングリッシュラウンジ:利用者誰もが区別なく、英語でコミュニケーションを楽しみ、世界の文化について学びあえる場所。詳しくはこちら

弘前大学人文学部4年
留学中に通った大学の教員、クラスメートと

まだまだな自分への気づき。高みを目指す幸せ

ー留学してからはどうでしたか?

自信を一気にズタズタに、初めてこんな気持ちになったってくらい落ち込みました。シドニーの大学で法律の授業を取ってたんですけど、講義中に先生に「書く作業をするだけなら、まわりの誰にとってもいい環境でない、生産性の高くないクラスになってしまう、出て行っていい。」と言われてしまったんです。さすがに震えました・・・。事例の理解にも処理にも、英語で言うのも時間がかかるという中で、すぐには言葉に出せないことを“書く”ことでごまかしてた自分がいたので、それじゃ意味ないんだということを痛感しました。
それがトラウマになって、これ大丈夫かなって気持ちだったんですけど、すごくクラスメイトに救われました。「無理に正解を導き出そうと思わないで、わからなかったら聞いて。それだけでもあなたがこの授業の場にいる意味が先生から見ても感じられると思うし、気にせずなんでも話して。」と言ってくれて嬉しくて。それから少しずつしゃべれるようになりました。
あと、いつも通学が一緒のトルコ人の学生がいて、彼が心の友でした。お互い独特な言葉を使っている文化圏同士だったので仲良くなって、毎朝思ったことをそのまま英語で話すトレーニングをしてました。二人で勉強したり、お酒飲みながら話したり。そのおかげもあって、乗り越えられました。シドニーに行って初めて、人に支えられていることに気づいたし、自分と人の間の、自分にしか作れないつながりを大切にしなきゃいけないんだなと思いました。
勉強面に関してはやるしかないので、帰ってからも土日も一生懸命勉強しました。
最終的には授業も楽しくなりました。模擬法廷をやったり、それぞれの国の法制度をプレゼンテーションしたり。まだまだだなって思いながらも、そう思えてるのが楽しくて、満足しきっていた留学前の自分よりも、自分自身で勝手に限界を決めないでやろうとしているときが、一番幸せでした。

インターンした事務所はNGOみたいな団体で、受付をしたり、ちょうどLGBTの同性婚を認めるための運動があって、関係者の方に御礼のお手紙を書いたりしました。年に1回の会議もあって、オーストラリアの全土から偉い方が集まっていたので、出席された方と話したり、弁護士さんにインタビューをしたり、交流できました。プロボノ活動といって弁護士さんの社会貢献活動を調査している公設事務所にも話を聞きに行きました。あとはいろんな事務所に顔だけ出して雰囲気を見てみたり、今しかないと思って、キャンベラまで最高裁判所を見に行ったりしましたね。

弘前大学人文学部4年
キャンベラのオーストラリア最高裁判所にて

留学を経て、良くも悪くも自分を知った

ー留学して変わったなと思うことはありますか?

振り返ってみると、行く前は自信家すぎるところがあったんです。でも海外に行って、満足しないで、高い志を持つことが大事ってことに改めて気づきました。大きく言えば、留学を通して良くも悪くも自分はこういう人なんだというのを知ることができたんです。だからどこが変わったかというよりも、留学を通して、自分自身を俯瞰して見ることができるようになりました。

日本で司法をもっと身近なものにしていきたいというのが人生を通しての目的で、それを実現するためにまずオーストラリアの司法制度を概観することと、弁護士さんの働き方、どうプロボノ活動をやっているのかを知ることが留学でやりたいことだったので、その2点はやりきりました。今は今後日本でどう活かしていくのか、どういう働き方をしていけばそれが実現できるのか、その目的に向かって走ってる段階です。

ー帰ってきてからの活動について教えてください。

留学関係でいえば、エヴァンジェリスト活動*2をしています。留学して帰ってきた人が“今”何をしているのかがよくわからないなって。たぶん弘前大学だけじゃなく日本全体の風潮かと思うんですけど、就活でも“海外留学”と書くだけで「すごい」と言われる流れの中で、本来は“何をしたか”をメインにすべきだと思うんです。
だから学祭で、「行く前はどうだったか」「行って何をしたか」「今何をしているか」がわかる展示を作りました。少しでも多くの人に、留学で自分なりに何を勉強したいか、それを将来にどう活かしてくのかまで考えてほしいんです。
どうしても、留学に時間やお金をかける価値を感じるまで踏み込めないところはあると思います。お金の面で言えば支援もありますが、“時間”に抵抗がある人が多いので、時間を投資する価値を見えるようにしたつもりです。親の反対がという人もいますが、親に応援してもらえる留学はあると思っていて。熱意を伝えることが大事だし、親にも留学という概念を少し変えてほしい。学祭は保護者の方も高校生も、学生も来るので、伝える場としてうってつけだと思いました。

*2エヴァンジェリスト(伝道師)活動:「トビタテ!留学JAPAN」の派遣留学生が帰国後に行う、海外の魅力や留学経験を伝える活動。

弘前大学人文学部4年
第18回弘前大学総合文化祭での水無さん考案の展示。「YOUは何しに海外へ?」

司法シンポジウムへの登壇。司法を身近な存在にしていくために

目的をもって留学したことが次に繋がるというところには私もびっくりしています。オーストラリアの司法制度について報告書を書いたんですが、それを見てくださった日弁連の方から連絡が来て。弁護士さんたちの前で、少し偉そうですが、オーストラリアの司法調査も踏まえ、司法を市民にとって身近にするために、弁護士のプロボノ活動が必要ではないかというお話をしました。そして、司法シンポジウムにも登壇させていただきました。弁護士さんの中には、この分野は取り組まなければいけない課題の一つだから、これからもいろいろな活動に参加して研究し続けてほしいと言ってくださる方もいました。予想していなかった繋がりがたくさん得られて怖いくらいです。経験を発信することも大事だと学びました。

ー卒業後の進路は?今後の展望を教えてください。

慶応義塾大学法科大学院への進学が決まっています。3年間の法学未修者コースです。
弁護士になったら、私は社会貢献活動をメインに活動していけたらなと思っています。そう言うと、必ず生活していけるのかという話になるんですけど、そこを私はオーストラリアで見てきました。実際に会った弁護士の先生は、弁護士資格の他に英語を教える先生の資格も持っていて、弁護士としての収入はゼロ、英語の先生としての稼ぎだけで生活していました。弁護士資格+αで何かできるのが一番の理想だと思っているので、そこを何にしていけるか悩んでいます。ただ、それだけの道に絞られないよういろんなことに挑戦していきたいです。いつかひらめきがあるかもしれないので、下地となるものをいっぱい持てるように人生頑張っていこうと思ってます。

弘前大学人文学部4年
第28回司法シンポジウムへの登壇。テーマは「市民と司法をつなぐ」

限界を決めずにチャレンジを

ー最後に受験生や在学生へ向けてメッセージをお願いします。

私が一番伝えたいのは、自分で自分の可能性を捨ててほしくない。限界を決めないでやるっていう気持ちを大切にしてほしいです。私はやらなきゃわかんないと思ってやってきたから、ここまでやれたというのもあるので、それだけは忘れずに頑張ってほしいなと思います。
人が変わるきっかけの一つとして留学があると思うので、ただ全員に留学しようとは言わないけれども、何かしたいって気持ちがある人は私もできる限り応援していきたいです。

人文社会科学部社会経営課程 経済法律コースのホームページはこちら
弘前大学から海外への留学相談については弘前大学国際連携本部ホームページから

>>トビタテ留学JAPAN第4期生 橘 加奈子さんインタビュー
>>トビタテ留学JAPAN第7期生 工藤 里紗さんインタビュー

弘前大学留学ウィーク 2018年11月12日(月)~16日(金)

弘前大学国際連携本部では、11月の1週間を留学ウィークと称し、留学や海外研修、そして国際交流等に関するイベントを集中的に実施します。詳しくはこちら
※水無さんは15日(木)16:00~17:30 留学座談会(協定校以外への留学・様々な形態の留学について)に参加します。

Profile

人文学部現代社会課程4年
(現:人文社会科学部社会経営課程)
水無 保乃香さん

トビタテ!留学JAPAN第5期生 。
岩手県久慈市出身。岩手県立久慈高等学校を卒業後、平成26年4月に弘前大学人文学部現代社会課程へ入学。法学コースへ進み、平野潔教授の刑法ゼミに所属(現:人文社会科学部社会経営課程 経済法律コース)。文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」に第5期生として採択され、3年次からオーストラリアへ8か月留学。帰国後は「トビタテ!留学JAPAN」学生ブランドマネージャーとして留学促進に努め、また、司法アクセスについての研究に従事する。医学部サッカー部、teens&lawに所属。