弘前大学には5学部8研究科の多種多様な研究室があります。
「研究室探訪」シリーズでは、個性豊かな研究室をご紹介!
どんな先生がいて、どんな研究・教育が行われているのか、
先生と研究室に所属する弘大生に教えてもらいましょう!
第3回は、教育学部学校教育教員養成課程 音楽教育学研究室です。
教育学部学校教育教員養成課程 音楽教育学研究室(今田匡彦教授)
“6歳でピアノを習い始めた子どもたちの99%は20歳までにやめていく、これはコンサート・ピアニストの養成であって万人のための音楽教育ではない”*とカナダの作曲家R.マリー・シェーファー(1933-2021)は考えました。量的な練習の堆積からではなく、子どもたちの素朴な直観力から創生されるオンガクのため、シェーファーはサウンドスケープ及びサウンド・エデュケーションを提唱しました。クラシックやJ-POP、ジャズや民族音楽と、私たちの身の回りには魅力的な「音楽」で溢れています。それらの音楽と私たちは、しかしながら生産者(プロの音楽の作り手)と消費者(アマチュア)の二項対立の関係にあります。この研究室では音楽教育を切り口として、子どもたちによる未来のオンガクを探求します。
研究室の出身者たちは、主に小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等の教員になっています。また、修士課程、博士課程を経て、大学や短期大学で教えながら研究者として活躍している卒業生も多数います。
*若尾裕(1990)『モア・ザン・ミュージック』(勁草書房)
研究室選びのポイント!
特定の楽器を演奏したり、研究方法が固定されたりしている研究室ではないです。私は最初、「ピアノを弾くと頭が良くなる」という一般論に興味を持って、その後東大生はピアノを習っている割合が多いというデータを見て、それをゼミで話してみたら今田先生が社会学者のピエール・ブルデューを紹介してくれました。ブルデューの言っている文化資本やハビトゥスが音楽にもすごく関係することが分かり、今はそれについて調べています。
音楽専修はいわゆるゼミ所属がなくて、5人の先生方がそれぞれの専門分野を丁寧に指導してくださいます。卒業時は、声楽やピアノの実技試験と卒業論文のすべてをやることになるので大変だけど、偏りなくいろいろな角度から音楽を学べるのは弘前大学の強みだと思います。
私はもともとゲーム音楽に興味があって、いろいろ聴いてみたらケルトの文化やアイルランドの音楽に繋がっていきました。それらの音楽観とゲーム音楽とがどんなふうに関連しているのか調べているところです。他の3年生たちの研究テーマは、例えば無調音楽についてとか、ユニヴァーサル・デザインによる創作ミュージカルとか、シュタイナーの音楽教育とか、みんな違っているので楽しいです。
こんな楽しみもある、研究室生活
今田研究室では毎年ゼミ合宿があって、学部生だけでなく修士課程、博士課程の院生もそれぞれ研究発表をします。また、既に研究者として活躍している先輩も参加するので、準備は大変だけど勉強になります。
毎年”Spring Concert”という研究室主催のコンサートがあります。ここでは先生が曲を指定することはなく、学生たちが自分たちで創作したさまざまな作品を発表したり、既存の作品に振付をして舞踊にしたり、とにかく面白いです。
撮影の思い出
今田先生はカナダの作曲家R・マリー・シェーファーが提唱した“サウンドスケープ”、ユニヴァーサルデザイン、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)の“No one will be left behind(誰も取り残さない)”等を基盤とした音楽教育を実践しています。
今回の研究室探訪では、学生との実践の様子を見せていただきました。
次からの写真は演奏の様子です。
みなさんの記憶にある「音楽の授業風景」とは少し違うかも?(実際の演奏の様子はぜひ動画でご覧ください!)
この一般的な楽譜では表すことができなさそうな音楽、どのように創っていっているのでしょうか?
図形楽譜による演奏を創るまでの工程を伺いました。
まず、サウンドウォーク、外で黙って歩き、音環境を体験します。
電車の音、川のせせらぎ、風の音、耳を澄ますと世界はいろいろな音であふれています。
集めてきた音を、体験をたよりに視覚化します。創るのは、五線譜の楽譜ではなく「図形楽譜(graphic score)」です。
図形楽譜に基づき、身近にある素材やピアノの内部弦奏法、プリペアード(ピアノの音色を打楽器的な響きに変えること)等により、音楽としてトレースしていきます。“聞こえた音を再現する”のではなく、サウンドウォークでの“体験を音楽にしていく”という作業です。
「楽器を弾く」というような技術がなくても、音楽は作れることを実感します。音楽は思っていたより自由なものなのかもしれません。
今田研究室では、大学の他に教育学部附属小・中・特別支援学校での合同実践も。
今年は大学の講義と同様にサウンドウォークを実施、このときは、一人一人が気になった音をiPadで録音しました。読み込むと集めてきた音が鳴るQRコードを作り、体育館のあちこちに設置。iPadで生徒のみなさんが思い思いにQRコードを読み込むことで、体育館に音があふれます。
「音楽」をもっと自由に捉えることで、世界が広がっていきそうですね。
撮影は以上で終了です。お疲れさまでした!
音楽教育学研究室(今田匡彦教授)をもっと詳しく知りたい人へ
■今田匡彦研究室ホームページ
https://humusicedu.wixsite.com/hu-music-edu
■弘前大学教育学部音楽教育講座 今田匡彦研究室YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC1hgKhdfCp9Uv6ESC5GiCiw